「こんまり」こと近藤麻理恵さんは、「片づけコンサルタント」として世界で最も知られる日本人の一人になった。その大成功を引き寄せたのが、夫でプロデューサーの川原卓巳さんだ。川原さんは「自分らしさを見つけ、生かせる場所に移動し続けることが、成功を引き寄せた」という――。
廃墟のようなボロアパート暮らしが一変した
2019年9月、僕はロサンゼルスで、レッドカーペットの上を歩いていました。
隣にいるのは、公私共にパートナーである「こんまり」こと、近藤麻理恵。僕がプロデューサーとして関わったNetflixの冠番組「Tidying Up with Marie Kondo」が、テレビ番組のアカデミー賞ともいわれる「エミー賞」に2部門でノミネートされたのです。
こんなに華やかなステージに立つ自分の姿を、10年前の僕が知ったら、どんなに驚くことでしょう。
およそ10年前の2010年頃、僕は廃墟のようなボロアパートの狭い部屋で、ひとり途方に暮れていました。当時勤めていた会社では、朝から晩まで働いていました。営業マンだったので見栄えだけは整えていましたが、実情はお金もなく、顧客のアポ取りが苦手だったので会社では電話をかけるふりばかりが、うまくなっていました。
左遷先の大阪では、家賃5万5000円のボロアパートに住み、御堂筋線沿いを、自転車で漕いで会社に向かう日々。とにかく現実逃避したくて、仕事終わりに誰かをつかまえては、立ち飲み屋で毎日くだを巻いていました。
完全に自分を見失っていた僕は、ストレスで、朝起き上がることができなくなり、とうとう会社にも行けなくなりました。それくらい仕事がうまく行かず、落ち込んでいたのです。
「こんまり」から学んだ“自分らしさを見つける方法”
そんな僕が、今では近藤麻理恵を、世界で最も有名な日本人の一人にした仕掛け人として、世界中のヒト・モノ・サービス・街づくりなどのプロデュースに関わるようになっていました。
麻理恵さんが書いて、2010年に出版された『人生がときめく片づけの魔法』は、現在42カ国で展開され、1200万部を超える世界的な大ベストセラーとなりました。2015年には、女優のエマ・ワトソンさんやウォルトディズニー社長のボブ・アイガーと並び、TIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選出。そして2019年、Netflixで冠番組「Tidying Up with Marie Kondo」が配信されました。同年には、Netflixの「世界一観られたドキュメンタリー番組」に選ばれ、先述の通り、エミー賞にノミネートされたのです。
一体、僕に何があったのでしょうか。
転機のポイントは、「自分らしさを知ったこと」、そして「自分らしさを活かせる場所に移動したこと」にありました。僕と麻理恵さん。二人が日本を飛び出し、世界を舞台に活動する道のりで気づいた、「自分らしさを見つける5つのポイント」についてお伝えさせてください。
ポイント①自分らしく輝ける場所に移動しよう
あなたは今までに、転職や独立を考えたことはありますか。まさに今、考えている方もいらっしゃるかもしれません。
転職や独立を相談すると、同僚や仲間たちから、こんな言葉が返ってくることがあります。「今いる場所で成果が出せないなら、どこに行っても同じで通用しない。だからまずは今の場所で頑張れ」と。
もちろん、大切なあなたを想ってのアドバイスでしょう。ですが僕は、必ずしもそうじゃないと思います。なぜなら、僕自身がそうではないと痛感しているから。
冒頭でお伝えしたように、僕は会社員時代、会社でまったく成果を出せずにいました。そんなときに学生時代からの友人だった麻理恵さんと再会し、彼女の仕事をボランティアで手伝うようになっていきます。すると、麻理恵さんのビジネスは、不思議とうまくいくようになったのです。
僕は驚きました。同じ人間が同じことをしているのに、片方ではダメダメで、もう片方ではぐんぐんと成果が出る。自分の能力を使う場所を変えるだけで、こんなに変わるのか、と。
人間には誰しも向き・不向きがあります。強みもあれば、弱みもある。時代の流れに合う・合わないという事情もあるでしょう。だからこそ自分を知り、自分を活かせる環境へ行くことが大切なのです。
環境を変えることは、決して「逃げ」ではありません。あなたが今いる場所で輝けているなら、それは素晴らしいことだと思います。けれど、もし今いる場所に少しでも違和感があるのなら、あなたがもっと自分らしく輝ける場所に、自分から移動していきましょう。
ポイント②ネガティブな感情にこそ、自分らしさが隠れている
自分らしい姿のまま活躍している人の多くは、実は「ネガティブからくる自分らしさ」で突き抜けていたりします。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999
そして、麻理恵さんもその一人なのです。彼女は、5歳の頃から片づけに興味を持っていたそうです。その理由の一つが「家事の中で片づけだけがうまくできなかったから」。結果、リバウンドしない片づけ術を何年も何年も研究し続けることになりました。苦手だから、克服しようと研究を重ねたら、気がついたら突き抜けていた。きっとなかなかうまくできなかったからこそ、片づけられた時のよろこびも何倍も大きかったのだと思います。
そのメソッドと感動をそのままほかの人にも伝えていたら、気がついたら「片づけコンサルタント」として世界で活躍するようになりました。
書道家として活躍している武田双雲さんも、今では『ポジティブの教科書』を出版されているほどポジティブの象徴となっていますが、もともとは精神的な浮き沈みが激しかったそうです。落ち込みやすく、傷つきやすいからこそ、「ポジティブな自分でいるためにはどうしたらいいのか?」と人一倍考えた結果、ポジティブの教科書が書けるくらいのノウハウや考え方が構築されたのです。
そしてかく言う僕も、コミュニケーションが得意になったきっかけは、人からの評価が怖かったから。僕の父は海上自衛隊の自衛官で、とにかく厳しい人でした。ご飯を食べるときに米粒を一つでも落としたら、そこでご飯は終了。そんな厳格な父のもとで育てられ、いつの間にか「ちゃんとしなければ」と人の目を気にするあまり、コミュニケーション術や人を見る目が養われていったのです。
つまり、みんな今、得意としているスキルは、さかのぼれば実はネガティブな部分からスタートしている。「苦手なんだけれど、どうしても解決したいこと」には、実は才能のタネが隠されている。そう前向きに受け止めてみたら、自分の欠点も大切に思えるようになるはずです。
ポイント③「苦手なこと」を手放すと最強
「今はSNSでマーケティングする時代だから、絶対にやったほうがいい」
そう言われていますが、もしあなたの心がまったく動かないのであれば、やめた方がいいと思います。
だって、話すのが苦手な人がYouTuberを目指したり、写真に興味がないのにInstagramのフォロワーを増やすことにこだわったり、不特定多数の人とのコミュニケーションが嫌いなのにTwitterをはじめてみたりしても、効果が出るとは思えませんよね。
全部、辛くないですか?
大切なのは、「流行っていること」を実践することよりも、「自分が好きだと思えること」「苦痛に感じずに続けられること」を選ぶこと。
たとえば麻理恵さんは、今でこそテレビにも出演していますが、もとは人前で話すことがあまり得意ではありませんでした。一方で、文章を書くことは好きなので、ブログや本を中心にテキストベースの情報発信することからスタートしていったのです。
対して僕は話すことは大好きだけれど、文章を書くことはあまり得意ではありません。そのため講演会や音声メディア「Voicy」などで情報発信をしています。今回出版する著書『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』(ダイヤモンド社)の制作も、ライターさんに手伝っていただきました。
苦手なことは思い切って手放すこと。そうすれば、より自分の得意なことを活かして輝けます。