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「新聞報道から」その84―論調[地軸]―

壁や天井、カーテン、畳べりまで「坊っちゃん」一色。松山市の道後温泉のホテルの一室が3年前、道後ゆかりの夏目漱石の小説の文章に覆われた.

 手掛けたブックデザイナーの祖父江慎さんは独自に作った全文掲載の新聞を手に広げ、寝っ転がってみるなどちゃめっ気たっぷり。長年研究する「坊っちゃん」へのあふれる愛情を取材しながら感じた。

 「内容にウットリすること」。ブックデザインでの心構えを祖父江さんが語っている(「太陽レクチャー・ブック001」)。デザイナーの個性が消えるのが理想で、本の内容に合う形をこの世に降ろしてくるのだという。その過程に編集者や著者、関わる人がいて、そういった人たちの「内容に関する思い」が大事だと。独創的なデザインの秘訣が垣間見える。

 大手出版社の装丁担当者がかつて言っていた。編集者や作家との信頼関係の中で本の形ができてくると。ただデジタル化などで、人の間をぐるぐる回って本を作ることが少なくなってきたと寂しい思いも。

 新型コロナウイルス禍で本に向き合う時間が増えている人もいるようだ。日本財団の17~19歳計千人の調査で、外出自粛などで約25%の人が読書量が増えたと回答した.

 11月9日まで読書週間。今年の標語「ラストページまで駆け抜けて」の通りに最後まで読み通せなくてもいい。装丁であれこれ思いを巡らすのもいい。それぞれの楽しみ方で、本の豊かな世界を。

※2020年10月29日付「愛媛新聞」です。

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