
首相官邸で記者会見するボリス・ジョンソン首相(中央)とイングランド首席医務官のクリス・ウィッティー教授(右)、首席科学顧問のサー・パトリック・ヴァランス(左)
イギリスのボリス・ジョンソン首相は19日、新型コロナウイルスの流行拡大を受け、ロンドンを含むイングランド南東部などでクリスマス期間の規制緩和を取りやめると発表した。ウイルスの変異種の影響が指摘されている。
新たな行動制限では、残りのイングランド各地域やスコットランド、ウェールズでも、規制緩和の期間を25日のクリスマス当日に限定する。
イングランドではこれまで3段階の警戒レベル(ティア)が導入されていたが、さらにその上のティア4(自宅待機)を設定。新たにティア4に指定された地域では、20日から他世帯の人と屋内で会うことが禁じられるため、親族などが集まってクリスマスを祝うことができなくなる。
ティア4に指定されたのは、ロンドン(全32地区とシティ・オブ・ロンドン)のほか、イングランド南東部と東部の各州。
首相官邸で記者会見したジョンソン首相は、これがどれだけ「がっかりする」知らせか承知しているとした上で、ほかに選択肢はないと思うと述べた。
クリスマス当日や前後の期間中、警察が人の移動を制限したり、大勢で集まっていないか確認するため戸別訪問したりするかどうかについては、明言を避けた。
首相は「疑いなく困難な時期」だと認める一方、ワクチン接種がすでに始まっていることから、来年4月初めの復活祭(イースター)までに状況は「激変している」はずだと強調した。
ジョンソン氏は、新型ウイルスが攻撃方法を変えてくれば、「我々も防御方法を変えなくてはならない」と話した。
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ウイルス変異の影響
首相によると、先にイングランドで発見された新型ウイルスの変異種が、実効再生産数「R」を0.4ポイント以上押し上げる可能性があるという。
また、「不透明な部分が非常に多い」としながらも、変異種は従来種よりも感染の可能性が最大70%高いと説明した。
記者会見に同席したイングランド首席医務官のクリス・ウィッティー教授は、この変異種が状況悪化につながるものの、開発済みのワクチンがこの種にも有効ならば楽観の余地はあると述べた。
ウィッティー教授は先に、変異種による死亡率が従来より高かったり、治療方法やワクチンへの反応が異なっていたりするという証拠は、得られていないと説明していた。
首席科学顧問のサー・パトリック・ヴァランスも、クリスマス期間に他人と会うことを考える時、そこに感染リスクがあると思ってほしいと強調した。
BBCのニック・トリグル保健担当編集委員は、感染の急拡大と新型ウイルスの変異には強い関連があると説明する。ロンドンでは11月半ば、感染者のうち28%が変異種に感染していた。この割合は現在では60%を超えている。
記者によると、ロンドンで2度目のロックダウン以降に感染報告が増え始めたことや、ティア3に指定されているイングランド南東部ケント州でここ数週間、対策の効果がほとんど出ていないことなども、これで説明が付く。
クリスマスへの影響
イングランドではこれまで、ティア1(中程度)、ティア2(高い)、ティア3(非常に高い)の警戒レベルが設定され、それぞれに集会できる場所や人数、レストランなどの営業制限が定められていた。
また、23~27日のクリスマス期間には一部ルールが緩和され、同じティア内ならば最大2世帯までを家に招いたり、同じ場所でクリスマスのミサなどを受けられる予定だった。
しかし、今回新たに設定されたティア4では、通勤通学以外の移動が原則禁止となった。
同じティア内では、屋外で他世帯の1人とだけ会うことができる。一方、ティア3以下の地域に住む人と会うことは禁じられる。
さらに、ティア3以下では営業が許可されている美容院やネイルサロン、屋内のジムなども閉鎖となる。
一方、ティア3以下の地域に住んでいる場合、ティア4の地域に行くことは推奨されない。また、ティア3以下でもルール緩和は25日のみとなる。
この制限は2週間継続し、12月30日に最初の見直しが行われる。