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ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由 ニセ日本ブランドを名乗るための「架空の創業ストーリー」も - 山谷 剛史

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 中国は経済成長が続いているのに、相変わらずうさんくさいニセ日本ブランドは健在です。

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 先日「壹加生活」なるニセ日本ブランドが話題になりました。そのブランドは、建前上は日本の匠による小ぶりな「雪平鍋の直輸入」を謳いながら、実際は大きな中華鍋を売っていました。消費者よ早く気づけ、と思うんですが、外国人の立場ではなかなか気づかないもので……。

全部デタラメのサクセスストーリー

 壹加生活は説得力を出すべく、日本ブランドを名乗るだけにとどまらず、中国の消費者を納得させる企業ストーリーを用意していました。


自称鍋の匠「伊藤慧太」氏

――壹加生活は1892年(明治25年)北海道標津町に創業。標津町は世界の厨具生産地として有名で、日本高級厨具のシェア80%を得ている。壹加生活創始者の伊藤穗高氏の鉄鍋は、パリの世界博覧会で好評を受け、さらに伝承者の伊藤慧太氏の作る鍋も日本で好評で、「日本手工芸匠人」の称号を得た。2016年には伊藤慧太氏が1000年の歴史を伝承し、匠の技術で古代の製法による鉄鍋の再現に成功した。「壹加生活」は、鍋の産地である北海道標津町にある「藤井伊株式会社(社長:藤井伊)」のブランドとなり中国に展開した。ドイツのグッドデザイン賞「red dot design award」の最高賞を受賞したほか、1964年にはカリフォルニア州博覧会で金賞、1970年に日本の大阪万博で金賞など数々の賞を受賞。

 全部デタラメのサクセスストーリーです。お腹いっぱいです。当然ながら藤井伊という企業もなければ、オホーツク海沿岸の標津町は鍋の生産地でもありません。1892年というと、『ゴールデンカムイ』の時代のさらに前です。北海道のオホーツク海沿岸でどうしていきなり厨具を作り出すのか、ちょっとは下調べして欲しいところです。外国人によるニセ日本企業のサクセスストーリーは、小説『ニンジャスレイヤー』を見ているようでなかなか読ませるものがあります。

本家のダイソー以上に世界中で展開「メイソウ(名創優品)」

 しかも話に信ぴょう性をもたせるために、中国人の役者が演じるニセの日本人の匠「伊藤慧太氏」を用意しました。しかも日本語が非ネイティブなのにカタコトの日本語でしゃべるものだから、いよいよ怪しいのですが、それでも外国ブランドだと信じちゃうんですよね。成功した日本の企業が中国に進出して販売という広告記事を掲載しては、さまざまな中国ニュースサイトが転載し、ついには大本営CCTV(中国中央電視台)のサイト「央視網」まで掲載してしまう始末。壹加生活はバレる12月中旬まで販売し続けていましたが、偽ブランドだとネットで話題になると公式サイトも消し、早々に風呂敷を畳みました。

 振り返れば今年ニューヨーク証券取引所に上場した「メイソウ(名創優品)」も初めはそうでした。ダイソーのようなユニクロのような無印良品のような雑貨チェーンの企業でしたが、住所は「渋谷区神社前」となっていたり、商品名や解説の日本語がおかしいなど、中国マニアの日本人を中心にさまざまな誤植が紹介され、笑いを提供しました。そうはいっても中国企業なので、頻繁に企業や商品や店舗のアップデートを行ったおかげで、メイソウの店舗からは“B級要素”は消えていき、本家のダイソー以上に世界中で展開し人気を博していきます。

 他方、近年中国では「国潮」=「メイドインチャイナすごい」ブームがおき、中国ベンチャー企業による中国の伝統的なデザインの製品が、20代の若者を中心に受け入れられています。中国の若者からすると、中国産はダサいという感覚がなくなっているんですね。代表するブランドといえば、例えば化粧品の「完美日記」でしょうか。日本の若い女性の中にいるチャイナコスメ好きの中では一目置かれる存在です。

日本人が想像もつかないような独特な日本語

 そうした国潮ブームの中にも、日本らしさが取り入れられています。国潮を代表する新興飲料ブランド「元気森林」は、中国企業でありながら日本っぽい。というのも当初はボトルに中国語簡体字にはない日本語漢字の「気」の表記を出していたり、「日本国株式会社元气森林監制」と書かれたり、広告に日本語を出したりしていたのです。

 元気森林は有名なスタートアップ企業ですが、小さな企業や個人を見渡せば、中国ベースのデザインに日本語を書いたTシャツやパンツをはじめとしたアパレル製品や、スマートフォンケースや、マスキングテープなど、数えきれないほど売られています。日本人が想像もつかないような独特な日本語、つまりは天然モノの変な日本語の言い回しが書かれた商品は以前よりも本当に増えました。

 中国の「淘宝網(タオバオ)」などのECサイトで「日本語印刷服」「和風お菓子」「日系文具」などといった単語(中国語)で検索すると、いくらページをめくっても終わらないほど日本語が書かれた商品や日本をモチーフにした商品が見つかるのです。

 若者向けの日本を意識した商品では、日本の学生向け制服を真似たファッションブランドが続々と登場しています。これまでも中国の都市で日本の制服をファッションとして着ている人を見かけましたが、日本の制服らしきものだけを扱う専業ブランドが立ち上がり、中国全土に店舗を展開するまでになりました。さらに日本人らしくなるべく、日本の4Gのガラケーを個人輸入して利用する中国女子も登場しています。

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