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「ニンドスハッカッカ マー ヒジリキホッキョッキョ」小松政夫さんの遺したギャグと語源の謎

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共同通信社

小松の親分さんが天に昇った。小松政夫――、50代半ばである自分には、70年代バラエティでの「伊東・小松」、伊東四朗とのコンビに尽きる。

このコンビの絶頂期は「笑って!笑って!!60分」(TBS 1975年春スタート)、「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(NET/テレビ朝日 1976年秋スタート)となる。それらの番組は当時10歳の自分にとって日常そのものであり、小松政夫という人は常におかしなフレーズを発し続ける、とりわけおかしな芸人だった。

“小松の親分さん”の人気フレーズ「ヒジリキホッキョッキョ」

「笑って!笑って!!」は土曜12時30分からの1時間番組だった。土曜は学校がお昼に終わる。家に帰ってテレビをつけると、そこに毎回登場していたのが「小松の親分さん」というキャラだ。

基本設定は毎回同じ。町の空き地で子ども達(ハンダース、エバ、他)がいて何かモメている。そこにヤクザの親分(小松)と子分(伊東)が現れて説教をする。しかし、子どもが発するささいな一言で親分は落ち込み、いじけて座り込む。そんな親分を立ち直らせる決めフレーズを伊東が発する、「ズンズンズンズン、小松の親分さん、小松の大親分!」。

親分は涙をぬぐって気を取り直し(この、涙をぬぐう小芝居のおかしさたるや・・・)、伊東は親分をさらに気を良くさせるため大太鼓を叩き、小松が歌う。テンションが上がった小松が太鼓に乗って応援団長のようになる。そこで発せられるのが、

「ニンドスハッカッカ マー ヒジリキホッキョッキョ (※飛ーベ飛べ飛べガッチャマン) ガーッチャマンに負けるな負けるなガッチャマン ソレー(応援盛りあげ)」

「※」のフレーズはあったり無かったりだった。当時10歳だった自分はこのフレーズをどう受け止めていたか? 思い返せば、「大人がガッチャマンって言ってるぞ、よくわからないけど変でおかしいや」という、子どもなりの親近感が入口で、「だけどなぜ、ガッチャマンに負けるなと敵を応援してるのに、そのあと、負けるなガッチャマンと、どっちも応援しているのだ?」という不可解さに一瞬迷いこみ、ま、どうでもいいかとやり過ごす、そんな印象だった。

ガッチャマンの前節となる「ニンドスハッカッカ マー ヒジリキホッキョッキョ」に関しては、まったく意味を感じなかった。無意味であることをとても自然に受け止めていた。

江戸時代から?無意味な言葉の流行史

BLOGOS編集部

無意味な言葉は当時の子どもの身の周りにあふれていたように思う。例えばマンガ放送(アニメという呼び方はまだ無かった)からは「魔法使いサリー」(1966年~)の主題歌は「♪マハリーク マハーリタ ヤンバラヤンヤンヤン」。「ひみつのアッコちゃん」(1969年~)では「テクマクマヤコン テクマクマヤコン」「ラミパスラミパス ルルルルル~」・・・(後年知るがアッコちゃんのフレーズはウラに意味設定があったという)。まとめるなら呪文系ナンセンスフレーズか。

テレビCMにも流行となる無意味な言葉が登場している。パイロット万年筆のCMで大橋巨泉が発した「みじかびの きゃぷりてぃとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」(1969年)。これは70年代になるとタモリのハナモゲラ語へと繋がる。

無意味な言葉は60年代~70年代、「ナンセンス」という意識の隆盛を背景に捉えることもできるが、俯瞰すれば、どの時代であってもそれはある。

遡れば――、江戸時代なら(これしか知らないが)落語「らくだ」には「♪かんかんのう きゅうれんす」という流行り踊りのフレーズが登場する。

明治時代になると、歌舞伎に対となる新派劇(現代劇)の創始者と言われる川上音二郎が流行らせた「オッペケペー節」(1880年代~)がある。「オッペケペー オッペケペー オッペケペッポー ペッポッポー」、この語感に明治人たちはテンション爆上がりになったのだ。これは今でいうなら音ネタのブリッジにあたる。

大正時代になると「東京節」(1919年~)か。「♪東京の中枢は丸の内~」で始まる歌のサビが「♪ラメチャンタラ ギッチョンチョンでパイノパイノパイ パリコトパナナでフライフライフライ」。これは外来語を取り込みつつの、意味アリと意味ナシの混在によるハイブリッドな不明語かな。

日本が辿ってきた「無意味な言葉史」は、底の浅さが露呈する前に切り上げるが、いずれにしてもこのワケのわからない無意味な言葉というのは、時代時代に現れては、不可解ゆえの謎めいた魅力、つい言いたくなる魔性、繰り返したくなる中毒性、などなどあって、人心を揺さぶっては消えていく、なんだか「妙」で「変」なコトダマ(言霊)のカタマリなのだろう。

でもって、「ニンドスハッカッカ」に戻ります。小松の親分さんが発した「ニンドスハッカッカ マー ヒジリキホッキョッキョ」を耳にしたことのある誰もが、100人が100人、それは意味のない言葉であると捉えていると思う。もちろん自分自身もその一人だ・・・った。2014年までは。

「ヒジリキ」は雅楽器の篳篥(ヒチリキ)だった説

写真AC

2014年春、縁あって法螺貝の先生と知りあった。そこで日本古来の様々な楽器を再認識したことが頭の中で何か繋がったのかもしれない。ふと「小松政夫のヒジリキホッキョッキョって、篳篥(ヒチリキ)のことじゃないか?」、そう思ったのだ。

篳篥は雅楽で用いられる小ぶりな笛だ。今であれば雅楽演奏家の東儀秀樹が時々吹奏していたりする。ちなみに2018年のR-1ぐらんぷり決勝で登場した、平安女官キャラのカニササレアヤコが吹いていた小竹の筒を束ねて山型にしたようなのも雅楽器だが「笙(しょう)」である。ちょと違う。

ふと考えた「ヒジリキホッキョッキョ」のヒジリキは篳篥(ヒチリキ)かもという推察。すぐさま「ホッキョッキョ」という語感が笛の音に近いことが、この推察を強めた。

小松政夫は九州福岡の出身だ。であれば、これは九州界隈の方言か何かで「ヒチリキ」が「ヒジリキ」と訛り、音のオノマトペ=擬音語として「ホッキョッキョ」が当て嵌められた・・・のではないかと。

ガッチャマンという固有名詞に引っ張られ、ずっとスルーしてきたフレーズに実は意味が潜んでいた、のだとしたら、これはお笑い史における中々の発見かもしれない、という小さな興奮を抱いた。

すぐさまネットで「ヒジリキホッキョッキョ」を縦横に検索する。しかし出てくるのは小松フレーズのごく一般的な紹介と「意味はない」「無意味」という見解のみ。それが「篳篥」と示唆する類の言及は皆無だった。

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