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【117カ月目の浪江町はいま】「校舎解体延期より避難所設置が急務」 主体性欠いたまま町議会が請願不採択 卒業生たちのささやかな願いも一蹴

校舎解体延期という卒業生たちのささやかな願いは一蹴された。浪江町議会は17日の本会議で「浪江町の各小中学校の解体を延期し、町民・卒業生にお別れの機会となる閉校式の開催を求める請願書」を反対多数で不採択と決めた。しかし、議会判断に主体性は乏しく、吉田数博町長の答弁を踏襲。

「避難所設置計画に影響する」の一点張りで請願を退けた。本会議を傍聴した卒業生たちは「なぜ環境省と話し合うなど努力してくれないのか」と怒りを口にしたが、町も議会も卒業生たちの想いを汲む努力を怠ったまま。150年にわたる学校の歴史が閉じられようとしている。

【まるで町当局の答弁】

 「起立少数であります。よって、請願第2号については不採択とする事に決定しました」 

 佐々木恵寿議長議長を除く15人のうち、請願の採択に賛成して起立した議員はわずか4人(紺野榮重、紺野則夫、馬場績、山崎博文)。

 請願審査を附託された文教・厚生常任委員会では既に、委員5人のうち3人が採択に反対。「呼びかけ人および署名をいただいた方々の気持ちは理解するが、解体を延期する事による影響等を考慮し、また、既に町では閉校式の開催に向けて調整を進めている事から不採択とする」との結論を出していた。本会議での〝逆転〟は厳しい状況だった。

 本会議では、採決に先立ち渡邉泰彦委員長が審査の経過を説明。請願の紹介議員になった紺野則夫町議が「議会として主体的に結論を出すべきだった」などと質したが、渡邉委員長は吉田数博町長の答弁を踏襲する形で「解体後の跡地利用への悪影響」を繰り返すばかり。

 「跡地に防災コミュニティセンター等を建設する計画がある。議会は町の防災計画に反対せず推進してきた。町と一緒に取り組んできたものを反転出来ない」

 「仮に校舎解体を延期するよう環境省に要請したら、防災コミュニティセンターの建設が1~2年延ばしになる。町の費用負担で解体するよう環境省から求められる可能性もある。そもそもが環境省から校舎解体を要請されたわけでも何でも無い。町から環境省に校舎解体をお願いした」

 まるで町当局の答弁を聴いているようだった。挙げ句の果てに、渡邉委員長は「私も勉強不足のところもあるし、議員としての資質もあまり高い方では無い」と言い出す始末。傍聴席で議論を見守った卒業生たちも言葉を失った。150年の長い歴史を閉じるのにふさわしい閉校式が実施できるまで校舎解体を延期して欲しいという卒業生たちのささやかな願いはこうして、一蹴された。

(上)請願不採択の理由を述べた文教・厚生常任委員会の渡邉泰彦委員長。「私も勉強不足のところもあるし、議員としての資質もあまり高い方では無い」とも
(下)請願を提出した卒業生たちも本会議を傍聴。町の姿勢を踏襲する発言が町議から相次ぎ、卒業生たちは怒りや落胆を口にした=浪江町役場

【「防災計画が大幅に遅れる」】

 反対討論に立った石井悠子町議(文教・厚生常任委員)は「請願書を提出した皆様のお気持ちは十分理解した上で発言させていただきます」と前置きした上で、やはり町が計画している防災コミュニティセンター建設への悪影響を反対理由に挙げた。

 「避難指示が解除されて3年。台風19号による水害など、町に戻った人々が避難しなければならない災害が発生しています。帰還した町民から『安心安全な避難所を作って欲しい』と強い要望があり、議会と町が一体となって防災計画を推進してきた経過があります。校舎解体を延期する事は町の防災計画が大幅に遅れる事となり、避難所設置を望む声、その声に応えようとしている町、防災計画に理解を示している議会活動の整合性がとれなくなります」

 文教・厚生常任委員会の渡邉委員長が「校舎解体後の跡地に防災コミュニティセンター等を建設する計画がある。避難指示が解除されてから二度ほど避難を要する災害が起きており、町に暮らす人々から避難所建設が求められている」と述べたのと全く同じ趣旨。吉田町長の一般質問への答弁とも一致する。

 確かに町は大堀小、苅野小、幾世橋小、浪江中の跡地に集会所・避難所と消防屯所の機能を併せ持つ「防災コミュニティセンター」の建設を計画している(大堀小のみ高台に既に着工済み)。現在は「いこいの村なみえ」、「サンシャインなみえ」、「地域スポーツセンター」を災害時の避難所として活用しているが、福島県が新たに作成した洪水ハザードマップで浸水の危険性が指摘されており、避難所の建設を帰還住民から求められているのも事実だ。

 「2022年4月から使えるようにしたいと考えています」と町総務課防災安全係の担当者。一方で「この計画を校舎解体を延期出来ない理由に挙げられると…」と戸惑いも口にした。

 この担当者によると、来夏までに発注しないと2022年4月からの使用に間に合わない。しかし、逆に言えば建設計画を予定通り進めたとしても数カ月は時間的な余裕がある。「防災計画」を盾に卒業生の想いに全く寄り添わない吉田町長や町議会の姿勢が問われているのだ。

浪江小学校ではさっそく、取り壊すものと残すものの選別が始まっている。卒業生たちは「解体阻止」を望んでいるのでは無い。「150年の歴史を閉じるのにふさわしい閉校式を開くまで待って欲しい」と求めているだけだ

【「歩み寄る努力無かった」】

 馬場績町議は賛成討論で「32年間、議員を務めてきた。こういう発言をするのはこれが最後になるでしょう」と今期での〝町議引退〟(前回選挙は2017年4月)を口にしながら「環境省に町民の想いを伝える事で、何か支障がありますか。町民の願いに応える事で何か不都合がありますか」と語気を強めた。

 卒業生たちは何が何でも校舎解体を阻止しようと動いているのでは無い。「150年の歴史を閉じるのにふさわしい閉校式を開くまで少し待って欲しい」と求めているだけだ。馬場町議も「請願のどこに校舎解体を取り下げてくれと書いてあるのか」と指摘。「請願には町民の想いが宿っている」と述べた。

 しかし、町議会の意思は「NO」。吉田町長も町議会も主体的・積極的に卒業生たちの想いを汲み取ろうとしないまま、「避難所設置が急務」の一点張りで請願を不採択にした。賛同署名は4000筆に達するが、それらも「気持ちは理解出来る」の文言だけで一蹴された。

 呼びかけ人の一人で、本会議を傍聴した堀川文夫さん(1970年浪江中学校卒業)は「『妥協点を見出す』と言いながら、一生懸命さが全く無い。こちらも歩み寄れる余地はあるのに、町も議会も〝努力〟を全然していない」と残念そうに語った。

 例えば、吉田町長自ら環境省に出向いて卒業生たちの想いを伝える。解体延期実現に向けて交渉する。そういう動きがあれば、請願が不採択となっても受け止め方が全く違う。しかし、跡地利用計画を口にするばかりで動かない。11月26日に請願を提出した際、佐藤良樹副町長は卒業生たちに「閉校式を含め、今後については皆さんと協議して進めて行きたい」と語ったが、今のところ町側から何ら連絡は無いという。

 浪江小学校では、解体しないものに「のこす」と書かれたビニールテープが巻かれていた。だが、校舎は「のこす」対象にはなっていない。年明けにも解体工事が始まる見通しだ。


(了)

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