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国連人権理事会による日本の第二回普遍的定期的審査がおこなわれました(2)

死刑の是非とその根拠についてはもうすでに過去記事こちらで出尽くしてる感がありますので、ここでは死刑廃止に向けて努力するよう勧告を受けた日本の態度について記しておきます

まず、前回2008年の審査時の死刑廃止の勧告に対する呆れるような日本の答弁を見てみましょう。
故・日隅一雄弁護士のブログからです。
情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

人権理事会日本審査を傍聴して~海渡雄一弁護士からの現地レポートその2
(引用開始)
 やはり、なんと言っても今回のハイライトは死刑の執行停止を求める声が圧倒的に噴出したことです。日本国内で、死刑判決と死刑執行が増加していることに多くの国々が強い懸念を表明し、執行停止を求めました。
ベルギー、イギリス、ルクセンブルグ、ポルトガル、フランス、アルバニア、メキシコ、オランダ、ブラジル、イラン(死刑確定者の処遇問題)、トルコ、スイス、イタリア(合計13カ国)
 特に見応えのあるのはイギリス、ルクセンブルグ、ポルトガル、フランスあたりでしょうか。

これに対する日本政府の答えですが、審査の最終コメントの部分で、法務省から死刑の執行を停止することは、あとで再開したときに残虐であるから執行停止をしないと答えました。死刑の執行をその日の朝まで教えないで、毎日を明日が処刑の日かも知れないという筆舌に尽くせない恐怖のもとに過ごすことは残虐ではないのでしょうか。国際社会から死刑の廃止の方向へのステップとして死刑執行停止が求められていることを無視し、国際社会からの要請に真っ向から抗おうとする日本の姿に大きな失望を感じました。
(引用ここまで・強調は私)



死刑再開するのが残虐だから死刑を停止しない?なんだか人を小馬鹿にした答弁です。
再開を当然の前提としていることも何が何でも死刑制度は固持するという決意の表れ、死刑廃止について議論の余地はない、という強固な意思表示をこの審査において示しました。
この意思表示を実行に移すが如く政府は法務省内に設置された死刑制度の勉強会も廃止、「死刑廃止についての国民的議論」も打ち切り、黙々と死刑判決を出しては執行しています。
前回の審査があった2008年からから現在に至るまで、この4年間の死刑執行人数は次の通りです。

2008年 15人
2009年 7人
2010年 2人
2011年 0人
2012年 7人 (計31人)

法相別の執行人数も記録しておきましょう(鳩山元法相は2007年から法相でしたので年別の統計とは合計の数字が異なります)

<自公政権>
鳩山邦夫 13人 (「ベルトコンベア」発言とその実行。)
保岡興治 3人
森英介 9人 (冤罪が強く疑われる飯塚事件の死刑囚久間三千年さんの死刑を執行)

<民主党政権>
千葉景子 2人 (死刑廃止議連に所属していたにも関わらず「死刑について国民的議論の契機にしたい」というグロテスクで理解しがたい理由から死刑を執行。)
柳田稔 0人
仙谷由人 0人
江田五月 0人
平岡秀夫 0人 
 (19年ぶりに1年以上死刑執行が行われなかったので国際人権連盟が賞賛の書簡を野田総理に送ったにも関わらず、その直後、野田総理は当時の平岡法相を外して死刑維持の立場をとる小川敏夫氏を任命し、死刑執行を復活。)
小川敏夫 3人 (省内に設置された死刑制度の勉強会を廃止)
滝実 4人
田中慶秋 0人
滝実 0人

「馬の耳に念仏」「日本政府の耳に死刑廃止」という言葉がぴったりです。

今月9日には国連総会第3委員会(人権)が、日本など死刑制度がある国に執行の一時停止や死刑に関する情報公開を求める決議案をチリや欧州諸国など76カ国が共同提出しました。
http://www.47news.jp/CN/201211/CN2012111001001249.html#

76カ国って結構な数です。でも今の調子ですと一時停止の要求などガン無視しそうですね。もうすぐ衆議院解散、選挙になりますが、今回だってこれまでだって、死刑制度が争点になったことなどないのです。国際的に非難を浴び続けている事柄に政治家も国民も興味がないとは、一体どこが「グロバール」なんだと不思議です。

日本のこの頑なに死刑維持には、国連や国際的な人権団体からばかりでなく、EUからも強い非難を浴びています。
次の中日新聞紙面をお読みください。

(2012/11/05 中日新聞朝刊より)

日本の死刑EUが問う
「廃止を」加盟国など共同声明
法務省「勉強会」打ち切り――「議論無しはおかしい」


 日本の死刑制度に対し、欧州連合(EU)が廃止を迫る動きを強めている。加盟各国は共同声明を発表したり、死刑をめぐるシンポジウムを相次いで開催。主要国(G8)で死刑があるのは日本と米国だけ。特に死刑存廃の議論が止まったままの日本に欧州の視線は厳しい。 (三浦耕喜)

「我が国は死刑を廃止した。死刑になる可能性があれば、その国に犯罪容疑者を引き渡すことを認めていない。」十月中旬、東京都内で開かれたシンポジウム。来日したドイツ連邦司法省のトーマス・ディトマン刑事局長は、日本との司法協力との壁になる可能性も示唆して死刑廃止を呼びかけた。
今年に入って、EUは日本の死刑廃止に向け、攻勢を強めている。十月十日の死刑廃止デーにあわせ非加盟国を含めた欧州三十カ国・機関の駐日大使が連名で声明を発表。「死刑は人間の尊厳を侵害する。死刑を停止する国が増える中、日本が加わることを心より願う」と呼び掛けた。
EUは今年四月に中日代表部の主催で、死刑廃止を求めるシンポを開催。加盟国ではドイツ、イタリアが、非加盟国だがノルウェーも日本でシンポを開いた。国連の人権理事会でも、十月三十一日の対日作業部会で欧州など各国が日本に死刑廃止を求めた。

(中略)

日本では死刑制度維持の論拠として「被害者の心情」が挙げられているが、同会長(※ドイツの犯罪被害者団体「失った子と兄弟姉妹の死を悼む会」のペトラ・ホーン会長)は、「死刑は報復感情を一時的に満たしても、問題解決にはならず、痛みを除いてはくれないことを家族はやがて知る」と訴えた。

だが、日本では死刑制度をめぐる議論は低調だ。2009年9月の政権交代後、しばらく死刑執行は止まっていたが、千葉景子法相時の10年7月に二人の死刑を執行。翌月、同法相は、法務省内に「死刑の在り方についての勉強会」を置き、国民的な議論を呼び掛けた。
ところが、今年三月、当時の小川敏夫法相は賛否両論を併記した報告書を出して勉強会を打ち切りに。その後まもなく一年八ヶ月ぶりに死刑を執行した。裁判員裁判で一般市民が死刑判決に直接関わるようになる一方で、政府は国民的議論を封じたままだ。
ドイツ大使館関係者は「人の命という重要な課題であるのに、議論がないのはおかしい。賛否があることは理解しているが、重要なのは議論だ」と話している。


感情や報復では刑罰は決められない

ベラルーシを除く欧州各国はすべて、死刑を人間の尊厳に反すると考えている。死刑は不可逆的な刑罰であり、誤判があった場合、失われた命を償うことはできない。
死刑を支持する被害者や遺族の気持ちも分かるが、刑罰を感情や報復で決めてはならない。近代社会では、刑を科すことは国家にのみ認められた権限で、被害者には委ねられない。たとえ殺人犯でも国家に人の命を奪う正当な権限は与えられていないと思う。
刑の重さに暴力犯罪を抑止する効果はないと分かっている。殺人の多くは利害を冷静に考量して行われるものではない。ドイツが死刑を廃止して犯罪が増えたというデータもない。
(by ロイトホイサーシュナレンベルガー・独法相)



ドイツの犯罪被害者団体会長、ドイツ大使館関係者、ドイツ法相の言葉には耳を傾けるものがあります。

死刑の存在が犯罪者引き渡しの司法協力の障害になるとの指摘について、興味深いニュースをマイミクさんから教えていただきましたのでそれをこちらに引用させていただきます。

http://dawn.com/2012/11/03/govt-plans-to-bring-bill-against-death-penalty/

パキスタンは昨年、英国との間で犯罪人引き渡しの条約を締結する寸前までいったのに死刑制度があるために成立しませんでした。(パキスタンはウィキペディアによれば現在でも「石打の刑」が行われている国のようです)
それがきっかけとなって政府が死刑を無期懲役に切り替える法案を次期国会にも提出する方針です。首相は既に法相などからなる委員会を設置しているそうです。
死刑廃止の動機は人道的理由ではないのですが、「国際社会の一員として他国と平等に付き合うためには死刑廃止が求められている」ということをパキスタンは認識していると思います。果たして日本はそれを認識していると言えるでしょうか?

日本は死刑制度を検討しようと議論を重ね努力しているが諸事情からなかなか廃止が進まない、というのではありません、耳をふさぎ背を向けて、まるで国際的な非難など存在しないかのように振る舞っています。

「人の命という重要な課題であるのに、議論がないのはおかしい。賛否があることは理解しているが、重要なのは議論だ」

存置するにしろ廃止するにしろ、何故これほどまでに日本が非難されているのか、その理由をかんがえてみようとすらしない、議論すらもしようとしない。
これが人間の尊厳に価値を置く世界人権宣言を批准した先進国と呼ばれる国のとる態度でしょうか。

国連人権理事会の審査や国際人権団体、EUの非難が大きいことを国民の大多数は知らないでしょう。
よらしむべからずしらしむべからずでうやむやにし、
人々は自分の生活にほとんど関係ない死刑の是非など、すぐに自分の日常生活に埋没して忘れてくれる
このお家芸は何も死刑問題に限ったことではないですね。
日本のそう言うやり方は国内では通用しても、国際的には通用しないでしょう。

村野瀬玲奈さんが何度も指摘されているとおり、日本ではいまだに「人権」ということが正しく理解されず歪曲されている状態です。
このエントリ-ではたくさんある勧告から特に注目を浴びている死刑を取り上げましたが、他の勧告についてもほとんどぬかに釘状態ですから、日本は深刻な人権侵害が起きても関心を持たない国だと評されても仕方がないのではないでしょうか。
いつまででもこういう態度では国際社会で真に尊敬を受ける「名誉ある地位(憲法前文)」など、決して手に入ることはないと思います。

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