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アーミテージ・ナイ報告を読んでみた。

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第5次アーミテージ・ナイ報告が12月7日に発表されました。米国の対日政策に大きな影響力を及ぼしてきた超党派グループによる提言です。これまで同様に共同議長は、共和党系のアーミテージ元国務副長官と民主党系のナイ教授(ハーバード大学)です。戦略国際問題研究所(CSIS: Center for Strategic and International Studies)のホームページからダウンロードして読んでみました。

米国のジャパン・ハンドの面々は、専門家軽視のトランプ政権の4年間にわたって冷遇されてきました。バイデン政権の誕生で「やっとオレたちの出番だ」という高揚感を感じる報告書でした。

タイトルは「2020年の日米同盟:グローバルなアジェンダに関する対等な同盟(AN EQUAL ALLIANCE WITH A GLOBAL AGENDA)です。同報告は「歴史上はじめて日米の同盟関係が対等になった」と述べます。ある意味で無礼です。これまでの日米同盟が対等でなかったことを明言しているわけです。ジャパン・ハンドの上から目線はいつものことですが。

トランプ政権は、ジャパン・ハンドの推進するTPPから脱退し、伝統的な同盟関係を軽視してきました。同報告は、バイデン政権に対してはTPP参加を促し、日本を含めた同盟国との関係強化を訴えます。

米国のジャパン・ハンドから「日米同盟が対等になった」と持ち上げられて、安易によろこぶわけにもいきません。今まで以上に重たい責任、負担、リスクを日本に負わせようという米国側の意図は明らかです。気をつけなくてはいけません。

同盟関係にまつわる古くて新しい問題は、「巻き込まれるリスク」と「見捨てられるリスク」です。同盟国の戦争に不必要に巻き込まれるリスクがある一方で、同盟国との関係を軽視するとイザというときに見捨てられるリスクもあります。そのバランスをいかに上手に取るかは永遠のテーマです。

同報告は、安倍政権が集団的自衛権行使に踏み込んだことを高く評価します。当たり前です。最初にアーミテージ・ナイ報告が「日本政府は集団的自衛権を行使すべき」と提案し、安倍総理をはじめ外務省や防衛省がその提案に乗っかったわけです。同報告が安倍政権を高く評価するのは当然です。それをもって「外交の安倍」と褒めたたえるのは変な話です。

同報告は、安倍政権が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を高く評価し、対中国包囲網づくりにおける日本の主導的役割を賛美します。しかし、オーストラリアはともかく、インドがどこまで本気で日米同盟につきあうか、私は疑問に思っています。非同盟外交がお家芸だったインドです。インドのしたたかな全方位外交にだまされないように注意が必要です。

インドは日本や米国と良好な関係ですが、上海協力機構のメンバー国でもあります。ロシア・中国・インドの三カ国首脳内談も開催してきました。中印国境紛争という要素もあります。インドが、中国のインド洋進出や中国・パキスタンの軍事協力をこころよく思っていないはわかります。

しかし、だからといってインドがいつも日米と連携するとは限りません。インドから見れば、日本も米国も「バランサー」ということでしょう。インドにはインドの国益と地政学的条件があり、日本側の片思いである可能性が高いと思います。

日本では多くの人が誤解していますが、「インド太平洋戦略」は安倍総理(または日本政府)の発明ではありません。2010年10月28日にヒラリー・クリントン国務長官がハワイにおける演説の中で言及したのが最初です。2010年なので、民主党政権時代のことであり、安倍総理のアイデアではありません。安倍総理(というか日本政府)のオリジナリティは「自由で開かれた」という修飾語をつけたことです。

そして同報告は、菅総理にできるだけ早く訪米してバイデン大統領と会うべきと勧めます。それはそうでしょう。仮に立憲民主党政権だったとしても、早めにバイデン大統領に会って、気候変動対策や民主主義国間の連携協力の強化について話し合うのは良い考えです。

同報告は「現在、日米両国が歴史上もっともお互いを必要としている」と言います(The United States and Japan need each other more today than at any other time in their history.)。日本にとっても中国の軍拡は脅威であり、米国との同盟は死活的に重要です。同時に、トランプ外交によって米国の世界におけるリーダーシップが弱まり、中国の台頭で米国の相対的な優位が失われている今、米国の頼れる同盟国としての日本の重要性は増しています。

第一列島線の中軸は日本列島です。米国から見れば、日本列島で中国海軍の太平洋進出を抑えなければ、グアム島とハワイのラインで中国海軍と対峙することになります。地政学的に日本は、米国の安全保障上きわめて重要な位置にあります。

さらに佐世保、横須賀、嘉手納などの重要な在日米軍基地も貴重な軍事的資産です。在日米軍基地は自衛隊が守ってくれて、「思いやり予算」で駐留経費まで日本政府が出してくれます。日米同盟が片務的というのはまったくの誤解です。

だからこそ日本はもっと米国にものを言うべきだと私は思います。バイデン政権の米国は聞く耳を持っていると期待しています。辺野古の基地建設問題、地位協定の問題など、日本は遠慮せずに率直に米国に要求すべきです。日本の重要性が増している今だからこそ、米国は耳を貸す可能性が高まっています。

同報告は、日米同盟にとっての最大の安全保障上の脅威は中国であり、それに続くのが北朝鮮の脅威だと述べます。同報告は日本も台湾にコミットするように要求しており、その点は慎重に対応する必要があります。「巻き込まれるリスク」です。

同報告の北朝鮮への評価はおもしろいです。原文のままの方がおもしろいかもしれません。

The good news is that Kim Jong Un cares about regime survival; he is not suicidal.

訳すと「良いニュースは金正恩氏は政権の生き残りを気にしており、自殺する気はない(自滅的ではない)」という感じでしょうか。米国情報機関の行動心理学者たちが金正恩氏の心理や行動パターンを分析しているのでしょうか。日本政府だったらこんなトーンでまじめな報告書を書かないでしょう。おもしろいですね。

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