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曲がり角にきた法科大学院制度の問題点

法科大学院はいらないのではないか、という声が弁護士の間で高まりつつある。

法曹の質を高めるためには大学や大学院における教育を重視すべきであり、一回の司法試験の一発勝負で合否を決めるようになると予備校に学生が流れ大学の授業が疎かになる。

社会のニーズに応える法曹を大量に養成していくためには、金太郎飴みたいな模範答案丸暗記の、自分の頭で物を考えない学生を生み出す予備校は出来るだけ無くし、法曹養成に特化した法科大学院でじっくりと学ばせる必要がある。

そうすることによって医者や科学技術者、弁理士、税理士、企業の法務部門担当者、公務員など多様な社会経験のある人たちが法曹になる道が拡がり、法曹界に多様な人材が流入し、結果的に社会の隅々にまで法の支配が行き渡り、同時に日本が変動極まりない国際社会において先進諸国とも伍していける基盤を作ることが出来るようになる。

そういう理想を掲げて法科大学院を設立した。

法科大学院を終了することを司法試験受験の要件としたから、法学部を抱える大学は競って法科大学院の設立に走った。

既に少子化が始まっていたわが国ではどんどん大学への入学者の実数が減少し、いずれ法科大学院がない大学の法学部には学生が来なくなるのは必定だったから大学側が生き残りのために法科大学院の設立に走ったのは自然の流れであった。

法科大学院修了者の7割程度は司法試験に合格するというのが謳い文句の制度設計だったから、一時的にワッと人気が沸騰し、多くの若者が法科大学院への進学を希望した。

法科大学院を終了して司法試験に合格しないと司法修習生にはなれないので、一部の新しい法科大学院側は、弁護士資格のある予備校の教師など司法試験向けの人材を実務家教員として採用し、本来の法科大学院の教育に併行して司法試験の受験指導も行ったようである。

司法試験対策としては、旧来の大学の先生方よりも予備校の先生の方が教え方が上手だということが現場ではよく分かっていた。

司法試験合格を目標にするようになるとどうしても法科大学院自体が予備校化していく。学問の研究を優先する学究的な学者にはこれが耐えられなかったようである。既存の大学教授が支配する教授会では予備校出身者は如何にもよそ者、異星人、異端者のような扱いを受ける。学生の人気は高いが、法科大学院の中ではどんどんジレンマが高まっていたようだ。

文部科学省が司法試験受験に特化したような教育を実施している法科大学院にイエローカードを出し、ついにはレッドカードを切るようになったから、法科大学院から司法試験の受験に特化したカリキュラムや司法試験受験生のバックアップ体制が徐々に消失し、ついに法科大学院に学生の間で評価の高かった予備校の教師経験者の実務家教員の居場所がなくなってきたようだ。

現在の法科大学院はある種の悪循環に陥っているようだ。

合格者の枠を大幅に増員したに関わらず、現在の司法試験に合格するだけの力を養成するような仕組みになっていない。司法試験に合格して法曹資格を取得させることを教育の目標に掲げることが出来ず、司法試験受験の資格を得るための法務博士を養成する制度に留まっている。

高い学費を払って法科大学院に進学し、真面目に法科大学院の授業を受けたととしても、それだけでは相変わらず司法試験に合格できる実力を養成できないということだ。これは一種の詐欺ではないか、という声が上がっている。

法務博士の社会的地位が高くなればそれはそれでいいのだが、現実はそうはなっていない。法科大学院制度を廃止して昔の司法試験制度に戻すべきであるという声が古手の弁護士の間からも若い弁護士の間からも湧き出している。

こういう問題がある、ということをとりあえず皆さんにお知らせしておく。

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