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「人間、最後は1人で死んでいく」。家族が看取ってくれるのは幸運なこと - 「賢人論。」127回(後編)加藤丈夫氏

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大手重電メーカー富士電機株式会社の会長を歴任し、現在は独立行政法人・国立公文書館館長を在任する加藤丈夫氏。御尊父は漫画家・手塚治虫氏に“東京の父”と慕われ、赤塚不二夫、藤子不二雄(藤子・F・不二雄/藤子不二雄A)、石ノ森章太郎らトキワ荘の漫画家たちを育てた名物編集者・加藤謙一氏。同じくユニークな人生観と先見の明がある加藤氏に「人生100年時代」をどう捉えるのか。話を伺った。

取材・文/盛田栄一 撮影/荻山 拓也

「70歳雇用・70歳年金開始」の先にあるのは「生涯現役」

みんなの介護 超高齢化社会を迎えたわが国では「人生100年時代」が謳われています。私たちはどのように生きていくべきと考えますか。

加藤 今日お話しした中(前編)で、「70歳雇用・70歳年金開始」について言及しましたが、あの数字はあくまでも当面の目標です。最終的に「生涯現役」を貫くことができれば、こんなにすばらしいことはありません。元気な人は、80歳、90歳になっても、現役として仕事を続ければいい。

とはいえ、死ぬ直前まで働き続けると考えるのは、あまり現実的ではありませんね。どんなに元気な人でも、いつかは仕事を辞めてリタイアする時期が来る。そのとき、仕事以外に何か一つ打ち込めるものがあれば、その人の人生はより豊かになると思います。その場合、何か人の役に立つことのほうが喜びは大きいでしょう。

リタイア後に急に思い立って何かを始めても、なかなかうまくいかない。理想を言えば、遅くとも50歳くらいまでに自分の「ライフワーク」と呼べるものを見つけて、仕事と併行しながら少しずつ取り組んでおいたほうがいい。すでにご高齢になった人には酷な言い方かもしれませんが。

「人生100年時代」というフレーズは、老後をどう生きるかというよりも、長い人生をトータルでどう考え、どう計画するのか。私たち一人ひとりに問い掛ける言葉なのではないでしょうか。

みんなの介護 加藤さんご自身は、人生100年時代をどのように考えているのですか。

加藤 個人的な話になりますが、私たち夫婦は結婚して今年で55年になります。家内は結婚当初から私の仕事ぶりを見て、「この人をアテにしてはいけない」と、かなり早い時点で見切りをつけたみたいです。そのため、家内は若い頃から何でも1人で行動するようになりました。彼女は海外旅行が趣味なのですが、いつでも1人で出かけていきますね。コロナ禍の今はどこにも行けませんが、昨年くらいまで年5・6回海外旅行を楽しんでいました。

私たち夫婦は、若い頃から映画でも音楽会でも、それぞれ別々に出かけていくのが当たり前でした。最終的に自分の家に帰ってくればいいんだから、それまでは別行動を取るほうがおもしろい。それが加藤家の流儀。私たちにとっては、つかず離れずの関係のほうが心地良い。きっとこれから死ぬまでこの関係を続けるのではないでしょうか。

人間、最後は1人。孤独死なんて恐れることはない

みんなの介護 少し伺いにくい質問なのですが、加藤さんはご自身の死について考えたことはありますか。

加藤 あります。なんだかんだいっても、「人間、最後は1人で死んでいくのだ」と考えています。もし、家族に看取ってもらえるとすれば、それはむしろ幸運だと感謝すべきでしょう。

私が尊敬している慶友病院の大塚会長が常々語っている哲学が、「人間、最後は1人」。「孤独死なんて恐れることはない」と。その考えに私も共鳴して、「他人を頼らず、何事も自分自身で決める」と考えるようになりました。それもあって、私は延命治療をせず、最後まで人間としての自立と尊厳を大切にしてくれる病院が良いと思い、最後はそちらにお願いしようと思っています。

みんなの介護 加藤さんの奥様も同じ考えなのでしょうか。

加藤 そのようです。私がお願いしたい病院は東京に2ヵ所あるのですが、私がその一方に入る予定であることを伝えると、家内は「もう一方に入りたい」と言う。最後の最後は、どうせ周囲の状況などわからなくなっているだから、夫婦であえて同じところに入る必要はない、というわけです。これも加藤家の流儀ですね。まあ、これは半分冗談みたいな話なんですが。

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