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  • 2020年12月09日 15:00 (配信日時 12月09日 06:00)

「“緊縛”研究は女性蔑視にあらず!」京大教授がYouTube動画へのクレームに猛反論


出口教授の専門は哲学。「緊縛の “相互信頼” は、哲学における “自己と他人” を考えるうえでもしっくりくる」

 10月24日、京都大学で一風変わったシンポジウムが開催された。テーマは「緊縛」。世界的な緊縛アーティストのHajime Kinoko氏(43)が、女性を縛り上げるパフォーマンスを30分にわたっておこなった。

「コロナ対策で空席を設けましたが、非常に多くの方に参加いただきました。僕が最初に『高手小手』という縛りを披露し、その後は緊縛の “アートとしての美しさ” を語り合い、会場は、すごくポジティブな雰囲気でした」

 当日は、学生など約90人が参加。シンポジウムの模様はYouTubeで公開され、全世界で59万回以上も再生された。その95%は外国からのアクセスで、海外の日本文化の研究者からの問い合わせも多かったという。

 だが、動画を見たひとりから、「女性を蔑視している」「これは学問なのか」という苦情が寄せられ、京大はホームページ上で謝罪。動画は11月5日で見られなくなった。

《京大 緊縛動画を公開停止し謝罪》

 11月11日、NHKがこう報じたところ、SNSでは「もうちょっとキモの据わった大学だと思ってた」「すぐに引っ込めず、毅然とするのも大事ではないか」などと、たった1件の抗議に屈した京大への批判が噴出したのだ。

「いいえ、私たちは抗議に屈したわけではないのです」

 京大の “弱腰” をただそうと、シンポジウムを企画した大学院文学研究科の出口康夫教授(58)に問い合わせると、こんな反論があった。

「謝罪はあくまで、動画の視聴者が持たれた『不快感』に対するもの。研究や発信はこれからも続けていきます」

 では、なぜ動画の公開をやめたのか。

「公開期間は、初めから2週間程度のつもりでした。というのは、この企画はもともと書籍にする予定で、同じ内容のものをいつまでもネットに上げておくのは具合が悪いからです。批判を受けて公開を取り下げた、というのは正確ではありません」

 寄せられた苦情に対して少しもひるんでいない出口教授は、緊縛を「女性蔑視」と斬って捨てるのは間違いだと、自説を展開する。

「シンポジウムでは、男性のKinokoさんが女性のモデルを縛ったということで、そういうご意見を持たれた方もおられたかと思います。しかし緊縛は、縛る側と縛られる側とが対等な立場に立ったうえで成り立つ “パフォーマンス” です。

 私も当日いちばん前で見ていて、支配や服従とはまったく異なる “相互信頼” というメッセージを受け取りました。女性の緊縛師の活躍も増えていますし、女性蔑視とは、まったく違うものがそこにはあります」

 さらに、「これは学問なのか」と疑問を呈されたことについては、「むしろ勲章みたいなもの」と胸を張る。

「たとえば『源氏物語』や有名な西洋の絵画がテーマなら、誰も文句は言いません。しかしクラシック音楽でも、初演がブーイングの嵐になったといったケースは多々ありました。

 もちろん、今回は半ばクレームのお言葉だったと思いますが、最前線の研究には、“これは学問なのか” という疑問の声がしばしば湧き出るものなのです」

 出口教授は2019年に研究会を立ち上げ、専門である哲学の視点から緊縛を考えてきた。

「緊縛は、私が研究する《我々としての自己》というテーマと重なります。“委ね、委ねられる” という、あるべき関係がそこに見て取れるのです。

 緊縛という世界で、何か新しいことが起こっている。でも何が新しいのか、どう新しいのか、まだ世界の誰もが言語化できていません。この点で、緊縛を学問として探究する価値があると思いました」

 パフォーマンスを披露したKinoko氏は、緊縛の最前線を独走する存在だ。ファッションブランド「ディーゼル」とのコラボや、公共の美術館や高級ホテルでもショーをおこない、歌手のあいみょんのMVでは、彼女を縛り上げて話題になった。

「この20年で、日本の緊縛が世界で受け入れられてきたことを実感しています。アメリカやヨーロッパにも緊縛文化はありますが、うつぶせに寝かせて手足を縛るだけ。日本には、縛られる側に対するリスペクトがあります。

 京大のような名門大学が緊縛を研究対象にしてくれるのは、ありがたいことだと思っています」(Kinoko氏)

 漫画やアニメを大学で学ぶことは、当たり前の時代になった。“京都大学緊縛学部” が設立される日が、来ないとも限らないのだ。

写真提供・Hajime Kinoko氏

(週刊FLASH 2020年12月22日号)

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