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「強すぎる性欲は精神科で治すことができるのか?」精神科医が渡部建会見を徹底分析 -「文春オンライン」特集班

 12月3日、複数女性との不倫発覚によって活動自粛していたお笑いコンビ、アンジャッシュ・渡部建(48)の謝罪会見が行われた。

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謝罪会見は100分間に及んだ ©文藝春秋 撮影・吉田暁史

 多目的トイレを使用した複数女性との不倫騒動から半年。黒のスーツに黒のネクタイを締めて、久々に公の場に姿を見せた渡部の表情は硬く、顔もやつれていた。19時から始まった会見では、冒頭で「本当に申し訳ございませんでした」と、10秒以上頭を下げた。その後、両脇をレポーターに囲まれ、矢継ぎ早に質問を浴びせられた。罵声、失笑、怒声を浴びながら、渡部は「本当に最低の行動だった」「精神科でカウンセリングを受けた」「これからの生き方で信頼を回復していきたい」と約100分に渡り、終始釈明に追われた。

 この会見での様子を分析するのは『自己愛モンスター「認められたい」という病』(ポプラ新書)や『オレ様化する人たち あなたの隣の傲慢症候群』(朝日新聞出版)などの著者で知られる精神科医の片田珠美氏だ。片田氏は渡部の不倫騒動当時、「文春オンライン」の取材にこう答えている。

「なぜ、多目的トイレだったのか?」渡部の答えは…

「渡部さんをめぐる一連の報道を見ていて、『自己愛性パーソナリティ障害』と呼べるほど自己愛が強いのではないかと思いました。自己愛性パーソナリティ障害の人は自己愛が人一倍強く、限りない成功の空想にとらわれています。そのため、自分が優れていると認められ、賞賛されることを常に求めます。当然、傲慢な印象を周囲に与えやすく、対人関係がうまくいかず、ときには仕事に支障をきたすこともあります。自己愛性パーソナリティ障害の傾向が認められる人は、人口の約0.5%に上るといわれています。200人に1人の割合で存在するので、そう珍しくはありません」

 そして今回の会見で、片田氏が一番印象に残ったのは、女性リポーターが「なぜ、多目的トイレだったのか?」「不倫相手は何人いたのか?」という厳しい質問をしたときに返したあいまいな答えだったという。

「渡部さんは『えーと』、『本当に』、『そうですよね』といったような言葉を並べていました。しどろもどろで、目がきょろきょろして泳いでいるように見えました。これは、もちろん緊張していたからでしょうが、自己愛性パーソナリティ障害の『過剰警戒型』の人にしばしば認められる特徴です。

不倫騒動発覚までの渡部は「無自覚型」

 自己愛性パーソナリティ障害は『無自覚型』と『過剰警戒型』の2つのタイプに分けることができます。『無自覚型』は、自分が傲慢な態度をとっていることに無自覚で、欲望を満たすために他人を道具として利用するふるまいや他人を傷つける言動を平気で繰り返します。多目的トイレで“行為”をして、1万円を渡すといった不倫騒動発覚までの渡部さんの行動は、まさにこのタイプです。

 一方で、『過剰警戒型』は、自己愛が傷つくことを過度に恐れて、周りから批判されないように徹底的に自己を防衛しようとする傾向があります。何を聞かれても先回りして『私が悪かった』『すみませんでした』と平謝りして、それ以上の追及を封じようとする。

『無自覚型』と『過剰警戒型』は、何とかして自己愛を守ろうとする点では共通しており、やり方が違うだけです。『無自覚型』は、自分がいかにスゴイかを相手に印象づけようとすると同時に、他人の反応を遮断して、自己愛が傷つかないようにする。一方、『過剰警戒型』は、文字通り過剰に警戒することによって、自己愛が傷つく状況を避けようとする。

 当然、『無自覚型』と『過剰警戒型』が同一人物の中に同居していることもあれば、時の流れとともに『無自覚型』から『過剰警戒型』へと移行することもあります。報道によれば以前の渡部さんは、プロデューサーや大物芸人などの反応は過敏ともいえるほど気にしていたのに、アシスタントディレクターや後輩芸人などの反応は鈍感ともいえるほど意に介さなかったようです。これは、2つのタイプを相手によって使い分けながら、自己愛の傷つきから身を守ろうとしたからでしょう。

 また、不倫発覚前の渡部さんは、どちらかといえば『無自覚型』優位のように見えましたが、不倫報道によって活動自粛に追い込まれ、自己愛が傷ついたせいか、『過剰警戒型』優位になったことが、謝罪会見からうかがえました。

 渡部さんを見ればわかるように、『無自覚型』と『過剰警戒型』は表裏一体、もしくは同じ軸の両端とみなすことができます。いずれも、その根底に潜んでいるのは、傷つきやすい自己愛なのです」

渡部も伊藤健太郎と同じく「快感原則」が上回った?

 さらに今回の謝罪会見では、スキャンダルが発覚してから6カ月以上経ったのちに行われたことにも批判が集中した。

「渡部さんは、なぜ会見が今になったかという質問に対して、『まず家族と向き合う時間が必要だった』『文春からインタビューのオファーがあり、すべて答えて謝罪することで収束するのでは、と。今思えば大変甘い判断だった』と答えていました。これは以前、俳優の伊藤健太郎さんがひき逃げ事件を起こした時にもお話ししたんですけど、渡部さんもまた、『快感原則』が『現実原則』を上回ってしまったのだと思います。人間には本質的に不快なものを避け、快適なものを求める傾向があります。これが『快感原則』と呼ばれるものですが、しかし、成長するにつれて、ただ『快感原則』に従って行動するだけだと『痛い目に合う』ことを学びます。そして、嫌なことや面倒くさいことでも、それをしなければ一層厄介なことになるので、そういう事態を防ぐためにはやらなければならないと思い知らされるわけで、これが『現実原則』です。

『現実原則』に基づいてしっかり状況判断できていれば、まず会見を開くことができたはずです。そうすれば、一時的には嫌な思いをしても、これほどまでのバッシングにさらされることはなかった。渡部さんは、とにかく自己愛が傷つくことを避けようとするあまり目先の楽な道を選んだばかりに、かえって事を大きくする結果を招いてしまったのです」

渡部は「性依存症ではない」と述べたが……

 会見では渡部に対して、性依存症になっているのではないかという質問も投じられた。これに対して「別のことで精神科に伺うことがあり、カウンセリングを受けた。僕が言っても説得力はないですが、(性的な)依存症ではないと言われました」と語ったが……。

「自己愛が強い人はひとたび、プライドが傷つくような出来事に出会うとものすごく落ち込みます。ちょっと鬱みたいになることさえある。まず、眠れなくなり、食欲が低下します。その結果、体重もどんどん減っていき、それで(医師に)相談に行かれたんじゃないかと思います。渡部さんの主治医は『性依存症ではない』と断言したそうですが、性依存かどうかはともかく、その性欲の並々ならぬ強さは間違いないでしょう。複数人と性的関係にあっただけでなく、乱交パーティに参加したり、多目的トイレで性行為にふけったりするなど、旺盛な性欲に驚いた人も多いと思います。

不倫を繰り返す人たちの「特性」

『サチリアージス』という医学用語があります。男性の異常な性欲亢進を指す言葉ですが、『サチリアージス』自体が治療の対象になることはほとんどありません。性欲の強い弱いは、体質に起因するものであり、それがどこまで許容されるかは環境にもよるからです。

 ただ、統計的にいって、不倫を繰り返す男性の中に、『サチリアージス』の人が多いのは事実です。ですから、私は残念ながら、渡部さんはまた同じ過ちを繰り返す可能性が高いと考えます。

 かつて芸能の世界には『遊びは芸の肥やし』『浮気はダメだけど、浮“体”はいい』という言葉があったように、天才的な芸人には、自己愛性パーソナリティ障害とサチリアージスを兼ね備えた方が多かったように思います。渡部さんもひと昔前まではそれで許されたのでしょうが、今は時代が違います。ご自身がなさったことについて、快感原則に流されることなく、真摯に向き合うことが改めて求められている。この会見で明らかになったのはそういうことだろうと思います」

宮崎謙介氏も「生まれ変わって出直したい」と言っていた

 元国会議員の宮崎謙介氏はこの11月、「4年ぶり2度目」の不倫騒動が発覚し、テレビの生放送で「もう一度、信頼しようとした知人、一般の方の信頼を裏切ってしまった。申し訳ありません」と謝罪した。コメントを求められた元国会議員の杉村太蔵氏は「宮崎さんほど全身の毛穴から、ほとばしるほどの性欲のある方はいませんよ」とコメントした。片田氏によれば、「宮崎さんも『サチリアージス』の可能性が高い」という。

 振り返れば、宮崎氏は4年前、議員辞職会見でハッキリとこう述べていた。

「子供のために、私は生まれ変わって、もう二度と、これから同じ過ちは絶対に繰り返してはならないのだと。父として、父として出直していきたいと思います」

 宮崎の轍を踏まず、渡部は「快感原則」に打ち勝てるのか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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