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東日本が全滅していたかもしれない前首相の告白を重く受け取るべき

「東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと」菅直人著という本が出たが、私はこの本を読んで、自分の危機意識のなさに恥ずかしくなった。

首相は311後、東電福島原発事故の最悪の事態として、首都圏を含む5000万人の避難も視野に入れていたという。

なんと自分は愚かだったんだろう。震災直後のことを思い出してほしい。金曜日に震災があった翌週、原発事故により電車本数が激減する中、しかも大規模な余震が何度も頻発している中、首相は原発事故が悪化すれば、東日本全域に避難命令を出さなければならないと考えるほど、原発が深刻な事態にあった中、私も含めて我々は、少ない電車本数に列をなし、普通に会社に行こうと必死になっていた。

なんと愚かなことか!「政府の発表は信じられない」といいながら、心のどこかで「まさか日本のような高度な技術を持つ国が、チェルノブイリ事故ほどはひどくはならないだろう」と甘く考え、西日本に避難することを考えるべき時期に、のん気に会社に行っていたとは。この本は日本人なら必ず読むべき本だと思う。私は菅氏を政治家として支持したいとは思わないし、(なぜなら菅氏に首相がすげかわった途端、マニフェストにない消費税増税を言い出したから)ここに書いてある菅氏の告白がすべて事実かどうかはわからないし、菅氏が自分を正当化するために書いた「言い訳」部分も多いとは思う。

しかしこの本を読むと、そんな小市民的菅首相の「言い訳」なんかより、もっと深刻な闇が日本に巣食っていることがよくわかる。菅氏はこの本で、東日本全滅が免れたのは、事故対応がよかったからではなく、たまたま幸運が重なっただけのことだと断言する。つまり紙一重のところで、東日本避難命令がなされていたかもしれないのだ。「死の町」になるのは福島原発20km圏内だけでは済まされない。東日本が全滅するということは、西日本が無事だったとしても、もはや国家として成り立たなくなる可能性も秘めていた。ご存知の通り、菅氏が失脚したのは、脱原発路線に踏み切ったからだ。これにより、官僚、経団連、マスコミ、電力会社によって、叩き潰された。

菅氏はこの本で「もともと自分は脱原発派ではなく、原発利用肯定派だった」と認めている。しかし福島原発事故で、多くの原発が密集する恐ろしさを目の当たりにし、しかもこの国は原発事故に何も対応できる体制がないことを知り、東電も官僚もまったく役立たずであったことを知り、紙一重で東日本が全滅するかもしれないリスクを背負ってまで、原発を動かすのはクレイジーだとの結論に達した。だから彼は降ろされたのだ。菅氏の言い分が「正しい」かどうかは別にして、

・東電が撤退したいと申し出たが、撤退なんかしたらすべての原発が制御不能になり、東日本全滅してしまうから撤退はあり得ないと激怒したこと。
・東電や保安院がまったく原発の状況を把握しておらず、情報も官邸にろくに上がってこず、テレビで情報を知るというあまりに情けなさに、とにかく現地に行かなくてはと、福島原発視察を強行し、そこで吉田所長に出会えたから、役立たずの東電や保安院の不正確であまりにも遅い、情報をあてにしなくてよくなったこと。
・東電がまったく信じられないから乗り込んだこと。

は実は高く評価されるべき対応だったのではないか。もしこれが自民党政権で、東電株を大量に保有し、娘がコネで東電に入社したといわれる、自民党の石破茂氏が首相だったり、大臣だったりしたら、どうなっていたかと思うとぞっとする。東電の撤退を認め、東日本全滅もあり得たのではないかとすら思える。菅氏は東日本全滅の危機を目の当たりにし、原発肯定派から脱原発にシフトした。

しかし財界も官僚も東日本が全滅しようが、何が何でも原発利権を手放したくないという、とんでもない実態もこの本で告白されている。菅氏によると、浜岡原発停止は、経済産業省が「危険な浜岡を止める代わりに、他の原発は安全だから再稼動させます」というシナリオだったらしい。

これに菅氏が気づいて、そんなふざけたマネはさせまいと、浜岡原発停止の会見を自ら行ったという。そこから原発カルト教団の菅降ろしの総攻撃が始まった。「菅氏が海水注入をストップしたために、メルトダウンが起こった」という事実と違う情報を、原発大好き読売新聞や産経新聞が報道した。

菅氏の対応が原発事故につながったとの報道が、ことあるごとに流された。官僚や財界が気に食わない政治家を降ろす作戦の第一は、電力会社の広告収入でシャブ漬けにされている、マスコミを使うことが最も手っ取り早い。さらに菅氏は「私に説明もなしに、経済産業省が玄海原発を再稼働させようとしていた」とも告白。この玄海原発再稼働問題では、311で深刻な原発事故が起きているにもかかわらず、「やらせメール」で原発再稼動を支持させようという、売国奴にもほどがある、官僚、財界のおぞましさが露呈した。

しかし311で明らかになったが、この国を牛耳っているのは、日本を破滅させても自分たちが儲ければそれでいいと考える、官僚や財界であることだった。

だから菅氏は見事に降ろされた。そして官僚と財界の意をくんだ野田首相は、大飯原発を再稼動させ、消費税増税を強行した。見事としかいいようがない。東日本が全滅するかもしれないと、肌で感じた菅首相は著書で、「原発が再稼動しないと日本経済にマイナスだ」と言う財界人は、もし福島原発事故で首都圏から3000万人が避難を余儀なくされていたら、どれだけ日本経済がダメージを受けたか検証したのか。と書いている。まさにその通りだと思う。そして菅氏によれば東日本全滅が免れたのは、たまたまだったという。

・・・・私は菅氏を政治家として支持したいとは思わないし、この本で書かれていたことすべてが正しいとは思ってもいない。菅氏が自分の行動を正当化するために、都合よく解釈している面はあるだろう。でもこれだけははっきりしている。

・もともと原発肯定派だった菅氏が脱原発にシフトした途端、官僚と財界とマスコミによって、東日本大震災で大変な最中に降ろされたこと。
・原発事故によって東日本が全滅していたかもしれないということ。
・菅氏の対応うんぬんの前に、電力会社と官僚が原発に関してまったくの役立たずで、国民のことをまるで考えないクズだったこと。

この事実は重く受け止めるべきことだ。そして今、官僚と財界によって、国民の生命をないがしろにして、むちゃくちゃなことが行われ続けている。未だに放射能の拡散予測すら、風向きを180度間違えて発表しちゃいましたとか、とんでもないことをしているのだ。

官僚と財界によって降ろされた、腐っても前首相が日本の危機に直面して感じた、原発事故の恐ろしさを、あらためて国民一人一人が再認識し、私も含めていかに自分たちが、原発に対して危機感がなかったのかを反省し、今後どういう社会をつくっていくべきか、本書は一度読んでおくといいと思う。

菅氏が素晴らしい政治家だとは思わない。しかし菅氏がどうのという前に、糾弾すべき腐った輩=官僚と財界が、今も日本の権力を握っている。その事実を認識しないことには、この先、すべてのツケは国民に負わされる、とんでもない政治が行われてしまうだろう。

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