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空き家に問合せ殺到!売るにも買うにも今がベストタイミングな理由

コロナ禍で2020年5月以降、空き家に問合せが殺到している。空き家の掲示板としてメディアにも頻出している「家いちば」では4月から5月で月間のページビューが100万PVから150万PVへと1.5倍に増加、その後も毎月増加を続け、11月時点では180万PVとなっている。コロナ以前には月に10件弱だった契約件数も月ごとに増えており、11月には20件を超えた。

空き家を買いたいという人が増え、実際の取引も増えているのだが、変化はそれ以外にもある。ひとつは取引価格だ。

家いちば株式会社代表取締役CEOの藤木哲也氏に話を聞いた。

藤木哲也氏

空き家取引の増加で価格も上昇傾向に

「これまでの、家いちばの売れ筋物件は100~200万円。ゼロ円という物件も多数ありました。今でもそうした物件は多数掲載されていますが、その一方で1000万円以上の、弊社では高額物件といわれる取引が増えているのです。そのため、現在の取引平均価格は400~500万円程度にアップしました」。

ところが、買いたい人が増えたほどには売りたい人は増えておらず、現在は圧倒的な売り手市場。価格も上昇傾向にある。また、値上がりしたといっても一般的な不動産市場の価格で考えるとまだまだ安い。

たとえば、現在申込者が殺到している千葉県旭市の物件の掲載時価格は3万円。築50年、ごく普通の一戸建てで雨漏りはあるが、普通に住める住宅で売りは九十九里浜に近いということだろうか。田舎でよくありがちだが、土地境界の権利関係がやや複雑になっていることから地元の不動産会社には取引を断られたという。

3万円で売り出された千葉県旭市の物件

しかし、家いちばでは人気が集まり、2日間で40人が下見に訪れ、そのうち、現時点では20人ほどが購入の申込みをしている。この数字はまだ増える可能性もあり、さらに希望購入価格の最高額は100万円を超えている。それ以外にも50万円、70万円で買いたいという人も。当初の3万円からすればだいぶ値上がりしているが、それでもこの額なのである。

そのため、大半の人がキャッシュで購入している。マンションを買うつもりで貯めていた頭金を丸ごと購入資金に充てているような感覚だろうか。都心でのマンション暮らしには制約もあり、長期に亘ってローンを払い続ける必要もある。「それよりは子どもや犬とアウトドアを楽しむ生活がしたい、海の近くに住みたいなど、憧れだった暮らしをこの機に実現したいと考えるようになった人達が一歩、踏みだしているのではないか」と藤木氏。コロナは住まい観を変えるきっかけのひとつになっているのだ。

二拠点、多拠点化のための購入も増加

もうひとつ、明らかに変わったのはリモートワークを前提に購入したいという人達の増加である。物件が掲載されると買いたい人は所有者宛てに買いたい理由などを書いたメッセージを送り、やりとりをするのだが、そこにリモートワークという言葉が頻出するのである。通勤が不要になったから、多少遠くても環境の良い場所に安価で家を手に入れたい、というわけだ。

しかも、以前は都心に居住しながら空き家を購入、少しずつ手を入れていき、将来は移住という形を想定しているケースが多かったのだが、このところは都心以外にもうひとつの拠点が欲しいというニーズが増えている。通勤の頻度にもよるが、平日は都心で週末は郊外あるいは通常は郊外で通勤が必要な時期は都心などと、二つの拠点を行ったり来たりしながら使い分けできるような距離圏にもう一軒というのである。

そうしたニーズを受けて人気が高いのは都心から1時間から遠くても2時間くらい。前述の旭市で2時間くらいだろうか。毎日の通勤は難しいが、たまにならありの距離というわけである。

価格の上昇もこのニーズとリンクする。100~200万円程度の安価な物件だと、居住できるようにするためにはかなり手を入れる必要があるケースが多いが、数百万円、1000万円~となってくるとほぼそのまま住めるような物件である。手を入れるとしても軽微な手入れで済むようなレベルの物件が出てくるのである。

ちなみに都心から1~2時間圏のうちでも人気が高いのは房総エリア。湘南などの神奈川県エリアよりも価格的に安いのが要因だ。

「神奈川エリアでも安い物件はありますが、高額の物件もあり、混在状態。ところが房総なら軒並み安い。家いちばのユーザーには以前から海が見える場所に住みたいという人が多いのですが、その希望も叶います」。

空き家購入を成功させるために必要なこと


では、空き家に目を向けてみようと思った時に必要なことはなんだろう。藤木氏に教えてもらった。ひとつ目は一般の住宅購入でもそうだが、購入後に家族構成やライフスタイル、仕事や気持ちも変わる可能性を考えておくこと。

「住宅を購入する人は今現在のことしか考えていないことが多いのですが、5年、10年もすれば子どもは大きくなり、勤務先や仕事のやり方も変わるかもしれない。状況次第では売らざるを得ないこともある。そうした時に売れる物件かどうかは必ず考えておいたほうが良いポイント。長期的に考えて選べば、住み続ける場合でもより良い選択ができるはずです」。

売れる物件かどうかを知るためには相場をチェックすることが大事だが、100万円以下の物件の場合には相場が成立していないこともしばしば。このくらいの額であればある意味、勉強のつもりと割り切る必要もある。少額の物件を何軒か売り買いし、それで経験、資産を積み上げていくという考え方もある。

逆に1000万円を超すような場合には必ず相場を調査し、慎重に臨みたい。家いちばでの事例を見ていても、価格を下げていけば売れない物件はないといってもよい。しかし、タダ同然の物件を買ってタダ同然で売れば、損も少なくて済むが、金額が大きい物件の売り買いとなると手痛い出費となってしまう。

空き家の場合には買ってからいくらかかるかを予算に入れて考えることも大事だ。たまに別荘として使うだけなら、風呂は近くの温泉で済ますなどの手もあるが、ある程度の期間、そこで生活するならそうもいかない。特に100万円、200万円クラスの物件では購入額の何倍ものリフォーム費用がかかることもあるので、下見時に建物が分かる人を連れて行くなどして概算でも良いから見積もっておくべきだろう。

家いちばの場合、どんな空き家でも掲載可となっているので、再建築不可、市街化調整区域内の立地、境界未定など、売りにくい要素のある空き家も少なくない。通常の取引だと敬遠されてしまう物件だが、それでもリスクと価格を天秤にかけ、リスクがあっても安いなら買いという判断もあり得る。大事なのはリスクの情報開示がきちんとできているか、そして、そのリスクを理解しているかという点である。

「再建築不可でも建替えるつもりがなければそれで良いわけで、安さの理由が何かを正しく理解でき、価格に納得がいくなら問題ありません。ただし、空き家取引では時にその辺りの情報が明確になっていないことがあります。特に条例で規制があるなど、その土地ならではの事情に関して記載がないケースもあるので要注意です」。

買主=お客様と思っていると買えない

自分が買主、つまり客だからと上から目線での交渉もダメ。家いちばの場合もそうだが、地方の空き家の売買では「誰に売るか」は都会の人が思っている以上に重要。「誰でもいいから売りたい」ではなく、「ご先祖様や地域の人に喜んでもらえる人に売りたい」という意識があるのである。

そのため、家いちばでは最初から売主に売却先を選択する裁量権があることを明示しており、最高値を付けた人が購入するのではなく、売主と良い関係を築けた人が買えるというケースが多々ある。値段ではなく、人としてどうかが見られてしまうのである。それを面倒と思うのであれば空き家の売買には向かない。

その一方で不動産会社が入らない直接取引では売主は隠すことなくデメリットを伝えてくれるし、買主のやりたいことに共感して好条件を提示してくれることもある。藤木氏が2020年11月に出した「空き家幸福論」(日経BP社)にはそうした事例も紹介されているが、空き家取引は人対人の、やりようによっては双方がハッピーになれるものなのだ。

売りたい人は2024年を意識

ここまで買いたい人向けに書いたが、個人的には売りたい人ならこれから3~4年が勝負ではないかと考えている 。その後、空き家は今以上に増えるからだ。

目安となるのは団塊の世代全員が満75歳の後期高齢者となる2024年。2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳であることを考えると2024年から数年〜10年で一気に空き家増が見込まれる。一方でそれを買いたいと思う層は減る。売るのだったら、買う人が多いうちにというのも大事なのではないかと思うのだ。

ただ、これについて藤木氏は違う見方をしている。今後、空き家がより流通するようになれば価格評価が安定、逆に今よりも高値で売れるようになる物件が出てくるかもしれないというのである。となると今が売り時とはいえないわけだが、いずれにせよ、建物は放置しておくと居住している時の倍以上の早さでダメになる。現時点で空き家を抱えているなら、状況を見ながら、でも、建物を朽ちさせないような判断をするべきだろう。

空き家幸福論 問題解決のカギは「心」と「新しい経済」にあった (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2020/11/20

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