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「中学生から高校生くらいの女の子が好み」痴漢で逮捕された漫画『アクタージュ』原作者の歪んだプライド

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは、11月24日に東京地裁で行われた漫画原作者の松木達哉被告人(29)の強制わいせつの初公判。東京都中野区の路上で、歩いていた女子中学生の胸を被告人が自転車で追い抜きざまに触って逮捕されたと報じられた事件です。

被告人は週刊少年ジャンプで連載されていた、漫画『アクタージュ act-age』の原作をマツキタツヤという名義で担当しており、逮捕された翌週に漫画は打ち切りになってしまいました。さらに新刊の発売中止と単行本1巻〜12巻の無期限出荷停止、電子漫画の配信停止が発表され、2022年に上演予定だった舞台版「アクタージュ act-age~銀河鉄道の夜~」も中止になるという、関係者に多大なる影響を与えた事件です。漫画自体は役者を題材にしている珍しいもので、連載は大河ドラマ編が面白い展開をしている真っ最中でした。


昨今は俳優が逮捕されても作品に罪はないため、上映や配信はそのまま行われることが多い中、漫画界は厳しいですね。俳優の漫画なのに。

この裁判は傍聴券が必要でしたが、10枚の傍聴券に対して抽選に並んだのは14人だけ。本人から話を聞かなくてもニュースや新聞で少し報道されるもので十分と考える人が多かったのでしょうか。それとも、世間に忘れられた事件なのか……。とりあえず抽選は当たりました。

法廷に入ると一般傍聴席の他には記者席が8席、それと関係者の傍聴席が2席。弁護人と共にマスクでスーツ姿の被告人が入廷し、被告人の両親が関係者の傍聴席に座ったところで裁判はスタートです。

起訴されたのは、今年の6月18日午後9時16分、被告人が東京・中野区の路上で帰宅のために歩いていた被害者(14)の後方から自転車で近付き、服の上から被害者の胸を2回揉んだという内容。罪状認否で裁判官から起訴状に間違いはないかと訊かれると、被告人は「いえ、ないです」と罪を認めていました。

被害者女性「被告人のファンに逆恨みされたら怖い」

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業した後、漫画の原作者として活動していたとのこと。本件は防犯カメラの映像を元に被告人の犯行を特定したようですが、歩いている女性を見かけて外見や年齢的に好みの場合は後をつけることがあったといいます。

性犯罪ということもあり、詳細が語られない冒頭陳述でした。超コンパクト冒頭陳述と言いますか。

取り調べに対して被害者は「左後ろから誰かの手が伸びてきて左胸を揉まれた。あまりに突然のことで抵抗も声を出すこともできなかった。今は自転車に乗っている男性を見ると怖くてビクッとなってしまう。被告人のファンから逆恨みされたらと思うと怖い」と述べているそうです。事件が心の傷となっているだけではなく、連載が突然打ち切りになったことでファンに何かされるのではないかと怯えているとのこと。

連載の打ち切りを悲しむ読者は多いとしても、その苛立ちが被害女性に向かうことはないと思いますが、被害を受けた側は理屈ではないでしょう。「傍聴希望者が14人しか集まらない程度の被告人ですよ」と教えてあげたいですが、被告人の職業柄、予期せぬところで被害者を傷付けているのが現状のようです。

被告人のタブレットの検索履歴が証拠として採用されていて、今年の7月に「防犯カメラ」「逮捕」「痴漢」などの単語で被告人は何かを調べていたようです。

さらに被告人のスマホには仕事の関係者などに宛てた謝罪文や反省文のメモも残っていたようで、なぜそんな文章が残されていたのかは被告人質問で後程明かされることになります。

取り調べに対して被告人は「大人に成長している途中の中学生から高校生くらいの女の子が好みで、後をつけることがあった。この日は被害者を見つけ、チャンスだと思い体を触ってやろうと思った。動機としてはストレスや性欲のはけ口としてやった。事件の記憶が曖昧なのは、他にも同様のことをやって混同しているから。事件の後に、自分のやったことが強制わいせつと認定されれば捜査が厳しくなると検索して知り、自首も検討したが報道されて周りに迷惑をかけると思ってできなかった」と供述しているそうです。自分の罪の重さを調べるため、タブレットで『防犯カメラ』などと検索をしていたわけです。

被告人の母親が気づいていた体調の変化

法廷には情状証人として、被告人の母親が出廷。傍聴席に座っていた母親が証言席に移り証人尋問が行われました。

弁護人「息子さんの逮捕はいつ知りました?」
母親「当日の夕方、ネットニュースで知りました」
弁護人「知った時はどう思いましたか?」
母親「大変なことになったな、と」

関係者からではなく、ニュースで知らされるとは相当ビックリしたでしょうね。被告人には前科がなく、多くの人に影響がありそうな職業ですので。

弁護人「接見にはほぼ毎日行ってたと。誰と行っていましたか?」
母親「夫と娘と3人です」
弁護人「保釈されてからも含め、本人とはどんな話をしましたか?」
母親「当時の心境や動機の深掘りをしていました」

被告人の今後を監督する立場ですから、家族で相当話し合ったようです。

そして犯行前後の様子について。

弁護人「どれくらいの頻度で連絡を取っていましたか?」
母親「2~3ヶ月に1回、部屋を片付けに行っていました。あとはLINEかメールでの連絡がほとんどです」
弁護人「異変とかはありました?」
母親「6月頃、息子の部屋に行った時は体調が悪そうでした。いつもは見送ってくれるのですが、ベットから起き上がることができずに心配していました。今までなかったことなので」
弁護人「それを見てどう思いました?」
母親「疲れているんだなって。『帰るね』と言って出ましたけど」

犯行前後、被告人の体調に起きた異変に気がついていたようです。

弁護人「どうすれば良かったと思っていますか?」
母親「密に連絡を取っていればなと」
弁護人「最後に何か言っておきたいことはありますか?」
母親「心の優しい、穏やかな子でしたが、全ての人に対してそうであって欲しいと思います」

被告人に向けてメッセージを送って弁護人の質問は終了。

続いて検察官から。

検察官「動機の深掘りをしたと。動機は何だと本人は話していましたか?」
母親「どうだったんだろうね…って話してるんですけど……。精神的に普通じゃなかった、元気がなかった…。う〜ん…気遣いをする子ですけど、どうしてしたのかな、おかしかったからおかしなことをしたのかと…」
検察官「ん? なぜそうなったと思います?」
母親「(私に)仕事も見せないですし、気を使っているみたいで大変だなと見守っていました。邪魔しないようにしていたため、触れないでいて…」

話し合いはしていたようですが、本人からは動機や理由を聞き出せていないみたいです。歯切れが悪くモゴモゴと返答して検察官からの質問は終了。

次は裁判官からの質問です。

裁判官「ストレスがあったという調書ですけど、それは仕事によるものですか?」
母親「今はそうは思ってないです。いろんなことを聞いてあげられなかった、いろんなことが重なったと思っています」
裁判官「仕事以外の原因として何かあったのですか?」
母親「コロナの影響で仕事が…外出するのを自粛とか。いろいろ重なって壊れちゃったのかなと」

やはりハッキリとした理由は聞き出せていないようです。

裁判官「仕事が忙しくなってからの変化ってどうでした?」
母親「いつも穏やかで優しいので変わらなかったです」

被告人は家族に弱いところを見せたり、悩みを話したりできない人という印象ですね。それが犯行前だけではなく今も続いていると感じました。

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