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焦点:上院死守なるか、不正主張で揺れるジョージア共和支持者


Nathan Layne

[ジョージア州バルドスタ 11日 ロイター] - 「ドナルド・トランプ大統領は選挙を盗まれた」─。そう信じ込んでいるジョージア州ブレアズビルの若いカップルは、当初、1月5日投票の上院議員選挙(定数2)の決選投票をボイコットしようと決めていた。また不正が行われる選挙に投票して何の意味がある、というのがその理由だ。

だがその後2人は考え直した。連邦議会の上下両院の一方で共和党優位を維持できない懸念が強まってきたため、怒りはいったん脇に置くことにしたのだ。

ケイラ・フランクさん(25)は「誰もが投票に行こうとしている」と語る。

<トランプ演説に戸惑い>

12月11日夜、フランクさんと彼女のパートナーであるC・J・タウンゼンドさん(28)は、ジョージア州バルドスタで行われたトランプ派の集会に、他の支持者数千人とともに参加した。トランプ大統領は、どちらの党が連邦議会で優位に立つかを決定する同州の上院議員選挙で投票するよう共和党員に呼びかけるために来場したはずだった。

だが、トランプ氏は演説の大半を費やして、すでに根拠がないことが広く知れ渡っている「不正選挙」説を繰り返し、バイデン副大統領との勝敗を覆すことに協力しなかったとしてジョージア州の共和党幹部を非難した。

これは混乱を招くメッセージだ。不正選挙という主張によって相当数のトランプ支持者が選挙をボイコットすれば、接戦となっているジョージア州での連邦上院院議員選挙が民主党優位に傾いてしまう、と懸念する共和党関係者は多い。

すでに一部のトランプ支持者は、ソーシャルメディアの右派グループの仲間内で不正への抗議としての選挙ボイコットを呼びかけている。その提唱者のなかには、奇抜な不正選挙陰謀論を展開してきた著名なトランプ派弁護士2人、シドニー・パウエル、リン・ウッド両氏もいる。

だがロイターが先週、ジョージア州の農村・都市地域、郊外地域で共和党有権者50人にインタビューしたところ、フランクさん、タウンゼンドさんのような有権者は、投票をボイコットすべしとの主張に背を向けている。50人のほぼすべてが大統領選挙で不正が行われたと信じているものの、全員が上院選の決選投票を重視しており、投票に行く予定だと答えている(ただし、1人は民主党候補に投票するとしている)。

ジョージア州共和党は混乱に巻き込まれており、共和党員の州当局トップらは不正選挙に関する主張を却下したことでトランプ大統領からの攻撃を受け、忠実なトランプ信者たちの離反を招いている。だが、このインタビュー結果を見れば、共和党の上院議員候補は高い得票を期待できそうだ。

<決選投票、事前の予想は接戦>

ジョージア州における連邦上院議員選挙では、この20年間、民主党の候補が勝利した例はない。だが同州でバイデン氏が僅差ながら勝利したことで、民主党のラファエル・ワーノック、ジョン・オソフ両候補が決選投票で共和党の現職ケリー・ローフラー、デビッド・パーデュー候補を破るのではないかとの期待が膨らんでいる。決選投票は、11月3日の選挙でどの候補も過半数を得られなかったことによるものだ。世論調査ではどちらの議席についても接戦となっている。

トランプ派の集会に参加したタウンゼンドさんは、トランプ氏が敗れたのは不正選挙が理由だとの証拠は山ほどあると信じている、と語った。フランクさんは、大統領選挙で投票したことが初めてだっただけに、「奪われた」という辛い気持ちが一層強くなっていると言う。

2人とも、上院議員選挙の決選投票をボイコットすることも考えたが、結局は気が変わった。大統領選挙の結果を覆すためのトランプ氏の最後の努力が実を結ぶことを今も願っているが、たとえそれが失敗に終わったとしても、上院で共和党が過半数を握ることで民主党ジョー・バイデン政権にブレーキをかけられるようにしておきたい、との思いがある。

「気持ちが揺れ動いた」とタウンゼンドさんは言う。「でも、ボイコットが何かの役に立つとは思えない。皆が家に閉じこもれば、ただ投票が続くのを許すことになる」

<相反する主張を両立>

タウンゼンドさん、フランクさんのような有権者の態度は、ボイコットの呼びかけを抑えようと必死になっている共和党当局者にとっては多少なりとも救いになるはずだ。彼らは、「米国の選挙は民主党を有利にする詐欺だらけである」、「しかし、大切な上院議員選挙では共和党の投票が意味を持つ」という相容れない2つのメッセージを両立させようと苦労している。

ジョージア州カブ郡の共和党トップを務めるジェイソン・シェファード氏は、「選挙プロセスが腐敗しているから投票しない」という趣旨の共和党員からのメールを1日何通か受信しているという。アトランタの弁護士で元ジョージア州共和党トップのチャック・クレイ氏は、共和党有権者のあいだに染みこんでいる「(選挙への)不快感」が、投票率低下につながるのではないかと懸念していると話す。

だがインタビューに応じた有権者の何人かは、トランプ氏による不正選挙の告発は、有権者の投票意欲を挫くどころか、むしろ高めるだろうと話している。不正があると予想することで、有権者は、ロフラー、パーデュー両氏が勝つためには圧倒的な大差が必要だと考えるようになっているからだ。

トランプ支持派の集会の開催地から約20マイル(32キロ)北にあるフェローシップ・バプティスト教会のアイク・ジェファーソン牧師は、民主党が連邦議会を支配するという不安だけでも共和党支持者の投票率を上げるには十分だと考えている。

ジェファーソン牧師は日曜日の礼拝の後、「ジョージア州民は皆、家を出て投票に向かうと思う。そう祈っている」と語った。

ロイターがインタビューした50人の有権者のうち、トランプ氏による不正選挙の主張を完全に否定し、バイデン氏が正当に勝利したと認める人は少数だった。トランプ氏を支持する58歳のウィリアム・コネリーさんは、「盗まれた選挙」騒動は上院選の決選投票には無関係だと考えている。

元プロボクサーで工場労働者のコネリーさんは、ジョージア州南東部の田舎町ナフンタの食料品店の前に立ち、「トランプ氏は駄々をこねる赤ん坊だ。彼は負けた、それだけの話だ」と話す。「投票率は高くなると思う」

<「これが私たちの9.11だ」>

結果がどうなるかはさておき、ジョージア州は今回の決選投票によって、忠実なトランプ支持者と共和党本流とのあいだで激化する対立の焦点となってしまった。この対立は共和党の将来にとって深刻な意味を持つ可能性がある。トランプ氏は、ブライアン・ケンプ州知事とブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官をはじめとするジョージア州共和党を繰り返し批判してきた。大統領選挙の結果は厳正であるとして、それを覆そうとするトランプ氏への協力を拒否したためだ。

強烈なプレッシャーのもと、ラッフェンスパーガー州務長官とケンプ知事は選挙の公正さを擁護してきた。2回の再集計にも裏付けられたスタンスである。だが、自州の選挙システムを擁護しつつ、トランプ氏への支持の継続を宣言することは綱渡りに等しい。しかもトランプ氏は彼らのことを公然と非難し、あざけっているのだ。

ジョージア州共和党がトランプ氏を拒絶できないのは、同氏があいかわらず大勢の有権者にアピールし、独特の無作法なポピュリズムに党を引っ張っていくだけの影響力を持っているからだ。

トランプ氏がツイッターでの投稿で、ジェフ・ダンカン州副知事(共和党)について「ジョージアにおける不正選挙の膨大な証拠を認識できないのは、彼があまりにも愚かか腐敗しているためだ」として辞任を要求したのに対して、同副知事が大統領に媚びへつらうツイートを投稿したのは、その顕著な例である。

ダンカン副知事は、「4年間、保守派を率いてくれたことに感謝している。(略)あなたは、ビジネス・マインドを持つアウトサイダーが中央政界でも有能であることを証明した」とツイートした。

ジョージア州ブラントリー郡で共和党のトップを務めるロナルド・ハム氏は、トランプ氏による不正選挙の主張を拒絶する共和党員は(公職での)再選が厳しくなるだろうと話す。ケンプ州知事は2022年の州知事選で再選をめざすが、ハム氏はケンプ氏を友人として認めつつも、彼には投票しないつもりだと話す。ハム氏は、「米国の選挙システムに対する民主党の攻撃」は、2001年9月11日の同時多発テロにも匹敵するという。

「これが私たちの9.11だ」と彼は言う。「私たちは声を挙げ、投票する」

ハム氏は、「(州知事・副知事、州務長官は)荷物をまとめておいた方がいい」と言う。

<「選挙の不正」なお追及求める声も>

上院選を戦うロフラー、パーデュー両候補は州共和党を混乱に陥れている対立のなかで慎重な舵取りを続けている。両候補とも、トランプ氏が選挙を「盗まれた」とは明言していないが、勝敗を覆そうとするトランプ氏の試みを一応は支持しており、ラッフェンスパーガー州務長官の辞任を求めている。

だが、チャシティ・ポーブリックさんにとっては、州務長官の辞任要求だけでは物足りない。トランプ支持者である45歳のポーブリックさんは、パーデュー候補には投票するつもりだが、ロフラー候補には投票しないかもしれないと話す。ロフラー候補はケンプ知事に指名された人物であり、それゆえポーブリックさんの支持を勝ち取るには、もっと思い切った行動が必要だ。

ポーブリックさんがロフラー候補に特に望んでいるのは、ケンプ知事を動かして、デジタル投票システムに関する独立性のある調査を行わせることだ。このシステムを巡っては、票が改ざんされたという陰謀論が出ていた。

「ロフラー候補が私の票を欲しければ、州知事に働きかけることだ」とポーブリックさんは言う。「あのシステムをチェックする必要がある」

ロイターがインタビューした共和党有権者の1人は、上院選では民主党候補を支持することに決めたと話している。理由の1つは、ロフラー、パーデュー候補があまりにもトランプにすり寄っているからだ。

アトランタ郊外のアルファレッタに住む42歳のコーリー・ルドルフさんは、共和党における伝統的な原理原則がトランプ政権下で失われてしまったと嘆く。もっと中道寄りの政党が登場すればいいと考えているが、期待は薄い。

「トランプ氏がこれまでのように、右派を中心としたメディアを支配し続けるのであれば、かつてのような共和主義が戻ってくるとは考えにくい」とルドルフさんは言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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