
多くのバラエティ番組で活躍するお笑い芸人、メイプル超合金の安藤なつさん。実は中学時代からブレイク直前まで20年以上、親戚の家の介護施設で働いた経験を持っています。「長く続けられたのは楽しかったから」介護の経験をそう振り返る安藤なつさんに、過酷とされる介護現場のリアルや課題について聞きました。
▼M1の前日も介護の夜勤をやっていた

―お久しぶりです。お会いするのは2、3年ぶりでしょうか?
今日はなつさんの介護経験についてお伺いしたいと思っています。よろしくお願いします。
安藤:よろしくね。
―ではさっそく。介護は何年ぐらいやられてたんですか?
安藤:中1からやっていました。その時はボランティア。高校からアルバイト、20歳のときに今で言う初任者研修、ヘルパー2級を取って、そこから23歳まで「在宅介護」っていって、夜勤をやっていました。一軒一軒お宅に回っておむつ交換とか安否確認をするのを3年ぐらい。一晩で15軒とか20軒とか家を回って安否確認やおむつの交換の仕事をしていました。
―きっかけは何だったんですか?
叔父です。叔父がそういう施設を作って、最初は遊びに行く感覚で行っていました。
―M1決勝の前日もやられてらっしゃったんですよね?
安藤:夜勤をしていました。
―びっくりじゃないですか。(決勝まで進んで)施設の方とか喜んでくださったんですか?介護されてた方とかは。
安藤:めちゃくちゃ喜んでくれ、嬉しかったですね。今もたまに施設に行きます。元気?って。今は時間がないけど、時間があればボランティアでも手伝いに行きたいと思っています。
▼長く続けられたのは「楽しかったから」

―私的には介護現場は「辛い」というイメージがあります。一晩で15件から20件ご自宅に訪問して、オムツ交換などをしていたというお話もありましたが、やっぱりしんどすぎません?
安藤:体力的には大変ですね。車を運転して、移動して、おむつを替えてと、休まらないです。夜勤も多いですし。
―なのにどうしてそこまで長く続けられたんですか?
安藤:自分は楽しくてやっていました。介護施設は、みんなで楽しく過ごすために居心地を良くしています。それで、楽しかったんだと思います。最初、ボランティアを始めた中学生の時は、障害者の方とか、脳性麻痺の車椅子の方とか自閉症の方とか、いろんな障害を持った方の施設だったんだけど、みんな楽しくて。今日はおやつ何々だ、ご飯も何々だ、イエーイ!みたいな。みんなで行く散歩やレクリエーション的なこともすごい楽しかったです。ボランティアに行っているというより、遊びに行く感覚でした。
―辛い時はなかったですか?
安藤:みんな介護大変っていうスタートから来ているからさ、ななちゃんも大変そうとか思うでしょ?
―大変だと思います。
安藤:でもその"大変そう"から入ってないから、逆にそっちの感覚が分からないなぁ。それにやっていて嬉しい時もあります。
―どんな時に嬉しいと感じましたか?
安藤:印象深いのは中学生の時です。認知症のおばあちゃんがいました。そのおばあちゃん、絶対着替えてくれないんです。でも、毎週粘って通っていたら、おばあちゃんがあるとき着替えてくれました。
-なつさんが行けば着替えてくれるようになったんですか?
安藤:そうなんです。認知症って、あんまり覚えてはくれないけど、心許してくれたんだと思います。着替えてくれたときの嬉しさったらないです。それは今でも思い出しますね。
▼「受け入れられることが嬉しい」という感覚は介護もお笑いも同じ

―確かにやりがいを感じるときもあるんだと思います。ただそう感じられる時は少ない気がするんです。今お話伺っても。めちゃくちゃ忍耐力があるってことですよね?
安藤:あるかもね。ないところはないけど。すぐご飯食っちゃうし(笑)。我慢しなきゃいけないのに。ずっと楽しかったら慣れてしまうと思うんですよね。嬉しさが少ない方が、楽しさがひっくり返りやすいと思うんです。ずっと楽しいと慣れてしまいますよね?お笑いもそうじゃなかった?お笑いと一緒でネタを作るときの大変さが多いほど嬉しいんです。
―確かにめっちゃ嬉しいです。100人とかがワーってなった時は最高に。今までの苦労がすべて報われた感じです。それと同じ感覚ですか?
安藤:割合で言ったらそうなのかもね。嬉しいです。「受け入れてくれたな」とか。絶対利用者さんも、ケアされる側としての緊張はあります。トイレに自分一人で行きたいけれど、お世話になんなきゃいけない、申し訳ないな、と。そう感じていらっしゃると思うのよ。でもそういう気持ちにはさせたくないです。
―楽しむコツはあるんですか?
安藤:多分だけど、明るく介護をやることだと思います。「全然いいっすよ」みたいな。 同じく介護を長くやっていたEXITのりんたろー。くんとかもそうだと思うんだけど、明るく、「気にしちゃってる?」みたいな感じで、楽しくやることだと思います。この人なら別に何しても恥ずかしくないなと思わせるのが一番いいです。
―「介護が辛い」というイメージについてですが、芸能人が悪いことしたら介護に行くみたいなの、ありますよね。介護施設1カ月ぐらいいけば贖罪みたいな。
安藤:それを話そうと思ってたのよ。なんで「罪を犯した」みたいな罰ゲームみたいに扱うのかなと。
―正直私が最初に言った通り、私もそういう目で見てしまっているんですけど、大変だっていうイメージが相当あるからだと思います。
安藤:大変なことをしてこいってことね。でもみんな介護やるけどさ、私みたいに好きでやってる人もいるわけじゃん。選んでやってる仕事を罰ゲームにされるってさ、まじで心外ですよね。「好きでやってるんですけど」みたいな。だから、私みたいに楽しんでやっている人もいるってことは知ってもらいたいです。