- 2012年11月18日 09:00
「出版物に係る権利(仮称)」は電子出版の味方か?それとも脅威か?
1/2今年に入ってから、楽天の端末発売や「キンドル」の日本上陸など、「電子書籍」に関する話題には事欠かない。
16日付の日経紙には、
「電子書籍配信 官民出資の機構が始動」
という見出しとともに、(株)出版デジタル機構(http://www.pubridge.jp/)が電子書籍配信を16日から開始する、ということも報じられている*1。
そして、そんな流れを汲んだかのように、この数か月の間に一気に浮上してきたのが、「出版物に係る権利(仮称)」を議員立法で創設する、という動きである。
11月9日付の読売新聞系ニュースサイトでは、
「超党派の国会議員や大手出版社、作家らでつくる「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長=中川正春衆院議員)は8日、電子書籍の違法コピーに対抗するため、著作権に準じる著作隣接権を出版社に与える法制度の骨子案を発表した。」
「原稿や写真、デジタルデータなど紙や電子の出版物の素材となるものを、出版に必要な形に編集したものを「出版物等原版」と定義。原版の作成者に複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権という四つの著作隣接権を与えるとしている。作家の著作権とは別の権利で、電子書籍の海賊版に対し、出版社が自ら訴訟を起こすことが可能になる。」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121108-OYT1T01479.htm?from=ylist
と報じられており、当の「中川勉強会」のHPに飛んでも、確かに、かなり煮詰まった感のある「骨子案」が掲載されている(11月8日付)(http://www.mojikatsuji.or.jp/benkyoukai121108.pdf)。
とうとう衆議院の解散も決まってしまった状況で、年内は法案の審議が物理的に不可能な上に、ニュースサイトの記事では、「勉強会では26日に都内で公開シンポジウムを開いて幅広く意見を聞くとともに、文化庁とも協議し、著作権法の一部改正を目指す」ということだから、今すぐどうこう、という話ではなさそうだが、春先に日経紙の“アドバルーン”がふわふわ浮いてきた時*2の知財業界関係者の反応が、「こんなのありえないだろう・・・」というムード一色だったことを考えると、いつの間にかずいぶん話が先走ってしまったものだ、と思わざるを得ない。
もちろん、「第8分科会報告書」の時に“あと一歩”のところまで迫って以来、出版物の複製物の利用、流通をコントロールできる権利を取得することは出版社にとってある種の悲願だし、インターネット上を見回すと、「この千載一遇のチャンスを生かして、著作隣接権を獲得することこそが出版社の生き残る道だ!」とすら読めるようなブログ記事が掲載されていたりもする*3。
だが、本ブログでも5月の時点で指摘しているように、真に「電子出版の流通促進」を目指すのであれば、今でも処理にコストがかかる「著作権」に加えて、屋上屋を架すように「著作隣接権」までを新たに創設する合理性は疑わしい、と言わざるを得ない。
著作権者(著作者)と出版社が蜜月関係にある新刊書ならともかく、今後電子化が検討される作品の中には、出版から一定の歳月が経過して、著作権者と出版社が疎遠になっている(あるいは対立している)ものも多いはずだから、そういった類の作品について、著作権者だけでなく、「出版社」のお伺いまで立てなければならなくなるのだとすれば、そうでなくても歩みが鈍い「電子出版」が余計に進まなくなることも容易に想像できるところである。
・・・にもかかわらず、議員立法を目指す人々はいったい何がしたいのか・・・?という素朴な疑問から、「骨子案」を覗いてみた。
- 企業法務戦士(id:FJneo1994)
- 企業の法務担当者。法律の側面からニュースを分析。



