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いつ行うのか?トランプの自己恩赦と2024年出馬宣言 - 海野素央 (明治大学教授 心理学博士)

今回のテーマは、「トランプ恩赦と2024年?」です。複数の米メディアは、退任まで残り50日を切ったドナルド・トランプ大統領の恩赦の可能性に関して報道しています。トランプ大統領が自己恩赦を行うというのです。

果たして、トランプ氏は自分に恩赦を与えることはできるのでしょうか。仮に24年米大統領選に出馬する場合、どのようなタイミングで出馬宣言をするのでしょうか。本稿ではトランプ氏の恩赦及び、出馬宣言の時期について述べます。

「恩赦が欲しい」

トランプ大統領はこれまで大統領特権によって守られてきましたが、来年1月20日民間人になります。脱税、中国における秘密口座の存在、大統領の地位を利用した利益誘導並びに不倫相手に対する口止め料など、様々な疑惑を抱えているトランプ氏は、バイデン新政権の司法長官が本格的に捜査を行い、同氏を起訴することを懸念していると、メディアは報じています。そこで同氏は、予防的な恩赦を欲している訳です。

過去の恩赦の例をみてみましょう。ジェラルド・フォード第38代大統領は1974年、ウォーターゲート事件で起訴される可能性が高かったリチャード・ニクソン第37代大統領(共に共和党)に、機先を制して恩赦を与えました。

ただフォード氏は後に、重い代償を払うことになります。ニクソン氏に与えた恩赦を巡り、米国民から非難を浴び、1976年の大統領選で民主党のジミー・カーター知事(当時)に敗れました。

自己恩赦

合衆国憲法第2条は、「弾劾の場合を除き、米国に対する犯罪に対して、刑の執行延期と恩赦を認める」権限を大統領に与えています。

第2条の恩赦に関する文言には、自己恩赦に関する記述はありません。そこで、トランプ大統領には自分に恩赦を与える可能性があります。

実際トランプ氏は18年、「大統領には自分に恩赦を出す絶対的な権利がある」と、自身のツイッターに投稿しています。加えて、米メディアはロシア疑惑の渦中にあったトランプ大統領が、ホワイトハウスの顧問弁護士に対して大統領は自分に恩赦を与えることができるのか、質問をしたと報じました。同氏はすでに自己恩赦に高い関心がありました。

身内にも恩赦

来月退任するトランプ大統領は民主党からの「報復」を恐れて、身内に対しても恩赦を検討していると米メディアは報道しています。トランプ氏を応援する保守系のFOXニュースのショーン・ハニティー氏は、これから民主党による「魔女狩り」が始まるので、自分と家族にも恩赦を出すべきであると主張しました。家族には、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏、長女のイバンカ大統領補佐官、次男のエリック氏及び、娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が含まれています。

ジュニア氏は、16年米大統領選挙の際中、ロシア政府と関係のある女性弁護士等とニューヨークで面会をしたために、米連邦捜査局(FBI)の捜査対象になりました。イバンカ氏は、一族が経営するトランプ・オーガニゼーションから同氏が共同所有するコンサルタント会社を通じて、「コンサルティング費」を受け取ったと報じられました。トランプ・オーガニゼーションには税金の支払いを回避するために、イバンカ氏にコンサルティング費を支払っていた疑惑があります。

一方、トランプ・オーガニゼーションの経営幹部であるエリック氏は融資を得るために資産価値をつり上げたと言われています。エリック氏はニューヨーク州の検察官の捜査を受けました。クシュナー大統領上級顧問は、最高機密情報取扱権限の身元調査の際、当局に偽情報を提出しました。

二女のティファニー氏は恩赦の対象に名前が挙がっていません。上の4人とは異なり、「灰色」ではないからでしょう。

では、身内と自分への恩赦は可能なのでしょうか。ビル・クリントン元大統領は01年、義弟のロジャー・クリントン・ジュニア氏に恩赦を出した例があります。

ただ、大統領が先を見越して自分に恩赦を出した前例はありません。しかも、トランプ大統領は自分に恩赦を与えた場合、罪を犯したと認めたことになります。

トランプ氏は自己恩赦を巡って最高裁に持ち込まれても、保守派が6人、リベラル派が3人なので、勝利できると計算しているフシがあります。それが現実になれば、エイミー・バレット判事を急いで最高裁に押し込んだ価値が出てきます。

恩赦を出すのはペンス

合衆国憲法修正第25条では、仮に大統領が空席となった場合、その権限は副大統領に帰属します。そこで、トランプ大統領は1月20日の大統領就任式までに辞任し、マイク・ペンス副大統領が大統領に就任して、恩赦を与えるシナリオを描くことができます。

ただ、仮にそうなった場合、ペンス氏は自身の政治生命を賭けることになります。共和党員が立ち上げた反トランプの「リンカーン・プロジェクト」及び「隠れバイデン」の支持者は、トランプ大統領に恩赦を与えたペンス副大統領を強く非難するに違いありません。ペンス氏は自ら再選の可能性を下げ、フォード元大統領と同じ轍を踏むでしょう。

従って、トランプ氏から恩赦を迫られた場合、ペンス氏がそれに応じるのか疑問があります。

いつ出馬宣言をするのか?

おそらくトランプ大統領は、恩赦と出馬の双方を達成できる可能性を探っています。自己恩赦は他力本願はでなく、しかもシンプルな点が、トランプ氏には魅力的に映っているのでしょう。同氏は自己恩赦を選択しても、24年の大統領選に出馬できると計算しているのかもしれません。

米政治メディア「ポリティコ」とモーニング・コンサルトによる共同世論調査(20年11月21~23日実施)によれば、「2024年の共和党大統領候補指名争いが今日行われたら、誰に投票しますか」という質問に対して、53%がトランプ大統領と回答しました。2位は12%のマイク・ペンス氏で、トランプ氏が41ポイントも引き離しました。

ちなみに、3位は8%のドナルド・トランプ・ジュニア氏でした。筆者はこれまでに中西部ミシガン州及び東部ペンシルべニア州などで開催されたトランプ集会に参加してきました。集会でジュニア氏が登壇すると、「2024年の大統領選に出馬しろ」という合唱が起こります。

となると、トランプ大統領には自分が出馬しない場合、長男のジュニア氏に全てを託して、恩赦を出してもらうという選択肢があります。

仮にトランプ大統領が出馬する場合、一体いつ出馬宣言を行うのでしょうか。言うまでもなく、トランプ氏はメディアの注目を最も集める日を出馬宣言に当てる公算が高いです。となると、バイデン氏の大統領就任式が候補に含まれているはずです。

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