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たった一つの道

昨日の党首討論で、明日11月16日の解散、12月16日の衆議院選挙投票が事実上決まりました。

民主党内の(前回この欄でも触れたような)猛烈な解散阻止の動きを、半ば電撃的な解散時期の明示という手段で打開し、結果として自民党谷垣前総裁との約束を守った野田総理の決断を率直に評価します。

ただし、それは野田総理がおっしゃった「正直の上にバカがつく」「身を切る覚悟を示す」という次元とは異なる背景に基づくことは声を大にして指摘しなければいけません。

野田民主党政権は内閣支持率、政党支持率とも2割前後の水準となり、この欄で書いたとおりもはや死に体の状況で内政・外交とも行き詰まっていました。

速報の7-9月四半期GDP(国内総生産)は実質でマイナス0.9パーセント、年率換算マイナス3.5パーセントとなり、このままでいけば来年の消費税引き上げも不可能になる深刻な不景気となりかねません。米国大統領、韓国など主要な国のトップが選挙の洗礼を受ける中、諸外国からも信頼を失っている野田政権の延命は事実上不可能でした。

そのうえ民主党内では強烈な「野田降ろし」の動きが出ていました。

「この低支持率のまま選挙に突入したら生き残れない」「野田を人気のある細野にすげかえ、支持率が上がったところで解散をするべきだ」…野党から会期末に内閣不信任案が出されると身内の造反により、過半数をかろうじて維持している野田政権は解散を余儀なくされる可能性があり、その前に党の両議員総会で代表交代の動議を出す可能性もあったと聞きます。テレビカメラの前で公然と「野田総理には解散させない。その前に交代だ」と発言する議員が続出しました。

野田総理に残されたたった一つの道は、この党首討論で自ら解散の道筋をつけることだったのです。

それにしても許せないのは野田総理の選挙制度を利用した不誠実なパフォーマンスです。「安倍総裁が定数削減に応じて下さると確約すれば明後日に解散する」…とんでもないわなが隠れているのです。

この欄で再三述べたとおり、民主党が主張している「比例区40削減」は、そもそも憲法上あり得ない「連用制」を用いたものです。

この制度は、通常の比例代表選挙が各党につき、比例得票数を1、2、3…と整数で割っていって、その結果の多い順に議席数を割り振るのに対し、小選挙区で当選した議員プラス1から徐々に割る数を増やしていくという複雑な制度を用いるものなのです。

結果として、小選挙区で当選する議員が増えれば増えるほど、たとえ比例区でも多くの票を獲得した政党でもどんどん比例区の議席数が逆に減っていってしまうというとんでもない制度なのです!このような制度を用いている国は当然のことながら世界中どこを探してもありません。

しかも民主党の案は比例復活議員を決めるための惜敗率を、これまでの道州を基本としたブロック単位ではなく、全国一律に算定しようというのです。

その結果として、例えば東海地方なら東海地方全体で、二大政党のうち負けた政党の議員が1人もいなくなってしまうという、衆議院の国民代表機能を失わせかねない変更なのです。

このような制度を持ち出したのは、少数政党(特に公明党)の支持を取り付けるためです。前回の選挙制度で公明党の取った議席は21ですが、この制度を導入すると数議席増えることになります。

しかし考えてみて下さい!小選挙区も比例区も定数を減らすというのに、一部の政党が逆に議席を増やすというのはどう考えても不合理ではありませんか?

これまで自民党は「比例区30減」「その代わり一定の少数政党による優先枠を若干上乗せする」という穏健な案を提示し、各党協議に臨んできました。しかもその案はどの党より先に示したものだったのです。

しかし少数政党の同意を得ることに苦労し、かつ解散を先延ばししたい民主党は、あり得ない自らの案に固執し続けました。 結果として局面の打開を図ろうと、憲法違反の一票の格差を是正するための「0増5減」を先行して法案として提出したのが自民党だったのです。

こうした経緯を熟知しながら、昨日の党首討論の最後で「技術的な問題にこだわる自民党には政権を戻せない」と捨て台詞を吐き、あたかも自分だけ身を切る努力をして自民党がそれに後ろ向きである印象を作ろうとした野田総理のパフォーマンスは絶対に許せません!

安倍総裁が主張するとおり、この問題は民主主義の土俵を設定するものであって、極力各党の理解を得るよう努力し、場合によっては議長のあっせんなども活用しなければいけない重大な案件なのです。過去の歴史がそうなのです。それをしてこなかったのは他ならぬ民主党です!しかも解散後に議席数がどうなっているのかわからない政党同士で、与党になることを前提に制度変更を約束するというのも理論上おかしな話です。

尊敬に値するのは公明党の山口代表です。

この間の事情を正確に把握されている山口代表は、たとえ公明党に有利であり、かつパフォーマンスとしては野田総理の提案に即座に応じるのが得策であったにもかかわらず、昨日の党首討論ではその道を取らずに筋を貫きました。結果として安倍総裁が一人で悪者になることが避けられたのです。

いずれにせよ、その直後の安倍総裁の記者会見(私も報道局次長として同席しました)において、安倍総裁は「総理の提案を受け止める。定数削減は審判を受けた通常国会にて実現する。」という趣旨の発言を行い(これは決して民主党案そのものを受け入れるという発言ではありません)、ここで解散が決定したということです。

国民の皆さんの中には、定数是正がされないままの解散では選挙が無効になってしまうのでないか、との疑問もあると思いますが、違憲状態であるにせよ、是正に向けた道筋をつけているので、完全な立法府の不作為というわけではありません。選挙無効とまでは言えないように思います。いずれにせよそれは将来の司法判断に委ねるしかないでしょう。

いずれにせよ選挙戦がいよいよ始まります。実現できないマニフェストに始まり、最後までパフォーマンスだらけで国益を失った民主党政権に終止符を打つとともに、しっかりと自らの進むべき理念・政策を力強く打ち出し、日本を立て直すことをここにお誓い致します!

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