11月28日深夜、東京・恵比寿の会員制高級ラウンジで女性従業員(20)が急死する事故が発生。彼女は亡くなる直前、“テキーラゲーム”に参加していた。この宴席に同席していたのが実業家の光本勇介氏(38)。同氏の会社を買収するなどビジネスパートナーだったことのある「DMM」亀山敬司会長が、渦中の人物となった光本氏との関わりについて、「週刊文春」の取材に語った。
社会部記者が解説する。
「女性従業員の死亡を警視庁渋谷署は事故として処理しましたが、SNS上では光本氏がテキーラのイッキ飲みを煽っていたという話が拡散され、“テキーラ事件”として大炎上しています」
光本勇介氏 (SNSより)
光本氏は2004年に青山学院大を卒業後、外資系広告代理店を経て、08年にIT企業「ブラケット」社を設立。
「事業を立ち上げては売却することで財を成し、総資産は100億円とも言われている」(IT関係者)
西麻布や六本木などでよく飲んでいたという光本氏に接客したことがある女性が明かす。
「彼はいつも『テキーラチャレンジ』といって、15分以内に一瓶飲み干せたら10万円払うゲームを女の子たちにさせていた。酔い潰れる姿を見て楽しんでいます。店もそのゲームについて良く思っていませんでしたが、光本さんは上客なので何も言えませんでした」
そんな光本氏は2017年6月、「キャッシュ」というサービスを立ち上げる。
「スマホで売りたい物の写真を撮影してアップすると、即時に現金化できるといういわば“ネット質屋”です」(前出・IT関係者)
この「キャッシュ」を運営する「株式会社バンク」の買収に動いたのが、動画配信サービスなどを手掛けるDMMである。同社関係者がこの“買収劇”の顛末について説明する。
「亀山敬司会長が決断し、バンク社の全株式を70億円で買収。完全子会社化しました。ところが買収後、キャッシュの事業内容は今後の拡大が難しく、法的なリスクも高いことがわかった。さらに光本氏が事業にやる気を見せなかった。業を煮やした亀山会長は約1年後、バンクの全株式を5億円という安値で光本氏に買い戻させ、MBO(経営陣による買収)をさせたのです。DMMが運転資金として貸し付けていた20億円は、光本氏がバンクを引き続き運営することを条件に5年間で返済させることになった。65億円も損をさせられた会長は怒り心頭でした」
亀山会長に光本氏とのビジネスの経緯について話を聞いた。
「(バンク社の買収は)ビジネスモデルという暖簾の買収で、彼の発言を信じての『男気買収』みたいなものだった。ただ、その後の結果は期待はずれだったので、全株を譲渡した。投資とは資金リスクを引き受けることなので、65億円の損害については別に怒っていない。ただ、バンク社に貸し付けていた20億円を返すという約束でMBOを了承したのに、1年後に『返せないから(バンク社を)潰す』と言ってきたことには驚いた。結果として5億円のみ返済され、15億円の債権放棄をさせられた。個人保証を取っていなかったとはいえ、信用に対するスタンスが違いすぎると思った。できなくて約束を守れないことと、できるのに約束を守らないことは全く違うと思う」
事業を立ち上げては売却することで財を成してきた光本氏のビジネス手法については、「ビジネスを立ち上げて売却すること自体は批判することではないと思う。ただ、誠実に行うこと。それが一番大切だと思う」と語った。
光本氏に女性従業員の急死に関して問うと、「私が強制的に飲ませたり、一気飲みを煽ったりしたことはありません。テキーラを飲むゲームの最中も女性ご自身でコップにお酒を注がれ、ご自身のペースで飲まれておりました」と回答した。
DMMとのビジネスについては、「MBOは双方の合意に基づき実施されたものです」と回答した。
亀山会長はこう最後に付け加えた。
「今回の事件を聞いて、私も悲しい気持ちになりました。お金は稼ぎ方と同じくらい、使い方も大事であると思います」
12月17日(木)発売の「週刊文春」では、光本氏の夜の豪遊ぶりや有名実業家たちとの交遊関係などについて詳報する。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年12月24日号)