
■今年初めにニョーヨーク州議会に提案された法案が物議を醸している。ニューヨーク州議会のロバート・キャロル下院議員(民主党)が提出した法案「A06078B」は、医薬品と食品を除くオンラインショッピングの配送に1箱当たり3ドル(約310円)を一律に徴収するというものだ。
マンハッタンを含むニューヨーク市内への本や化粧品、セーターなど配送物に3ドルのサーチャージを課し、そこで得られた収入をパンデミック以降に利用者が激減したニューヨークの公共輸送機関「メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ(MTA:Metropolitan Transportation Authority)」の救済に充てる。
アマゾンを狙い撃ちしたと見られる法案にはニューヨーク市の鉄道とバスの労働者(約7万人)を代表する全米運輸労働者組合(TWU:Transport Workers Union of America)委員長のジョン・サミュエル氏も法案を支持している。
MTAは現在、パンデミック中の運賃収入と助成金の減少で生じた赤字予算を解消するため連邦政府に120億ドルの支援を求めているのだ。財政支援が来月までに得られない場合、鉄道とバスのサービスを40~50%削減しなければならず、従業員の13%に相当する9,000人以上をレイオフする可能性があると警告している。
一方、3ドルのサーチャージで調達できる税収は年間10億ドル(約1,042億円)以上とみている。ニューヨーク市では毎日推定で180万個のパッケージ(小包や箱)が配達されている。
法案ではそのうち生活必需品ではない注文品に対して消費者に追加料金が上乗せされることになる。なお生鮮品を含む食品や医薬品、おむつは対象外だ。
キャロル氏は新たなサーチャージはMTAの運営や雇用を助けるだけでなく、環境や渋滞改善に役立つとしている。
ニューヨーク・タイムズ紙が昨年、報じたところによるとニューヨーク市内で貨物運送のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)とフェデックス・エクスプレス(FedEX)等のトラックが急増したことで、バスや自転車の専用レーンにまでダブル駐車し道を塞いでいるというのだ。
ニューヨーク市内では2018年、駐車違反件数が47.1万件(2018年)にもなり5年前から34%も増加した。ネット注文したパッケージのメインのエントランスにもなっている、ニュージャージー州とマンハッタンを結ぶジョージ・ワシントン・ブリッジは全米で最も渋滞が激しい道路となっているのだ。
パッケージにサーチャージを課すことでこういった問題が解消するとしている。さらにニューヨーク市民が地元のパパママストアなど小さな商店で買い物をする機会が増え、パンデミックで疲弊したローカルビジネスを助けることになるとしている。
この法案を支持する声が多く上がる一方で、パンデミック以前から慢性的な赤字が指摘されていたMTAの救済に疑問の声も上がっているのだ。
新サーチャージが貧困層や労働者への新たな負担になることを示唆したアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議院(民主党)は、富裕層への増税を訴えている。
ニューヨーク市でこの法案が施行されれば、コロナ禍でさらに財政が厳しくなった自治体が追随することになる。ネット通販最大手のアマゾンは、アマゾン・フレッシュなどピックアップ拠点をさらに増やさなければならないだろう。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ニューヨーク市マンハッタンでは、コロナ禍で通勤の必要がなくなった人々が生活費のバカ高いマンハッタンにいる必要はなくなり、住んでいたアパートを引き払う人が後をたたないとか...
ニューヨーク郊外の住宅では逆にマンハッタンから引っ越ししてきた人が増えたため、不動産ブームが起こり住宅の値段が上がっていると聞きます。マンハッタンに入ってくる人もいないためアパートメントで空室が増え物件がダブついているのです。当然、不動産価格も減少傾向。人は来ないし、人も住まない。そこで買わないし食べないので税収が激減し、市の財政はさらにきつくなります。
後藤は「腐ってもマンハッタン」と思っています。今はパンデミックで仕方がないとしても、コロナ終息後は再び人気を取り戻すことになります。ワクチン接種後には海外からも人が押し寄せるようになる。そこでコロナの影響により市は取り損ねた税収を補うことになります。つまり増税です。他の地方自治体も同じ動きをとります。
アマゾンには痛いけどパッケージ一律3ドルのサーチャージは可愛いものかもしれません。大人気のマンハッタンでは生活費がさらに高くなりますが、それによるマンハッタン離れは起こらないでしょう。