記事

日本の新聞社のDXはダイジョーブか?

2004年末のことですが、「EPIC2014」という9分ほどのフラッシュムービーがメディア関係者の間で話題になりました。

こういう内容でした。

ーーーネットユーザーの個人情報を最も取得できる立場にあるGoogleとAmazonが2008年に合併してGooglezonが生まれ、その圧倒的な個人情報を元に極度にパーソナライズ化したニュースを個々人に届ける時代が生まれる。

それが幅広く受け入れられて既存メディアが淘汰される中、2014年には、あのニューヨークタイムズはこのGooglezon支配に抵抗してネットから退出し、エリート層と高齢者向けに紙の新聞だけを出しているーーーー

作者は、「それでいいのか?」と問いかけました。

それから16年。Googlesonは生まれず、既存メディアはコロナ禍で経営が悪化し、人減らしやサラリーカットで四苦八苦していますが、まだ多くは生き残っています。

そしてニューヨークタイムズ(NYT)は、ネットから退出するどころか、今やデジタル版に生き残りを賭けています。何せ、平日のプリント版は50万部そこそこ(ハーバード大Nieman Journalism LabのJoshua Benton氏のリストによる)。

デジタル版は躍進に躍進を重ねて、有料購読者は今や600万を超えました。EPIC2014の予測とは真逆に、紙の世界からの撤退も視野に入っているかも知れません。

が、NYTの躍進ばかりがニュースになっているものの、その他の大手、中堅どころの新聞や雑誌のデジタル進出がどの程度の成果を挙げているのかは、断片的にしか報じられません。

その筆頭がNYTのライバル、ワシントンポスト(WaPo)についてでしょう。WaPoはアマゾンのベゾズ氏が個人的に買収したプライベート企業なので、経営の内容を滅多に公にしませんので、そのデジタルの有料購読者数も明らかになっていませんでした。

ところが、つい先日、メディアサイトBuzzFeedの創業者で、今年、NYTに転じたBen Smith氏が、WaPoのCEO Fred Ryan氏からのメールで、WaPoの有料Subscriptionは300万を超えたと知らされたとツィートしました

あと、Wall Street Journal(WSJ)が今年初めに200万を超えたことも報じられていました。

でも、この御三家以外の情報はほとんど目にしなかったのですが、英国のPress Gazetteがちょうどタイミングよくやってくれていました。

題して「10万クラブ:世界で最も人気の有料ニュースサイト」というランキングです。「世界で」と言っても、英語ニュースが対象で、実質、米国と英国(と豪州)のサイトに限られますが、今後、どう進展するかのベースになりそうなので記録しておきます。

ランキングは有料購読者が10万以上いる24位までで、その24サイト合計でのオンライン有料購読者は合計2000万件。その価格はNational Geographicの月1.99ドルからDow Jonesの金融専門家向けFinancial Newsの月 100ドルまで幅があります。

実際には、新規読者勧誘のための割引価格の読者も相当数いるはずですが、Press Gazetteでは、もし購読者全員が正規価格で支払ったとしたら、その総額は年に57億ドル(5900億円)と弾いています。

さてランキングですが、もちろん、トップはNYTで、610万件。これを築いたマーク・トンプソンCEOのあとを継いだメレディス・レヴィエン新CEOは「10年以内に1億人がニュースに支払いをするようになり、その時、NYTはこの市場の24%、2400万人を獲得する」と述べたそう。

2位はライバルWaPoの300万。プライベート企業なので公表していませんが、Ben Smithのツィート前にAXIOSが先月、300万と推計していて、改めてその取材力が裏付けられた印象です。

3位はWSJの240万。コロナと大統領選でこの1年で50万ほど増えたそう。Barrons、Financial News、Market Watchなどを含むDow Jonesブランド全体で有料購読者倍増計画を策定したとのこと。

以下は簡潔に。

4位Gannet:100万。USATodayと全米100以上のローカル紙と英国でローカル紙を展開するNewsquest Mediaの合計。

5位The Athletic:100万。スポーツサイト。WaPo同様、プライベートですが創業者が言明。

次の3つは英国。⑥Financial Times:94.5万。先日、News Provider of the Yearに選出された由⑦Guardian:90万。このうちメンバーとかパトロンと呼ばれる寄付金会員が54.8万人もいます⑧Economist:79.6万。

⑨News Corp Australia:68.5万。唯一の豪州サイト。多くのブランドの合計ですが内訳は公表せず⑩Barrons:45.8万。Dow Jonesの一部門で投資ニュース。

11位Tribune Publishing:42.7万。多くのタイトルの合計/12位The Atlantic:40万/13位The Times and SundayTimes:33.7万/14位The Telegraph:33.5万/15位McClatchy:29.9万

16位LATimes:25.7万。有名な割に寂しい数字ですが、これでも10万増。ただしApple New+のプラットフォームを介して払う読者もいるので総計は36.8万とのこと/17位Bloomberg Media:25万。一般読者向けのpay wallは2018年からだから伸びは大きい/18位The New Yorker:24.2万。常盤新平氏のエッセイでお馴染みの週刊誌/19位Boston Globe:22.3万。映画Spot Lightで有名。まだ、紙の方が25.6万と多い/20位Insider Inc:20万。Business Insiderで知られるウェブメディアの雄。今は独Axel Springerの傘下/

21位Wired:14.2万。紙の雑誌は86.4万部も出てるそう/22位national Geographic:14.2万。Walt Disney社が所有。紙の月刊誌は米国だけで200万部以上だそう/23位Minneapolis Star Tribune:10.2万。2011年にpay wallを設けた最初のローカル紙の一つ。紙は全米8位の25万部/24位Dow Jones other (Financial News, Private Equity News and MarketWatch) :10.2万。上述のようにこれらを含めDow Jonesは倍増計画。

日本でそこそこ電子版の有料購読者を集めている新聞は日経(77万)朝日(32万)ですが、これは英語圏のランキングだと日経は8位のEconomistの次、朝日は14位のTelegraphの次にそれぞれ位置します。

その他は公表してないので分かりませんが、微々たるものなんでしょう。各紙は政府の唱えるDX(デジタルトランスフォーメーション)について、「日本は出遅れた。しっかりしろ」というような論調ですが、自らの足元はどうなんだろう。

冒頭に示したように、英語ニュースサイト上位24サイトの有料購読者からの収入は計算上ですが、すでに5900億円に達していて、これは2019年、日本新聞協会のデータによれば日本の新聞社の総売上1兆6526億円の3分の1を超え、購読料収入9180億円の半分以上に当たる数字なのですが・・・

あわせて読みたい

「デジタル」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    毎日が40億円超減資で中小企業に

    岸慶太

  2. 2

    嬢告白 おっぱいクラスターの今

    文春オンライン

  3. 3

    全米ライフル協会 なぜ破産申請?

    SmartFLASH

  4. 4

    菅首相「あとは実行あるのみ」

    菅義偉

  5. 5

    真面目ゆえ命落とすナチス収容所

    紙屋高雪

  6. 6

    清田コロナ不倫 球界も冷たい目

    WEDGE Infinity

  7. 7

    自民党内で菅政権を見限る動き

    NEWSポストセブン

  8. 8

    鼻出しマスク失格は明らかに不当

    青山まさゆき

  9. 9

    海外の超富裕層が集まるニセコ

    fujipon

  10. 10

    キャバが時短無視する本当の理由

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。