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女川原発再稼働 「福島の教訓」見つめ直せ

(リベラルタイム 2021年1月号掲載)

日本財団理事長 尾形武寿


東北電力女川原子力発電所二号機(同県女川町、石巻市)について宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、再稼働への同意を発表した。知事の再稼働同意は、東日本大震災(2011年)の被災地では初めて。防潮堤など安全対策工事が終わる22年以降の再稼働を目指すことになる。

東日本大震災では女川原発も高さ約13メートルの大津波に襲われた。幸い主要な原子力建屋が標高14.8メートルの高台にあり、東京電力福島第一原子力発電所のように、浸水で電源を失い原子炉を冷却できなくなる事態を免れた。

1968年の建設に際し当時、副社長だった故平井弥之助氏が高台への建設を強く主張したと伝えられている。平井氏は宮城県出身の技術者。平安時代前期に起きた貞観地震(869年)や慶長三陸地震(1611年)の研究を通じ大地震や津波の恐ろしさを熟知し大地震に耐えうる耐震・津波対策の重要性を唱えていた。

私は原発の再稼働に反対するつもりはない。温暖化が進み、「脱炭素化」の動きが国際社会に広がる中、菅義偉首相も2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を打ち出している。

電力の安定確保は国策の根幹である。目標を達成するには太陽光や風力など再生可能エネルギーの開発を急ぎ、一方で二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を活用するのが現実的な対応と考えるからだ。日本原子力産業協会がまとめた2019版「世界の原子力発電開発の動向」によると、世界で運転中の原子力発電所は計443基。福島原発事故以降も増え、中でも中国は計44基とアメリカ、フランスに次ぐ“原子力大国”となっている。途上国を中心に今後も増設される見通しだ。

そのためにも事故原因は何だったのか、未然に防ぐことはできたのか、徹底的に究明し、誰もが理解できる平易な言葉で説明される必要がある。その上で、現時点で考えられる厳しい安全基準を設け、これをクリアした施設に限り再稼働を認めるべきである。それが「福島の教訓」を世界に引き継ぐことになる。

国や東電がこの責任を十分、果たしているとは、どうしても思えない。例えば事故原因について今も「想定外」という言葉を聞く。女川原発を引き合いに出せば、歴史に残る地震を教訓に大津波到来の危険を「想定」し、原子炉建屋を高台に建設したが故に難を免れた。同じ教訓は隣県・福島でも当然、共有できたはずである。となれば、想定外の説明は「想定できたのに想定しなかった」ということにしか受け取れない。

東日本大震災から間もなく十年を迎える。石巻市は私の故郷である。復興支援に向け震災数日後、何とかたどり着いた石巻や女川は大津波で瓦礫の山と化していた。あまりに悲惨な光景は今も脳裏に焼き付いて離れない。

原発事故の被災地では、多くの人が未だに住み慣れた土地に帰還できず、避難生活を余儀なくされている。原発リスクを懸念する声は今も強く、そうした不安が復興を余計、遅らせている。

民間シンクタンク「日本経済研究センター」(東京・千代田区)が昨年、まとめた廃炉や汚染水処理、除染、賠償など福島原発事故対応費は最大で総額81兆円に上ると試算されている。16年に経済産業省が公表した約22兆円の試算と大きくかけ離れているのは、なお先が見えない課題が山積している証拠であろう。

人類は今後も原子力と対峙していくことになる。そのためにも福島原発事故の教訓は後世に引き継がれなければならない。女川原発を巡るニュースに接し、そんな思いを改めて強くしている。

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