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通勤超過勤務手当の制度化を

新型コロナで大嫌いになった通勤、その苦痛と心労を軽減させる政策を早急に検討してほしい。電車に乗ると、換気、抗菌、マスク着用、会話控えめなどの決まり文句がアナウンスされる。これらは国交省主導の対症療法である。新しい社会への設計思想に欠ける。

近未来の社会とは、企業や住居が分散して立地する社会である。ネットと機材と人工知能を活用すれば、教育も医療も生産活動も、大都市である必要性にますます乏しくなる。

たとえば住宅だが、狭くて窮屈で値段の高い大都市には、住みたい者だけが住めばいい。多くが地方に住むようになれば、ときたま通勤しなければならない場合でも、その苦痛度は和らぐ。速度はゆっくりだが、自動化された15分に1本程度の電車を使い、サテライト化されたオフィスにゆっくりと通えばいい。工場勤務の場合は、それこそ自転車か、小型の電気自動車だろう。

企業だが、東京圏に多くの大企業が集まるものの、官との癒着を除けば、集まる理由に乏しくなっている。京都企業や浜松周辺での企業を思い浮かべればいい。世界で活躍する企業がどの程度東京にいるのだろうか。

そこで、今の「痛勤」「通菌」対策として、また近未来の社会を早急に実現するための政策として考えるのが、「通勤超過勤務手当」制度である。その制度の実現には、厚労省が労働基準法などの法律を変えればいい。要するに、実態としては通勤時間も勤務の一部として織り込まれているわけだから、過剰な通勤時間に対しする対価を、企業が従業員に支払う制度の導入である。通勤交通費だけでは、「痛勤」「通菌」をやってられないというわけだ。

問題は、通勤超過勤務手当の対象となる通勤時間をどう計算するのかである。たとえば単純に「30分以上の通勤時間に対して対価を支払え」とすれば、何が起きるだろうか。子供の教育のために無理して都心に家を買い、通勤時間の短い者が損をする。逆に、通勤超過勤務手当をたくさんもらうため、2時間以上かかる田舎に住もうという者も出てくるだろう。さらには、徒歩だけで通勤しようという者が登場しても不思議ではない。

考えるに、まず企業としては、「従業員1人当りの平均的な通勤時間」を計算する。従業員の住所がわかっているのだから、ソフトを使って最短での通勤時間を企業がはじき出し、全従業員分を足し合わせ、それを従業員数で割れば、「従業員1人当りの平均的な通勤時間」が計算できる。それと、達成すべき通勤時間(たとえば、上で使った30分)との差額の時間数を、通勤超過勤務手当の対象となる時間数とすればいい。

この時間数に、個々の従業員の時間当たり賃金を掛け、その金額を通勤超過勤務手当として今の給与に上乗せし、企業が支払う。もろちろん、時間当たり賃金に、コロナ感染リスク分として、5割とか10割とかをさらに上乗せしてもいい。

この通勤超過勤務手当にはどの程度のインパクトがあるのか。東京圏の場合、平均的には1時間30分が片道の通勤時間だろうか。一方、達成すべき通勤時間を30分だとしよう。そうすれば、1時間が通勤超過勤務手当の対象時間数になる。往復だから、2時間になる。

8時間労働の場合、この2時間は25%に相当する。コロナ感染リスク分の上乗せなしで、25%の給与引き上げと計算できる。企業に対しては、サテライトオフィスや工場勤務を積極的に進める誘引となる。つまり、「痛勤」「通菌」対策として効果が非常に大きい。

もちろん、理想的な近未来の社会を作るには、通勤超過勤務手当だけではどうしようもない。教育、医療、鉄道、道路などの社会インフラの作り変えが伴わなければならない。

これらの問題は次の機会に書くこととし、とりあえずは企業の重い腰を上げさせ、従業員本位の、つまり社会のために貢献する(流行りのESGのSに、本当の意味で叶う)企業にするための見取り図をとり急ぎ書いた次第である。

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