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「男性の育休」ならぬ「男性の産休」が登場

男性の育児休業の取得率は現在何パーセントだかご存じですか?

2019年度で7.48%です。2015年の時点で政府は、2020年度までに男性の育休取得率を13%に引き揚げるという目標を掲げていましたが、その目標には遠くおよびそうにありません。

しかし、私が父親になった2002年は0.33%、イクメンという言葉がメディアに登場し始めた2007年は1.56%、イクメンが流行語大賞になった2010年は1.38%でしたから、育児メディアの編集者としてそのころからこの数字をベンチマークしてきた私にとっては、7.48%という数字そのものには、それでもだいぶ増えたなあという印象があります。

いや、7%くらいで喜んでいちゃいけないし、その7%の中身だって、短期間、形だけ育児休業を取っただけのいわゆる「なんちゃって育休」も含まれてしまっている数字だとは思いますが、時間がかかっても、少しでも変化しているなら、そこに意識を向けることが変化を持続させるコツです。

「2020年度までに13%」という目標がおそらく未達となる見通しのなか、それでも政府は、2020年5月に「2025年に男性育休取得率30%」という新たな目標を掲げています。

そこで今月、厚生労働省は、働き手に育休の取得を個別に働きかけることを企業に義務づける法律を策定する方針を固めたと発表しました。さらに、男性向けの「産休制度」も新設するとのこと。育児のための休業期間である「育休」ではなく、お産のための休業制度である「産休」です。いままでは実際に分娩する女性にしかなかった制度です。子どもが産まれてから8週間に限り、4週間の取得が可能になります。2回までの分割も可能です。

2週間前までの申請で取得が可能ということで、取得手続きのハードルも低く設定する意図のようです。さらに、「あらかじめ予定されていた就労を可能にする」という規定もあります。これは、従来の育休を取得すると原則として一切の業務を行ってはいけないことになっており、それは非現実的だとして育休の取得をためらわせる要素になっていたことを考慮しての新制度だといえます。

もちろんそれによって、「業務は減らせないけど、産休取りたいなら勝手に取れば」という形で本人の意向に沿わない就労が発生する可能性を指摘する声もありますが、それはそれでやりながら制度整備をしていくしかないのではないかと思います。

ビジネス的なことであれば税制を変えるなどわかりやすいインセンティブ提示をすれば比較的短期間で構造を変革することが可能です。でも育児や教育という分野は、そもそも命の営みですし、長年で培われた文化的な文脈とも切り離せないものですから、惰性が強いんです。

この分野に関しては、新しい“お得な”制度をつくれば世の中が瞬間的に変わるというわけにはいきません。少しずつ世の中の雰囲気を変えて、それに合わせて制度も進化させていく根気が必要です。

少しずつ社会の雰囲気を変えていくには、社会として共通した目標を見据えつつ、それぞれのひとがそれぞれの持ち場でできることを誠実にやっていくしかないのだと私は思っています。その総和として、気づいたら世の中が変わっているという変化の仕方が、理想的だと思います。

自分の持ち場でできること以上のことをやろうとしたり、一気に変えようなどとしたりして欲張ると、結局無力感のほうが大きくなってしまうこともありますから、淡々と粛々と、の心構えが大事です。

今回の「男性の産休」新設など一連の取り組みを、私も私の持ち場で、影ながら後押ししていきたいと思います。

※2020年12月17日のFMラジオJFN系列「OH!HAPPY MORNING」でお話しした内容です。

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