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勝負の3週間の後も抑制管理は続く

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 ニコニコ動画『国際政治チャンネル』の出演で土曜の夜に外出した。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv329258319 帰宅の途についたのは23時台だった。「第三波」の渦中で夜遅くに都心を地下鉄で移動するのは初めてだったが、かなりの数の明らかに飲食店帰りの人々が電車に乗っている印象を受けた。

例年の師走よりは減っているのだろうが、諸外国の人々が見たら衝撃を受けるだろう。12月12日土曜の東京の新規陽性者数は621人(7日移動平均481人)だったが、どうやってこれだけの数の人々が繁華街に出かけていて、なおそのような低水準の陽性者数に抑え込めているのか、と驚くのではないかと思う。

おそらく感染拡大傾向にあっても、師走の社交行事を完全にはキャンセルできないのではないか。人々がそれなりの年の瀬を迎えている中で、客観的に見て新規陽性者を減らすのは難しい時期になっていると感じざるを得ない。

 ただ全員がマスクをして、ほとんどの人が押し黙って電車に乗っている。それなりに最大限の感染防止は心がけているだろう。どこで社会経済生活の維持と感染予防策の折り合いをつけるかは、政策論の問題でもあるが、結局のところ、社会意識の反映でもある。

11月になってから、私はまたエクセル表に新規陽性者数を打ち込んで、平均値や増加比の計算式にのせる作業を行い始めた。すでに書いてきたように、11月中旬をピークにして、新規陽性者の増加は鈍化し始め、11月末から12月初旬は横ばいと言っていい状態に入っていと観察していた。

 ただし、ここ数日の新規陽性者を見ると、再び増加に転じている傾向が見られる印象を受ける。連休の影響で鈍化が増加に反転するような場合、すぐに鈍化傾向が戻ってくる。しかし師走の人出で増加圧力が生まれていると仮定すると、なかなか減少傾向にまで持っていくのは難しいのではないか。

 陽性者を減らせないのでなければ、医療崩壊を防ぐ何らかの手段を考えなければならない。医療崩壊を防げそうにないのであれば、陽性者を減らす手段を講じなければならない。

 政治判断が迫られるだろう。

 尾身分科会会長が「勝負の3週間」を宣言してから、2週間が過ぎた。極めて残念ながら、3週間がたって、少なくとも画期的な成果が出そうな気配はない。

 これは残念な事態だが、尾身会長の責任ではない。尾身先生や押谷先生を信奉し続けている私は、第二波では落ち着きを見せ続けていた彼らが、第三波では11月初旬からかなり強い調子で警告を発し続けていることに注意を払っている。第二波と同じように進まないとしても、それは、尾身会長らが警告したとおりに、乗り切ることがより困難だからだ。

 北半球の全域で大規模な感染拡大が起きている。大規模PCR検査の優等生とされた韓国でも感染拡大が起きている。一時期、韓国やニューヨークは大規模PCR検査で感染拡大を防いだ、といったその場の限りの主張が広範に見られたときがあった。その主張が誤りであったことは、現在の各地の状況が示している。感染拡大は日本だけに起きているわけではない。日本人の誰かの責任で起こっているわけでもない。幸い世界の状況から見て、相対的にはまだまだ日本の被害は少ないのである。落ち着いて建設的に次なる対応策を考えるときだ。

 私は一貫して、尾身分科会会長や分科会(旧専門家会議)のキーパーソンである押谷仁教授を称賛し続けている。現状を見ても、彼らの的確な活動がなければ、被害がもっとひどいものになっていたであろうことは間違いない。今の日本に、いや恐らく世界のどこに行っても、彼らに代わる人材はない。今後も、信頼すべき人々を信頼して、建設的に対応策を検討すべきである。

 物書きとしての私の失敗は、旧専門家会議の指導の下で動いていた日本の新型コロナ対策の取り組みを、「日本モデル」と呼んでしまったことだ。この言葉を最初に使い始めたのは私のようだ。しかし、この概念は、何としても日本政府を批判し、日本のパフォーマンスが高いということを否定し続けたい左派系を中心とする人々の反政府の闘争本能に火をつける効果を持ってしまった。

私が「日本モデル」という概念化を試みたのは、称賛すべき人たちを称賛するためにそのような概念化をしたかったからでもあり、また同時に、今後の改善につなげていくために日本の取り組みの長所と短所を整理したかったからでもある。私は冬になる前に法改正をして、取れる対策の強化・拡大を図るべきだと考えていた。公刊した対談集では、憲法改正を急いで緊急事態条項を入れるべきだ、とも主張している。https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8D%E5%AE%89%E3%82%92%E7%85%BD%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1-WAC-BUNKO-330-%E4%B8%8A%E5%BF%B5/dp/4898318304/ref=sr_1_1?dchild=1&qid=1607816560&s=books&sr=1-1

 しかし船橋洋一氏らの報告書では、「日本モデル」という概念を安倍首相が口にしたこと自体が、徹底した非難の対象になった。事前に精緻に作り上げた戦略もないのに「日本モデル」とか口にするな!といった言葉狩りである。私としては、政府関係者の皆さんにも申し訳ない気持ちになり,いたたまれない思いになった。おかしな事業評価手法 ~ 日本学術会議、そして民間臨調報告書 – アゴラ (agora-web.jp)

 非常によくないのは、いつの頃からか、「生命vs経済」の図式が定着してしまい、議論が二項対立の硬直状態に陥ってしまっていることだ。本来の日本の政策は、社会経済活動への悪影響を最小限にとどめながら、感染拡大を防いでいく「抑制管理」型だ。調整を図りつつ、時には強めの抑止をするために緊急事態宣言を導入したこともある。

 ところが「生命vs経済」の図式で、「専門家vs政治家」も全部あてはめようとするし、実態として「野党・マスコミvs政府」という図式も重なってくるので、建設的な議論が行えない不健康な構図だけが確立されてしまった。特に「日本モデルなどというものはない、あるのは生命vs経済あるいは専門家vs政治家だけだ!」運動の方々によって、こうした尾身会長らの努力もかき消され気味になってしまったのは、大変に残念である。

 船橋洋一氏らは、政治家や官僚へのインタビューを根拠にして「日本モデルなどはない!」という結論を急ぐが、本来であれば、尾身会長や押谷教授の考えを伝えるために、報告書を書いてほしかった。私が使い始めたときの「日本モデル」の概念は彼らのためにあったし、彼らの努力を助けるためにこの概念を使い始めた。

 しかし船橋洋一氏らの大々的で徹底した運動もあり、誤解を招くので、最近は私もあえて「日本モデル」という概念を使うのをやめている。結果として、尾身会長や押谷教授の取り組みを概念する手段を欠くことになってしまったのは、私としては大変に残念だ。

 いずれにせよ、今恐れるべきは、社会の分断である。振り回された「生命vs経済」の二項対立図式に、強引に「専門家vs政治家」なども押し込められてしまったうえに、反政府言論のネタを渇望している左派メディアや野党勢力が群がっている。このままでは日本もアメリカ社会を後追いして社会の二極分断の中で、効果的な政策を打ち出せないどころか、建設的な政策論さえ行えないような状況に陥るのではないか、と危惧せざるをえない。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78068 

 新型コロナよりも恐ろしいのが、社会の分断だ。ある意味で、日本が持っている唯一にして最大の武器が、それで失われる、という気がする。今後そこが問われてくるだろう。

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