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フィフィさんのツイートに学ぶ移民社会(1)

 日本で議論される「移民論」というと、受け入れ態勢の改善に触れないままの安易な受け入れ論であったり、一人でも受け入れると社会秩序が崩壊するといわんばかりの閉鎖論であったり、どうにもリアリティに欠ける極論が少なくありません。おそらく、《移民》に対する具体的なイメージが乏しく、渡日後にどのようなことが発生するかについての理解を伴っていないことが理由の一つなのでしょう。

 そこで、実際に日本で暮らしている移民のリアルな語りから、移民社会の現実(の一端)を学んでみたいというのが今回からの記事の目的です。題材としては、いまネットで話題(次の3本のニュース参照)の移民タレント、フィフィさんのツイートをお借りしたいと思います。

(1)「移民一世vs.先住マイノリティ問題」

 上に紹介した記事を読んで、「エジプト関係であれだけ知的でバランスのとれた言論を展開していたフィフィが、なぜネット右翼同然の排外主義的な暴言を振りまいているのか」と不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、移民がその社会にすでに定着しているマイノリティに対して排外主義的な暴言を投げかけるケースは、世界の移民社会の中でかなり広範に観察されています。新旧の移民が連続しているとき、普遍的に起こる現象といえるかもしれません。

 例えば、カナダにやってきたアジア系移民が、「欧州語だけがなぜ特権のように重視されるのか。多文化主義なんかで飯は食えない。まず、機会の平等の確保と人種差別の撤廃だ」といって先住の民族的マイノリティを攻撃する事例。アメリカで小売店を経営する移民一世が「黒人は怠けて働かないくせに政府に文句ばかりいって、国庫にたかっている」などといって黒人を差別する事例。日本に東欧から来た女性が、「日本人女性は甘えている。日本は世界で最も平等な国なのに」とフェミニストを非難する事例。

 この種の現象は、(a)人権状況が相対的に劣悪な国からやってきた移民一世が、出身国を準拠集団としながら、居住国のマイノリティを批判しようとするとき、(b)移民一世の学歴が低く、居住国の歴史と文化を理解する資質を備えていないとき、(c)保守主義的な移民一世が社会に情報を発信する資源を手にしたとき、に生じる傾向があるようです。

 ただし、多くの移民現象は(a)と(b)の2特性を伴いますので、実質的には(c)が重要です。「保守主義的な移民一世が社会に情報を発信する資源を手にしたとき」――フィフィさんのケースは、まさにこれに当たるといえるのではないでしょうか。

 フィフィさんは、持ち前のバイタリティと努力で女性タレントとしてマスメディアで発言するチャンネルを手に入れ、しかもエジプト問題では知的タレントという側面を開花させました。政治的発言を行うための資源は十分にそろっています。

 そして現在、フィフィさんは排外主義言説でネット右翼のアイドル的な役割を担うことに成功しています。タレントとしては言論も売り物である以上、買ってくれる人たちに届くように商品化することになりますので、フィフィさんのマイノリティに対する暴言は今後もエスカレートすることはあっても、やむことはないでしょう。

 そこで問われてくるのは、マジョリティの姿勢です。

 例えば、カナダでは、「多文化主義なんかより人種差別撤廃を」というアジア系の主張に対して、民族的マイノリティはもとより、マジョリティであるイギリス系からも強い批判が浴びせられました。

 いわく、ケベック問題などがあったからこそカナダは多文化主義政策を採りいれたわけであり、新たな移民も言語政策などでその恩恵に浴している。なのに、歴史へのコストも支払っていない移民が多文化主義を非難するのは制度へのタダ乗りのようなものだ、というわけです。

 もっとも、一部のイギリス系の右翼からは、アジア系の主張を利用する形で、「民族的マイノリティを重視するのは逆差別だ」という言説が出てきたりもしました。ちょうど、フィフィさんの発言を利用して、ネット右翼がコリアン差別を正当化しようとする構図に似ています。

 しかし、カナダ全体としては、多文化主義の方針を一貫して堅持しています。堂々たるものといっていいでしょう。

 一方の日本。今後、フィフィさんのように発言力を持つ保守的移民が増えてきたとき、その口から飛び出す排外主義的言説に、みなさんは、どう対処しますか。それをきちんと批判しますか。それとも、便乗して排外主義の流れに乗りますか。

(次回からは、フィフィさんの個々のツイートの内容をもう少し具体的に取り上げながら、移民社会に関する現実を学んでいきます。)

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