記事

百貨店各社の「赤字決算はコロナのせい」にダマされてはいけない

1/2

決算から伝わる、百貨店各社の苦境

予想されていたこととはいえ百貨店各社の中間決算が悪いことが波紋を呼んでいます。象徴的なのは業界トップである三越伊勢丹ホールディングスの赤字幅です。

新型コロナウイルス感染者の増加に伴う外出自粛を受け、土曜日と日曜日を臨時休業している商業施設「伊勢丹新宿店(中央)」と人通りの少ない新宿三丁目交差点=2020年4月5日、東京都新宿区
新型コロナウイルス感染者の増加に伴う外出自粛を受け、土曜日と日曜日を臨時休業している商業施設「伊勢丹新宿店(中央)」と人通りの少ない新宿三丁目交差点=2020年4月5日、東京都新宿区 - 写真=時事通信フォト

2020年上期は純損失がマイナス368億円と大幅な赤字決算になりました。公表されている通期の予想はマイナス450億円の純損失になるとしていますが、もしこの冬、再度の緊急事態宣言が発令されれば、そこからさらに悪化する可能性がありそうです。

業界の4強を中間決算の純損失で横比較すると、高島屋がマイナス233億円、J・フロントリテイリングがマイナス228億円、エイチ・ツー・オーリテイリングがマイナス101億円でした。百貨店業界の苦境が決算から伝わってきます。

多くの読者の皆さんは、百貨店は衰退産業なのだとお考えかもしれません。実際、2020年は地方百貨店の閉店ラッシュが続いた年でした。1月に山形の大沼が破産。3月に豊橋のほの国(旧豊橋丸栄)が閉店、8月には北九州の井筒屋黒崎店と福島の中合福島店が閉店しています。全国大手でも新潟三越、そごう徳島店と西神店、西武大津店と岡崎店など地方店の閉店が目立ちました。

都心の旗艦店ほど打撃を受けている

ただ投資家は百貨店業界を必ずしも衰退産業だとは思っていません。むしろ百貨店は成長産業であり、有望な投資対象だと考えてきたのです。

インバウンドと富裕層は増加しているのだから、東名阪、福岡そして札幌などの大都市に経営資源をフォーカスする再編ができれば、収益は上がるはずだという考え方です。厳しい言い方をすれば、衰退しているのは地方経済であって、地方百貨店が消えて巨大都市のターミナルにある旗艦店だけの業態に再編されれば、稼ぐ力で百貨店は再成長していくというシナリオでした。

しかし、新型コロナでこの戦略が揺らぎ始めています。

ふたたび業界トップの三越伊勢丹の状況を詳しく見てみると緊急事態宣言中の4月、5月は月次売上がどちらも前年比で9割の売上減でした。6月以降は平均して3割減と持ち直しはしますが、インバウンドの需要は現在まで消滅したままです。

そして三越伊勢丹でコロナの打撃が大きかったのはむしろ都心にあった旗艦店でした。地方のグループ店舗の売上減が上期全体で33%マイナスで済んだのに対し、都心の三越伊勢丹5店舗は45%の売上マイナス。特に厳しかったのが三越銀座店で実にマイナス63%の売上減を記録しました。

ひとことで言えばインバウンド需要が消失したうえに、高齢者が多い富裕層の来店頻度が減ったことが業績を直撃した形です。

Jフロントのビジネスモデルが称賛されている

その一方で同じ百貨店4強の一角であるJ・フロントリテイリングのビジネスモデルを礼賛する声が上がり始めています。百貨店事業の売上が全体の92%を占める三越伊勢丹と違ってJ・フロントリテイリングの連結事業では百貨店事業は55%に過ぎません。

J・フロントリテイリングはそれ以外にテナントビジネスであるパルコや不動産事業、クレジット金融の比率が高いのです。そして売上高営業利益率でみれば不動産事業の利益率が38%、クレジット金融が18%、パルコが10%とそれぞれの収益率が百貨店事業の7%よりも高いことがわかります(注:この比較で百貨店事業の利益率が黒字なのは9月発売の『会社四季報』が3月の連結決算時の数字のため)。

百貨店事業に集中した三越伊勢丹を新型コロナが直撃する一方で、事業モデルを多角化したJフロントの方が体質的に危機を乗り越えやすいという論理です。実際、上期の営業利益に相当する事業利益ではJフロントは2.5億円と4強の中で唯一黒字をたたき出しています(注:JフロントはIFRS、それ以外の3社は日本基準の決算で、Jフロントの事業利益が他3社の営業利益に相当する)。

イオンは小売事業で利益を稼いでいない

「不況期に多角化部門が企業を下支えしてくれるから多角化がいいのだ」という理屈はわからないことはないのですが、私はその方向性には疑問を持っています。

その最大の理由は小売業界最大手であるイオンの事業構造です。イオンは大規模スーパーであるGMS事業がだいたい全体の3分の1、中小規模のスーパーマーケット事業が3分の1強、それ以外の不動産や金融事業が3分の1弱という事業構造になっています。

札幌のイオン
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

そのイオンの事業別の利益率を見るとGMS事業が0%、スーパーマーケット事業が1%とまったく利益につながっていません。イオンで利益を稼いでいるのはイオンモールの不動産事業、WAONやクレジットなどの金融事業、そして施設の管理などのサービス事業の3本柱なのです。

イオンの決算を見ていると将来性は脱小売にあると思えて仕方ありません。小売比率が低い小売業の方が将来性があるというのは、パラドックス以外の何ものでもありません。

じつはそのさらに先を行く事例があります。アメリカ最大の小売業であるウォルマートの業績が新型コロナの影響下にもかかわらず絶好調なのですが、そのウォルマートが打ち出している注力の3本柱は金融事業、広告事業、ヘルスケア事業なのです。つまり日米ともに小売業最大手は小売で儲けることに関心がない。ないしは関心があっても小売の優先順位が低くなる戦略に注力しているのです。

あわせて読みたい

「百貨店」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    菅首相を吊し上げ 予算委の惨状

    青山まさゆき

  2. 2

    コロナで世帯数激減 23区の危機

    中川寛子

  3. 3

    河野大臣のTwitterに感じる恐怖

    文春オンライン

  4. 4

    絶望する今の日本を歓迎する人々

    NEWSポストセブン

  5. 5

    原監督と溝? 桑田氏G復帰に驚き

    WEDGE Infinity

  6. 6

    Kokiの大胆写真にキムタクは複雑

    文春オンライン

  7. 7

    安藤美姫が指導者にならない事情

    文春オンライン

  8. 8

    坂上忍に批判殺到「二枚舌だ」

    女性自身

  9. 9

    バイデン氏の大統領令に反発も

    My Big Apple NY

  10. 10

    医療崩壊への切り札封じる菅政権

    小西洋之

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。