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日本のメディアが報じないアフリカの光と影 「スタートアップ大国」 の可能性を引き出すJICAの挑戦 - 不破直伸

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JICA提供

新型コロナウイルスが拡大する現在でも、アフリカのスタートアップ企業は世界中の投資家たちからの注目を浴び続けている。

日本でもビジネス誌を中心に「アフリカ×スタートアップ」をテーマにした報道は急増している。だが、そういった記事は大きな成長を継続できるポテンシャルの高いスタートアップやその企業を取り巻くエコシステム(※)といったきらびやかな部分に焦点を当てるのみで、アフリカが抱える課題やその課題の解決に取り組む起業家たちの情報を伝えることはほとんどない。

アフリカに4年住む筆者が目にした、この国の光と影、そして日本の国際協力機構(JICA)が挑戦している起業家の育成や、それを通した社会課題の解決・産業の底上げを目指す活動を紹介する。

※スタートアップ・エコシステム…起業家、起業支援者、企業、大学、金融機関、公的機関等が結びつき、スタートアップを次々と生み出し、それがまた優れた人材・技術・資金を呼び込み、発展を続けることを生態系になぞらえ、「スタートアップ・エコシステム」と呼ぶ。

年間投資額2,100億円のアフリカに横たわる深刻な社会課題

Getty Images

アフリカの人口は2020年現在、約13億人。30年後の2050年には25億人に達し、地球上の約4人に1人がアフリカ人になる世界が迫っている。

人口が急増するアフリカでは、スマートフォン(スマホ)の普及をきっかけに先進国の技術革新を一気に飛び越えたビジネス=「リープフロッグ(かえる飛び)」現象が急拡大。スタートアップへの投資も注目されており、2019年の投資額は20億ドル(約2,100億円)と、前年の1.7倍となった。

これは5年前の東南アジアへの投資額にほぼ匹敵する規模で、アフリカに対して欧米・中国を中心に投資が集まっている。

このような魅力が高まってきているアフリカではあるが、雇用問題、人的資本の問題、未整備のインフラなど、アフリカが抱える社会的・構造的問題は深刻である。

「アフリカITビジネス」が報じられているものの… 地方・農村部では2G回線の人口大国エチオピア

エチオピアの首都アディスアベバは家族と徒歩で歩けるぐらい安全だ

現在、私が住むエチオピアは人口約1億人と、アフリカ第2位の人口大国だ。これまでスタートアップ・エコシステム構築の専門家として首都アディスアベバに居住をしながら、各都市のエコシステムの調査・分析や起業家支援活動などを行うために、アフリカ各国に渡航したり、エチオピア国内の各都市を訪問したりしてきた。


筆者の住むエチオピアの料理「インジェラ」(上)とタレをかけて食べる生肉料理(下)

日本の報道では見えてこない地方都市・農村部の状況について私自身の経験をもとにお伝えしたい。

エチオピアの首都でのインターネットは4G回線が利用可能であるが、地方都市、特に農村部にいけば良くて3Gまたは2G回線、地方都市の中心部から離れると電波がなく、インターネット回線が使えないこともあった。

エチオピア西部の地方都市ガンベラの風景。首都ではあまり走っていない三輪車が主流だ

エチオピア西部の地方都市ガンベラで焼きとうもろこしを販売する男性

4G回線のスピードに慣れている私には、地方都市・農村部のインターネット速度はあまりにも不便で、持っているスマートフォンは電話機能や時間を確認するために使う程度になる。大容量アプリのダウンロードやストリーミングで動画を見るということはしない。

統計によればアフリカ全体でのインターネットへのアクセスは4人に1人しかない状況だ。

1週間で6日停電も アフリカ地方都市の現実

エチオピア北東部の地方都市セメラの風景。首都・他都市と大きく異なり砂漠地帯であり、中東・アラブの文化が色濃く反映されている(中央は筆者)

インターネット以外に電気の問題もある。アフリカでは全体人口の33%しか電気へのアクセスがないとされる。

エチオピアでは電力供給も安定せず、首都でも停電が頻発。数分から8時間近い停電が週3~5日は起きている。数日間電気がないことも多々ある。我が家は自家用ジェネレーター(発電機)を使っていなかったので、停電中はいつも冷蔵庫の中身を心配していた。

地方都市の電力不足はより深刻であり、地方都市への出張中、1週間のうち6日間が停電したこともあった。出張ではパソコンとプロジェクターを使って施設で講義をすることが多いのだが、この出張の際は、電気がないので部屋の中が暗く、パソコンも使えないため、全員で教室の外に出て、芝生に座って青空教室で講義を行ったことをよく覚えている。

エチオピア西部の地方都市ガンベラにて。大学での研修風景(青空教室)=JICA提供

地方都市では電池が長持ちするフィーチャーフォン、いわゆるガラケーの方が利便性は高く、利用者も多いので、首都圏でスマホを活用したサービスを提供しているアプリ開発会社も、地方・農村部向けにはいまだにフィーチャーフォン向けにサービスを提供していることが多い。

このように地方都市は首都圏と異なる課題を抱えており、経済格差も大きい。各地域に応じた解決策の提供が必要になってくる。

また、電気、水およびインターネットなど、ビジネスをする上で必要なものが安定的に供給できないと外資参入を含めビジネスは発展せず、貧困から派生する深刻な栄養失調や水・衛生環境の問題も重要な社会的課題となっている。

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