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アキバ化するディズニーランド~TDRは子どもオタクのための遊園地(前編)

新陳代謝するTDR

東京ディズニーランドが開園して29年。ディズニーという文化は日本にもすっかり定着したといっていいだろう(60年代にもディズニー文化はテレビを通じて一時期、親しまれたことがあったけれど)。開園当初は年間入場者数1000万程度だったのが、現在では2500万人(TDR=東京ディズニーリゾート、つまりディズニーランドとディズニーシーを合わせた数)。その勢いは衰えるところを知らない。

だが、21世紀に入ってTDRは変容しつつある。しかも、本来のコンセプトを崩壊させるかたちで。ということは、旧来のTDRに親しんできた層にとっては、だんだん足が遠のく場所になりつつある(特に僕みたいなオープン時からキャスト=従業員として働き、その後も延々通い詰めた層には)。もちろん、ニュートラルな視点から見れば、これはTDRが新陳代謝しているということになるのだけれど。今回はその変容をTDRそれ自体とゲスト(=入場者)二つの側面から見ていこう。はじめに結論を述べてしまえば「今やTDRは子どもとオタクのための遊園地である」ということになる。

ディズニーランドのコンセプト

ディズニーランドの基本的なコンセプトは二つ。一つは「テーマパーク」という考え方。一定空間をテーマで統一し、それを徹底させることでハイパーリアルな空間を出現させる。例えばトゥモウロウランド。テーマは「未来」で、アトラクション(「スペースマウンテン」「スターツアーズ」「キャプテンEO」など)、レストラン(「パン・ギャラクティック・ピザポート」など)、キャストのコスチュームはもちろん、トイレやキューイングのバー、ゴミ箱といったものまでこのテーマで統一が図られている。

もうひとつは「ファミリーエンターテインメント」。これは家族みんなで楽しむことが出来るパーク作りを指す。ディズニーランドは遊園地、つまり本来ならば子どもを楽しませることができれば十分な施設のハズなのだが、ここは、そういった「子供だまし」では終わらない。大人の鑑賞にも耐えるよう、アトラクションの煮詰めた構成(とりわけ物語性)、建物の丁寧な作り込み、丁寧なサービスといった環境が用意され、「大人だまし」の世界を構築。子どもも大人も楽しめるようになっている。実際訪れるゲストの大半は大人だ。

崩壊するテーマ性、そして物語性

ところが、この数年、ディズニーランドのこういったコンセプトはTDRに関してはどんどん崩壊しつつある。

先ずテーマ性。各テーマランドには今やそのテーマ性とはかけ離れたような施設があちこちに置かれるようになっている。たとえば新しくディズニーシーにオープンしたアトラクション「トイ・ストトーリー・マニア」。これは3Dの的当てゲームでアメリカ郊外にやってくる移動遊園地のアトラクションというのがコンセプトなのだが、これが置かれているテーマシーは「アメリカン・ウォーターフロント」。港がテーマで、しかも本アトラクションが位置するのはニューヨークのマンハッタンの水際ということになるのだけれど、ニューヨーク近辺で移動遊園地があるのは、マンハッタンからちょっと離れた海沿いのコニーアイランドなどだから、ちょっとおかしい。これだとハドソン川かイーストリバー沿いの遊園地ということになってしまうからだ(ちなみにフロリダのウォルトディズニー・ワールドでは、このアトラクションは映画のテーマパークであるディズニー・ハリウッド・スタジオのピクサープレイスにあって、テーマに一切ズレはない)。また、レストランも同じ。「冒険」をテーマとするアドベンチャーランドの中には、なんとラーメン専門店がある(「チャイナボイジャー」)。

また、ファミリーエンターテインメントにしても同様だ。2011年、シンデレラ城内にオープンした「シンデレラのフェアリーテイル・ホール」は、子どもが撮影することだけがもっぱら目的となった作り込みの一切ないアトラクション。つまり「子供だまし」の世界。また、ファミリーエンターテインメントというコンセプトの中には「ショーを見せる」という側面もあり、これに従って、キャストのサービスもショーアップされるので、商品は原則、すべて手渡しだったのだけれど、気がつけばパーク内に自動販売機が設置されるようになっている。

こういったテーマ性・エンターテインメント性の破壊は、これらコンセプトを裏付けるコンテクストともなる物語=ストーリー性の破壊にもつながっている。パークの施設、実はテーマが統一されているだけではなく、それぞれのいわれ=物語が設定され、しかも隣接するアトラクションやレストランもそういった物語性の文脈の中に置かれていたのだ。ところが、この物語性もどんどんと音を立てて崩壊しつつある。

ここはアキバか、それともドンキか?

代わって出現したのは、様々なディズニー印の情報が羅列されるという風景だ。いちばんわかりやすいのは昼間のパレードの変化。現在催されているのは「ジュビレーション=祝祭」というタイトルのもの。このパレードにはとにかく意味連関がほとんどない状態で様々なキャラクターが登場する。ちなみに以前のパレードはフロートごとにテーマが設定され、なおかつフロートとフロート間にも関連づけがなされていた。

そして、今やTDRの空間はテーマパーク性そして物語性を失い、ただのごった煮になっている。ただし、普通の遊園地と違うのはこのごった煮レベルがハンパではないと言うこと。だから、今やTDRはアキバかドン・キホーテみたいな環境を構成しているのだ(陳列されるモノがどんどん変わっていくところも同じ)。

テーマ性、物語性の破壊は翻って、こういったものを志向するかつてのファン、そして鑑賞眼を持つ大人たちにとっては受け入れがたいものとなる。だから、彼/彼女たち(僕も当然含むのだけれど)にとって、今のディズニーランドは馬鹿デカいおもちゃ箱をひっくり返した、子どもの遊園地に見えるのだ。もはや、これは大人の鑑賞眼に耐えるものではない。

いや、ちょっと待て!。でも、よく観察してみると、相変わらず大人もやって来ている。しかも一人(男女問わず)、あるいは二人連れ(多くは女性)で。でも、ちょっと層が違う。そう、ここはオタクのための遊園地にもなっているのだ。だからこそ、僕らオールドファンが去っても子どもとオタクがここを占めれば賑わいは変わらない。それゆえにこそ2500万人もやってきているわけで。じゃあ、ごった煮TDRに、なぜTDRにオタクたちが結集するようになったのだろうか?(続く)

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