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公文書を通したガバナンス検証で、国交や地方自治を公正に執り行う - 「賢人論。」127回(中編)加藤丈夫氏

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大手重電メーカー富士電機の会長時代、65歳定年を打ち出してシニアの働き方に一石を投じた加藤丈夫氏。2013年からは内閣府所管の独立行政法人・国立公文書館のトップとして、認証アーキビスト制度の創設など、新たな取り組みに果敢に挑戦している。一方、「公文書」と聞いて人々が思い浮かべるのは、モリカケや桜を見る会など、ここ数年世間を騒がしているさまざまな問題。国立公文書館館長としてどのようにこれらを捉えているのか。話を伺った。

取材・文/盛田栄一 撮影/荻山 拓也

公文書館は第三者チェックと歴史資料館の2つの顔を持つ

みんなの介護 加藤さんは2013年に現職である国立公文書館の館長に就任なさいました。一般の人々にとって、「公文書」はあまり馴染みのないものだと思いますが、公文書を長期にわたって保存する意義はどういったところにあるのでしょうか。

加藤 まず、「公文書とは何か?」から説明したほうがよさそうですね。公文書とは、国や地方の公務員が業務を遂行するために作成した文書のこと。例えば民間企業でも、新規事業やプロジェクトを進めるために、企画書や提案書、計画書、スタッフ名簿、備忘録などの書類を作成しますよね。それのお役所版が「公文書」です。条約や法案の下書きなど、すべて公文書に該当します。ちなみに、それに対して民間企業の作成する書類は「私文書」と呼ばれます。

次に、公文書を長期間保管しておく必要性について。それは、国家公務員にしろ地方公務員にしろ、職務を遂行するために国民の税金が使われているからにほかなりません。公務員は国民のために働くことを理念として掲げ、国民は自分たちの納めた税金が公務員によって正しく使われているかどうか、知る権利があります。

だからこそ、ある政策や法律に携わる公務員の仕事が正しく公平に行われたかどうかを後から検証できるよう、記録としてきちんと残しておく必要がある。そういった公文書を永久保存し続けているのが、この国立公文書館なんです。

このように公文書をきちんと検証できるシステムが整っていて、常に国民の目が光っているのだと意識していれば、公務員もいい加減な仕事はおのずとできなくなります。これも公文書館が存在する意義の1つと言えるでしょう。

みんなの介護 自分たちの仕事ぶりが常に記録に残り、第三者にチェックされ得るということになれば、公務員も自ら襟を正す、というわけですね。

加藤 そうなんです。公文書館としては、人々の暮らしに影響を与える法律の内容とその成立過程を国民に見てもらうことで、国や自治体のガバナンスを検証すること。これは民主主義の原点とも言えます。また、先人の残した歴史的に貴重な資料を国民に見てもらうことで、日本人としての誇りや自信を感じてもらうこと。かっこいい言い方をすれば、それが日本民族としてのアイデンティティの確認につながるのではないでしょうか。

地域の重要な資料にアクセスできる文書館や資料館

みんなの介護 なるほど、よくわかりました。続けて素朴な疑問なのですが、「国立」公文書館があるということは、都立や県立の公文書館もあるのでしょうか。

加藤 もちろんあります。国立公文書館は国の歴史的に重要な公文書を保存・管理し、それらを広く国民が利用できるように整理・提供している独立行政法人、ということになります。

一方、東京都の都政に関する公文書を保存・管理しているのが、東京都国分寺市にある東京都公文書館。あまり知られていませんが、地方公共団体の設置している公文書館は、県レベル、市町村レベルを含め、全国に83館設置されている。国民は各館の利用案内にしたがって自由に閲覧することができます。ただし、必ずしも「公文書館」という名称とは限らず、「文書館」「歴史文書館」「資料館」「アーカイブズ」などを名乗っている館もあります。

国立公文書館では、国の重要な意思決定にかかわる「日本国憲法」をはじめ、「終戦の詔書」や法律・勅令・政令・条約の公布原本など歴史公文書を約105万冊、江戸時代以前の将軍家や寺社・公家・武家が所蔵していた『吾妻鏡』などの古書・古文書約50万冊、個人から寄贈された『佐藤栄作日記』など、合わせて約155万冊を保管。そのうち30点は重要文化財に指定されています。

最新の企画展のテーマは「グルメが彩るものがたり—美味しい古典文学」で、『日本書紀』『徒然草』『今昔物語集』の食べものに関する記述を書写本で展示しました。ちなみに、入場はいつでも無料です。

みんなの介護 なんだかおもしろそうですね。歴史に詳しくない方でも楽しめそうな企画です。

加藤 そう言っていただけるとうれしいですね。ほかにも国立公文書館の一組織である「アジア歴史資料センター」では、インターネットで公文書資料をいつでも閲覧できる「デジタルアーカイブ」の拡充にも力を入れています。現在、日本国憲法や国会開設の勅諭など、3,200万画像のデジタル化を終えて、順次新しい画像を追加しています。興味がある方は、一度ご覧ください。

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