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あれもこれも「老害」扱いされる現代 大人のルールはどこへ?

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「年上だから偉い」がなくなった現代

最近、いい風潮だなあと感じることがありまして、「若い人でも、年上の人の言うことを盲目的に聞かなくてもいい」という雰囲気がありますよね。

それに僕が気づいたのは、10年くらい前のことでした。ある若い女性が、こう言ったんです。

「私のお母さんは、もし学校の同じクラスにいても、まず友達にならないタイプ」

これ、1969年生まれの、おもいっきり昭和世代の僕にとってみると、衝撃的な発想でした。自分の親が同じクラスにいるという風に客観的に想像できるって、僕の世代の感覚からすると驚きで、「ああ、若い世代の方は、”親だから偉い”というように盲目的に信じているわけではないんだな」と痛感したんです。

そしてその後しばらくして、「毒親」という「子供にとって害になる親もいる」ことを明らかにする内容の記事をメディアでよく見かけるようになり、客観的に自分の親のことを見れる世の中になってきたんだな、これは良い風潮だなと感じました。

僕らの世代では、親と同様に、学校の先生が言うことは絶対でしたし、会社の上司が言うことも絶対でした。それについても「上の世代の人も同じ人間だから、言うことを全て鵜呑みにしないで、批判的に見ることも良いことだ」という雰囲気に変わってきましたよね。良い世の中になったと本当に思います。

そしてこの流れが生んだ言葉だと思うのですが、ある時から「老害」という表現を目にするようになりました。

会社や組織の上層部で権力や決定権は相変わらず握っているのに、インターネットや世界の新しい流れが理解できていなくて、若い人たちの自由な新しいアイディアを受け入れられない人たちや、困ったことに、そんな状況でも年功序列で結構な給料をもらっているような人たちに対して、若い世代から「老害」という言葉が叩きつけられたというわけです。

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あれもこれも「老害」?

僕は、この言葉の破壊力はすごいなあと感じました。今まで「年上の人は敬え」「年上の人の方が経験値は高いんだから、年上の人の方が世の中を理解しているはずだ」という、「常識と信じ込ませられていたこと」を、見事にひっくり返したからです。

それと同時に、「老=老いていること」が、若い人たちにとって「害」になるんだというのは、うまい表現だなあと感じました。

しかし、この老害という言葉に笑っていられたのは最初のうちだけでした。気がつくと、その言葉がどんどん猛威をふるって、年長者が言うことの全てに対して投げかけられるようになってしまったんです。そして、ついに僕もインターネット上で「老害」とレッテルを貼られるようになりました。

例えば、僕は「結婚って良いよ」という文章をたまに書くんですね。ただその時には、もちろん結婚したくない人はしなくて良いし、全ての人が結婚に向いているわけでもないし、結婚を無理矢理押しつけたり、同調圧力になるような雰囲気は良くないと思います、という感じの「フォロー」も必ず付け加えることにしているんです。

でも、やっぱり結婚って良いよ、家族って良いよ、朝起きて、目の前に好きな人がいて、「おはよう」と言い合って、それがお互いどちらかが死ぬまで続くのは、なかなか良いと思うよ、と書くんですね。

そしたら必ず「老害」という言葉が飛んでくるんです。

まあ「2:6:2」の法則で、2割が気に入ってくれて、6割が無関心で、2割から嫌われるというのは知っているのですが、でも、「自分は老害なんだ」と悩んでしまうわけです。

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今でも「大人が教えるべきこと」はある

僕は25歳の時にバーテンダー修行を始めたのですが、その頃って、会社の先輩や上司といった年上の人が若い人をバーに連れてきて、よくこんな会話をしていました。

「ほら、今、何も頼んでいないのに、ナッツが出てきただろ。これはお通しと言って、チャージがかかりますという意味なんだ。これが渋谷あたりだと500円くらいかかって、青山だと1000円くらい、銀座だと2000円くらいかかる。なんで座るだけでお金が取られるんだと思うかも知れない。でも、このチャージでお店のお客さんの雰囲気が決まるんだ。500円を払いたくない人はこのバーには来ないし、500円を払うのを気にならない人はこのバーに来る。要するに、この500円のチャージがこのバーの入場料なんだな。だから君も、銀座のチャージ2000円が高いと思ったら行かない方が良い。2000円のチャージが気にならないくらい給料が多くなって、銀座のバーで飲みたくなったらその時行けばいい」

こういう、バーの選び方といった「大人のルール」みたいなものを昔は大人が教えてくれていたんですね。

今は誰もこういうことを教えなくなったから、居酒屋で「お水でいいです」という人が出てきてしまって、メニューに「おひとり様1品、必ずドリンクをご注文ください」という注意書きが必要になりました。他にも、コーヒー1杯、ビール1杯で何時間も飲食店に滞在する人が出てくるようになったので、「1時間半でお願いします」と最初に言われるようになっていますよね。

これも昭和の時代は、誰か大人が若い人に対して、「居酒屋に入ったら、何か飲み物を注文するのがあたりまえだ。お酒が飲めなかったらウーロン茶を頼まないとお店が困っちゃう。この人たち、これで生活しているんだから」とか、「ほら、コーヒー1杯でずっとねばっていたら、外で待っているお客さんが入れないだろ。こういうお店はたくさんお客さんを入れて、薄利多売で商売しているんだから。そこは気を使ってあげなきゃ。もう少しいたいんならお代わりを注文すること」とかって言っていたんです。

でも、そういうの、今は古いのでしょうか。老害なのでしょうか。僕は、今でも大人が教えるべきことだと思うんですけどね。

そんな感じのことを書いた僕の本が出ました。よろしくお願いいたします。


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