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「関東芸人はM-1で勝てないと思います」ナイツ塙が分析したM-1で“勝てる”漫才のポイント 『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』より #1 - 塙 宣之

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 歴代最年少で漫才協会の理事に就任し、現在は同協会副会長を務めるナイツ・塙宣之氏。40年以上の間、どうしたらウケるかだけを考え続けてきた男にとっての「M-1」、そして「漫才」とは……

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 決勝戦に進出するも、M-1チャンピオンになれなかった男だからこそ語れる鋭い批評をまとめた一冊『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』を引用し、「M-1」という賞レースの異質な特徴、さらに「漫才」という芸の本質を紹介する。

◇◇◇

Q M-1は「しゃべくり漫才」が強いという印象があります

 のっけからこんなことを言うのもなんですが、僕は、関東芸人はM-1で勝てないと思っています。ちょっと、言い過ぎかな。言い換えると、勝とうと思わないほうがいい。予盾するようですが、そう思えたら、チャンスはあるかもしれません。

 漫才はざっくり分けると「しゃべくり漫才」と「コント漫才」に分かれます。しゃべくり漫才の説明はさておき、ひとまず、コント漫才とは「おまえコンビニの店員やって、俺は客やるから」と芝居に入っていくパターンの漫才のことです。

 M-1でしゃべくり漫才が強いのは、漫才の王道だというイメージが強いからでしょうね。一方、コント漫才は、どちらかというと傍流で、新しい型という印象があります。

 ならば、その王道とも、本格的とも言われるしゃべくり漫才とは何なのか。

 今は、どちらにも区分し難い漫才もあるので、きっちり定義するのは難しいのですが、あえて言うならば、しゃべくり漫才とは日常会話だと思います。


©iStock.com

 M-1初代王者である中川家の礼二さんは、「喫茶店での会話の延長」が理想だと話していたことがあります。ちなみに、中川家は、しゃべくり漫才のど真ん中にいるコンビです。キャラに入るようなことはせず、あくまで等身大の自分たちがしゃべっているという体を貫いています。

 僕も2001年の第一回大会はテレビで観ていました。中川家は、ボケとツッコミのバランスが抜けていました。

 準優勝のハリガネロックはボケが主張型なので、ツッコミのパターンがどうしても少なくなってしまいます。

 漫才はお互いがお互いを磨いて輝かせるのが理想なのですが、どちらか一方が弱いと、その相乗効果が起きにくいんですよね。

Q 中川家が初代王者になったことの意義はどう考えていますか?

 漫才はボケで笑い、ツッコミでさらに笑うというのが理想です。ボケを倍にするか、三倍にするかはツッコミにかかっています。

 その点、中川家は安心して観ていられました。中川家はツッコミの礼二さんが引っ張って、ボケの剛さんが横でわけのわからないことをやっている。そのペースが最後まで変わりませんでした。

 途中、剛さんのからみに業を煮やした礼二さんが足で床に線を引いて、「おまえ、こっから入ってくんな!」と叫ぶシーンがあるのですが、あれを最初に観たのはいつだったかな、M-1よりちょっと前でした。あれを観た瞬間、あ、新しい何かが生まれた、そんな思いがしました。

彼らを選ぶコンテストに間違いはないという印象

 大会というのは、その後の発展を考えたとき、初代王者が誰になるかが、とても重要です。その大会の「格」が決まるし、方向性も決まります。

 その意味において、中川家がM-1の初代王者になったというのは、結果的には、大正解だったんじゃないかな。

 中川家は、将来、なんばグランド花月(通称、NGK。吉本興業が運営する日本一の常設劇場)のトリを務めるだろう人材であり、当時も今も、日本を代表するナニワの「しゃべくり漫才」コンビです。出場者や関係者に、彼らを選ぶコンテストに間違いはないという印象を植えつけました。

 ただ、同時に、この大会は本格的な漫才、もっと言えば「しゃべくり漫才」日本一を決める大会なのだという色付けが少なからずなされました。

 もちろん、審査員の中に、そういう意識があったわけではなく、いちばんおもしろいコンビを選んだら、それがたまたましゃべくり漫才のコンビだったということだと思います。

 ただ、結果として、そうなったということは否定できないでしょうね。

Q 第一回大会では同年代のキングコングが決勝進出を果たしました

 第一回大会で個人的にもっとも衝撃だったのは、キングコングでしたね。

 彼らは1999年にコンビを結成しているので、芸歴は僕らと二年しか違いません。

 第一回大会、僕らは二回戦であっさり敗れました。今思えば、まだ漫才の形にすらなっていなかった。一方、キングコングは、すでに決勝の舞台に立っていたのです。

 落ち込んだのは、ネタの出来不出来とか、笑いのセンスどうのこうのということではありませんでした。そもそも同世代で内心は彼らの力を認めたくないので、冷静に実力など分析できません。嫉妬にかられ、訳知り顔で「うまいけど、おもしろくねえな」みたいなことを言っていました。

 驚いたのは、彼らが放っていたオーラでした。西野(亮廣)君も、梶原(雄太)君も、とにかく華がありました。お笑いの本場である関西は、とんでもないところだなと思い知らされましたね。

 そのときの僕らは、テレビに出られるような格好をしていませんでした。着ている服が安いとか、そういうことではないのです。僕は芸人になったといっても、所詮、いつかテレビに出たいなー、ぐらいの感覚でした。

 舞台でも、プライベートでも、そういう格好をしていました。でも、キングコングはすでにテレビスターになるんだという覚悟が感じられました。それが髪形や服装からにじみ出ていました。

 やや話が逸れますが、総じて、関西芸人は舞台衣装に、ものすごくこだわっているコンビが多いように思います。スーツにネクタイというコンビが多い。「汚れは売れない」という上方の教えがあるからだと思います。

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