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飲食店への時短営業要請はさらなる「密」を生むだけ?

11月28日からの20日間、東京都は新型コロナウイルスの感染防止対策として、東京23区と多摩地域にある酒を提供する飲食店・カラオケ店に対し、営業時間を22時まで短縮するよう要請を出しました。22時での閉店は、飲食店にどのような影響を与えるのでしょうか。渋谷にあるワインバー・BAR BOSSAの店主、林伸次さんの寄稿です。

Getty Images

新型コロナの影響で、渋谷の老舗も閉店

新型コロナの感染拡大が原因で閉店してしまった飲食店、あなたが住んでいる街、あなたが仕事で通っていた街にもたくさんあると思います。

僕がお店をやっている渋谷で、残念ながら閉店してしまってTwitterなどで話題になったのは、例えばこの2店です。

ひとつは道玄坂の上の方にあった「すし台所家 渋谷本店」という回転寿司のお店で、ちゃんとした板前さんがリーズナブルで美味しいお寿司を出すことで有名な渋谷の老舗でした。

もうひとつは、109のはす向かいの吉野家の裏手にあった、「Paris(パリ)」という喫茶店です。昔ながらの雰囲気が残る良い喫茶店で、スターバックスではなく、パリで打ち合わせするのがカッコいいとも言われていた、こちらも1975年から続く渋谷の名店でした。

どちらも薄利多売で、とにかくたくさんのお客様の来店が前提のお店だったので、コロナが収束したらお客様は戻ってくるとはわかっていても、そこまで持たなくて、泣く泣く閉めたのでしょう。

僕は京王井の頭線沿線に住んでいるのですが、自宅の近くで、新型コロナの影響で閉めたお店で印象的だったのは、老舗のお蕎麦屋さん2軒でした。どちらも、蕎麦だけではなく、カレーライスやカツ丼もあるような、地元の人に親しまれていた昔ながらの蕎麦屋でした。昼は近所の会社員がランチで利用して、夜はファミリー層がお食事に使うという感じのお店です。

やっぱりこちらも、近所の会社のサラリーマンがリモートワークで出社しなくなったのでランチ需要が減ったのと、近所のファミリー層が家族の子供や高齢者のことを考えて外食を控えた影響でしょう。こういう状況があと半年や1年間続くと考えたら、経営的に無理だと判断して閉めてしまったんだと想像します。

まあ、本当に仕方ないですよね。

Go To Eatよりも、「2000円の外食チケット」

そして「Go To Eat」です。Go To Eat、使いましたか? このキャンペーン、すごくわかりにくいですよね。もちろん、スマホやPCを使い慣れている若い層や、大手の飲食店の会社なら上手に利用したはずですが、先ほどの蕎麦屋のような個人の飲食店が上手に利用できたとは思えないんです。だいたい、飛び込み客の多い回転寿司や喫茶店が「ネット予約」って難しいです。

その上、鳥貴族で焼き鳥を1本だけ注文して後は何も注文しないで、その差額を稼ぐという人や、お客様が予約したかのように見せかけて、そのポイントを稼ぐ飲食店なんかも出ましたよね。やっぱりこういうシステムには「穴」があったのでしょう。

だったら、マスクや10万円支給のように、日本の全国民一人一人に「2000円の外食チケット」のようなものを配れば良かったのに、と僕は思いました。

世の中には「全く外食をしない人」って存在するんですね。そういう人たちが「せっかくだから」って、そのチケットを持って、近所のあの蕎麦屋に行ってみて、「久しぶりの家族の楽しい外食」を体験して、「コロナが終わったら、また行ってみようか」ってこともありえたと思うんです。

外食って映画館と同じで、「通うのが習慣」になると、何度も何度も行くようになるんです。だったら、外食に行き慣れている若い層がスマホで予約して利用できるGo To Eatよりも、全国民に2000円分チケットを支給した方が良かったような気がしました。

今回の時短営業要請はさらなる「密」を生むだけ?

さて、第3波と呼ばれるコロナがやってきました。今回の東京都の要請は「お酒を出しているお店は22時以降を休めば、1日2万円を支給」というものです。

他の飲食店と比べても、居酒屋という業態は忘年会シーズンの売上の割合が1年のうちでもっとも大きいそうです。確かに忘年会ってすごく儲かります。12月をずっと予約で団体さんが満席なんです。お一人様5000円で、200人来たら100万円っていう日が、12月の間、毎日ずっと続くわけです。すごく大きいですよね。もうチョコレート業界のヴァレンタインデー状態です。そこに居酒屋業界ってかけているんです。

さらに言うと、お店としては、18時に開店して、21時くらいまでのお客様がいて、「もう1回、24時までのお客様」を入れたいところなんです。そこを22時までと言われたら、最後のお客様たちが見込めなくなるので、相当の痛手だと思います。

そして僕が経営しているようなバー、あるいはカラオケなんかも、1次会で居酒屋で飲んだお客様が、22時以降に流れてくるお店なんです。みなさんもそうですよね。忘年会の後にカラオケに流れますよね。

ちなみに今回は「要請」なので、無視して営業するお店が結構たくさんあるんです。でも、うちのように22時まででその後は閉めるお店もたくさんあります。

こんなふうにお店の対応が揃わないとどうなるかおわかりですか? この時期にもやっぱり夜の街で飲みたい人たちはたくさんいるので、22時以降も営業しているお店に殺到してしまうんです。

今、渋谷でも22時以降に営業している飲食店はたくさんあるのですが、外から見ていると、すごく「密」です。まあ殺到しますから当然ですよね。

この様子を見るかぎり、どう考えても今回の要請によって「クラスター発生の可能性」は高まっていると思います。

もちろん22時以降に営業する飲食店の気持ちはすごくわかります。ここで儲からないと生き残れないですから。

東京都はもし本当に飲食店に時短営業をして欲しいのなら、もう少し高い金額を支給すればいいんです。前年の売上の3分の2を支給するから閉めてくださいと伝えたら、ほとんどのお店が閉めると思います。でも、1日2万円って無理です。2万円を20日分、40万円もらっても、東京の高い家賃はとてもじゃないけど払えません。そのあたりを東京都はどう考えているのでしょうか。

【お知らせ】
林伸次さんの新刊、『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』が発売中。

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