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大学の人事とスケジュール(4)

たとえば「大学評価情報ポータル」というところから探すときちんと情報は出てくるのだが、話を簡単のために大学に限ると「認証評価機関」としては(財)大学基準協会、(独)大学評価・学位授与機構、(財)日本高等教育評価機構があり、それぞれが認証評価の結果についても公開している。ここでの問題はおそらく二つあり、第一はおそらく世間の方々が思っているよりは判定が緩やかであること(まあもちろん失敗しないように各大学が必死で準備してくるからではあるのだが)、第二はそもそもそこでこの種の情報が出ているということを普通の人もマスメディアもよく認識していないだろうという点にある。

第一の点について言うと、まずもってほとんどの大学の評価結果は「大学設置基準に適合している」というものである。大学基準協会・日本高等教育評価機構の評価を受けている私立大学には「保留」(基準を部分的に満たしていないので翌年再申請)になるケースがそれなりに見られるが、まあほとんどは「適合」である。「不認定」になっているような例というといま話題の創造学園大学(設置母体の経営破綻)とか、会社立ということで麗々しくスタートしたはずのLEC東京リーガルマインド大学(教員不足、施設未整備、財務監査未実施)、成美大学(学生不足、教員不足、財務脆弱、運営不安定)くらいだろうか。

おそらくではあるが、ここに挙がっている大学だけが一般の方々が考える「いらない大学」ではないだろう。教員のリストを見て「こんなものが本当に大学なのか」とか、崩壊寸前の定員充足率から「こんな大学が本当に必要なのか」と感じる大学がある人もいるだろうが、そういうところでも認証評価ではほとんどが「適合」判定になっているわけだ。「不認定」になっているのは上掲のような、もう本当に破綻しているかその寸前という例外的な事例のみなのである。審査がザルなのではないかとか、大学関係者によるお手盛りではないかと疑うのであれば、この認証評価の方を問題にしたほうがいいのではないか。

しかしそれでも、一部の基準を満たしていないために「保留」とされている例はそれなりにある。新設時にはすべての基準を完全に満たしていないと開校が認められないわけだから、これらの大学の状態はそれより悪化しているとか、新設が認可された大学より悪いということになりそうである(実際には定員充足に関する基準などは新設時に適用されていない(しようがない)ので、単純にそうとばかりは決めつけられないが)。だがそれらの大学の名前が報道されているかとか、問題ある大学として広く認識されているかといえばおそらくそうではないだろう。リストを点検すれば、世間ではわりと名前が通っているが問題を指摘されている大学もあり、名前を聞いて「そんな大学あったの?」という感じになるが問題なく「適合」判定を受けている大学もある。我々の感覚と大学の実態というのは往々にしてズレているのだが、それが放置されたまま事態が進行しているわけだ。

* * *

付け加えて言うと、改革のシナリオが想定していた市場による選択が進んでいるかというとあまりそうではないだろう。一方では大学数が着々と増え・もう一方で少子化によって入学者のパイが減り続けている状況で、今年春には「全国の四年制私立大学の45.8%が今春、定員割れ」になり、50%未満になった大学も18校あったという(日本経済新聞)。それでもなお廃校・募集停止などの「退出」があまり進んでいない一因としてはいわゆる私学助成がもちろんあるのだが、前述の通り新設校は完成年度までのあいだ私学助成を受けることができない。私学助成は市場から選択されなくなった既存大学の延命には役立っても、新たに大学が増えることとは結び付いていないのである。(*)

(*) もちろん「将来的には助成が得られるだろう」という期待を新設校が持つことはあるだろうが、(通常)4年間支援なしで耐えたら・学生あたり年間学費の1/5程度の支援が得られるという見通しが投資としてそれほど得なものかどうか、考えるべきだろう。なお近年では、特に法科大学院への助成が象徴的だが、志願者が少ないとか入学者の集まらない大学への助成金を削減することによって市場からの退出を促進しようという政策が進められるようになっている。

もう一つ一部に疑っている方々がいるようなのは留学生だが、すでに書いたこともある通り、日本政府が学費を支援するいわゆる国費留学生の枠は既存の大手大学で奪い合いになっている状況であり、新設校がそれをあてにして開校できるような状況ではない(新設校はむしろ、これから実績を挙げて既存校の割り当てを奪わない限り枠がないという、既得権益に立ち向かう側にある)。私費留学生については犯罪や不法就労に走らない限りカネを持ってきて日本で使ってくれるありがたい方々であって問題にならない。

いやもちろんその犯罪や不法就労が問題なのだと有名な酒田短期大学の例などを挙げる方々がいるだろうが酒田短大は1966年設立で問題発覚当時すでに35年の歴史があり、新設校でもなんでもなかったわけである。というか新設校についてはビザの発給等についても入管当局が(単純な事務ミスの危険性も含め)それなりにチェックしているわけで、いきなり無茶なことができるはずもない。他方、その点で無茶をしないのであればコストパフォーマンスに敏感な私費留学生が新設校に殺到する理由もないわけで、やはりここでも新設校はそれまで関係と市場を築いてきた既存校に対抗しなくてはならないことになる。

* * *

まとめると、現在の大学のあり方に問題を感じる方々が多いのはわかるし、私自身も同様に感じている点はあるのだが、それらはほとんどが既存の・問題を抱えている大学に向けられるべき批判であって、それらと無縁な新設校(しかもたまたまある年度にある大臣のいる状況で認可申請をしたというだけの)に犠牲を負わせる理由にはならないということである。もう少しつづく。

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