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「ビジネス学部」なら間違いではないかも知れない

【青森】八戸大の「マイナスイオン実習」が中止(朝日新聞)

 「体によい」などと紹介される一方、その根拠があいまいとの批判も多いマイナスイオンについて、八戸大学は今月、3年間続けてきた測定の実習を中止した。大学は「商業用語と科学を混同していた。反省を教育に生かしたい」としている。

 マイナスイオンは、一般に空気中の電気を帯びた物質を指すとされ、インターネットには「自然治癒力を上昇させる」とか、「血液サラサラに」などの説明が多い。2000年前後には、効果をうたう家電製品も多く販売された。

 一方、科学理解を養う科学リテラシーの講義を持つ山形大の天羽優子准教授によると、マイナスイオンという言葉は科学用語に存在せず、健康効果を示す科学論文もほとんど無い。立証されない効果をうたう商品・商法には批判も多く、公正取引委員会から効果をうたうことを禁じる排除命令をうけた商品もある。

 八戸大は三つの高校とともに10年から十和田市の奥入瀬渓流で、市販の測定器を使ったマイナスイオン測定を開始。結果を健康効果の説明と併せ、ネットやパンフレットで紹介してきた。これまで5回、測定会を開き、のべ36人の高校・大学生が参加した。

 

 この頃は「放射能に効く」みたいな触れ込みでEM菌なる効能のほどが検証されていない、そして安全性が確認されているとも言いがたい単なる生ゴミを税金を投じて散布する自治体すらあるわけです。鰯の頭も信心から、実効性や危険性の度合いを計った結果よりも、「これは良い」「これは危ない」と信じることがまず先にあると言うべきでしょうか。EM菌やマイナスイオンのように科学的な裏付けのない、いかがわしい代物が持ち上げられる一方で、放射線や食品添加物など、その程度で健康への影響を危惧するのはデメリットしかないだろうと思えるものが過剰に忌避されたりと、我々の社会の良識が疑われる事態は続くばかりです。

 さて伝えられているように青森の八戸大学では「マイナスイオン実習」を開催していたそうです。でも5回の測定会で参加者は延べ36人とのこと、何とも寂しい数値ですね。延べ人数ですから重複もあるのでしょう。きっと、主催した教授に近しい学生が毎回のように駆り出されることもあったのではないかと推測されます。それだけに影響のほどは微妙ですが、ただ大学ですから科学的根拠の検証すらもなしに、ただ「健康に良い」と信じるだけでは足りないと言われるのが当然です。理系の分野なら「マイナスイオンとは何か」「本当に健康への影響があるのか」、文系なら「なぜこうも世間に広まったのか」辺りが題材にできると思いますが、八戸大がやっているのは完全にエセ科学の世界ですから。

 大学内部でダメ出しする人はいなかったのかと首を傾げるところ、しかるに八戸大に設置されているのは「ビジネス学部」「人間健康学部」だそうで、まぁマイナスイオンみたいな類とは相性が良いのかな、と思わないでもありません。だいたい日本で「マイナスイオン」という定義すらも曖昧な代物が流行したのは、まさにビジネスの世界の迎合があったからです。客から海外メーカーと勘違いされるような無名の三流メーカーではなく、とにもかくにも名前の知れ渡った一流の家電メーカーが、挙って「マイナスイオン」を掲げた商品を販売してきたわけです。日本でビジネスを語るなら、むしろエセ科学には迎合した方が良いのかも知れません。

 マイナスイオン過敏症とか言い出す人はいないのかな、とも思います。得体の知れない成分が垂れ流しにされているのですから、そのせいで健康被害を受けたと訴える人がいてもおかしくなさそうなところ、何とも不思議なものですね。「これは健康に良い」と吹き込まれれば世間は無批判になり、「これは健康に悪い」と吹き込まれれば世間は徹底した排除を要求する、いい加減な話です。しかし、この「検証抜きに信じる」「疑いを持たない」ことこそ我々の社会における「常識」として罷り通っているものなのではないでしょうか。それを実践して見せた八戸大は、良くも悪くも「社会人」を作る上では間違っていないと言えます。

 家電量販店で働いていた頃もあるのですが、当たり前のようにマイナスイオン商品を売っていました。「こんなのでたらめ、単なるハッタリですよ」とお客さんに説明したりはせず、メーカーの宣伝にあわせて適当に売り込んでいたものです。科学リテラシーなんて放棄しなきゃ、社会人は務まりません。マイナスイオン商法に励む日本の一流家電メーカー自体がそうですし、家電メーカーに限らず企業が研修と称して新人に擦り込もうとする類にだってエセ科学は満載です。一時、話題に上った「水からの伝言」だって本当に深く入り込んだのは学校教育ではなく、むしろ社会人の研修現場ではないでしょうか。そうでなくともEQだのメラビアンの法則だのは研修屋の定番です。馬鹿な奴らだ、と一蹴するのは簡単でも、それに付き合わないと社会人は務まらないのです。科学という観点からすれば八戸大の実習は愚かしく見えるかも知れませんが、ビジネスという観点ではどうなのか。エセ科学を検証抜きに受け入れる態度を養うのは、我々の社会における「ビジネス」の実習として通用するものとも考えられます。

 ちなみに、以下のような話もありますね。血液型性格診断も代表的なエセ科学であり、人種論入門としての機能も果たしている気がしますが、単なるこじつけに過ぎないからといって取り合わないようでは日本人として失格です。八戸大のマイナスイオン実習に倣って、流行り物には迎合する、科学的根拠は問わない姿勢を身につけた方がコミュニケーション能力強者になれる、社会人としては立派になれることでしょう。

「血液型」性格診断嫌いはモテない(R25)

「B型って自分勝手な人、多くない?」「A型の上司とはどうも相性が悪くて」…こんな話を耳にすること、よくありますよね? なんといっても日本人は「血液型 性格診断」が大好きな国民。特に女性の場合、「血液型×職場の人間関係」「血液型×恋バナ」は、おしゃべりの肴としてテッパンです。

(中略)

「血液型性格診断を本気で信じているわけじゃないけど、話のネタとして盛り上がっているときに、水を差すようなオトコは心が狭くて嫌」(24歳・会社員)
「お互いの性格を知るきっかけになるから、そこは乗っとけ!って思う。そこで乗れないオトコとはたぶん付き合わない」(27歳・公務員)

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