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20代女子陸上選手が告発する“性的被害”「DMで男性局部の写真が…」「体液を出してる写真を…」 - 兼村 優希

 純粋に競技に打ち込んでいるアスリートが、性的な視線にさらされ、嫌がらせを受ける。胸や下半身をクローズアップした写真をネットで拡散されるのはざらで、時には自分の写真に体液をかけたような画像を送りつけられることも。SNSの普及で、被害は今や中高生にまで及ぶという。

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 事態を重く見た、JOC(公益財団法⼈⽇本オリンピック委員会)をはじめとするスポーツ関連団体も、「アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みについて」という文書を発表し、性的目的のSNS投稿やWEB掲載の情報提供を求める報告フォームをHPに設置するなど、本格的な対策に乗り出した。


©️iStock.com ※写真はイメージです

 この動きのきっかけとなったのが、20代の女子陸上選手、ハナさんとカオルさん(いずれも仮名)が今夏、日本陸上競技連盟(陸連)に相談を寄せたことだ。2人ともツイッターのアカウントを持ち、性的な画像を送られるなどの被害に遭ってきた。2人に性的被害の実態や撲滅への思いを聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)

◆◆◆

ツイッターのダイレクトメッセージで性的な画像

――おふたりはこれまで、どのような被害を受けてきたのでしょうか。

ハナ 大学生の時に、目の前の観客席に座っていた人が、私のおしりをどアップで写していて、そういう人もいるんだと知りました。年々、性的な言葉を書かれてネットに載せられている自分の写真を目にすることが増えたり、性的な画像をツイッターのダイレクトメッセージ(DM)で送られたりっていうのがありました。

カオル 私も同じように、写真にひわいな言葉を付けてアップされていたり、直接DMで、男性の局部の写真が送られてきたりしました。あとは、私の写真に体液を出してる画像を送ってくることもありましたね。

――体液って、写真を印刷したものにかけているんですか?

ハナ それは私です。

カオル 私の場合は、携帯の画面に自分の写真が写っていて、そこにかけていました。

――DMだと、警戒していても見てしまう。

カオル 普段やりとりをしていない人だと、画像を開いてみるまで何が送られてきたのか分からなくて。純粋に応援してくれて、“私の名前を書道で書きました”といった画像を送ってくれる方もいます。その違いが分からないので、開いてみるしかないんです。ただ、画像を送ってくる人はだいたい警戒して見ます。

ハナ 私はフォローされたら、どういう人か気になるので、その人のページを一回見に行くんです。けれど、結構怪しい雰囲気の名前の人のページを見に行ったら、一番上に私の写真に体液をかけてる画像が載っていて、見てしまいました。うわぁ……と不快に思いました。

成績を残して知名度が上がったら被害が増えた

――他の選手も似たような被害を受けているのでしょうか?

ハナ SNSを見ていたら、「この人の被害はたぶんひどいだろうな」っていう選手、いますね。出されている写真の数が圧倒的に多いとか。

カオル ほぼ裸のように、加工されている画像も結構見ますね。

――そういう被害は、トップ選手が多いんですか?

2人 そうでもありません。

ハナ 性的なハラスメントをする方は、SNSで陸上してる人を探して、自分の好みの子を写真加工したりとかする場合が多いです。だから、中高生でもユニフォーム姿の写真を載せていれば、被害に遭っていることもあります。

――今は、高校生でもツイッターをやっている選手が多いですから、軽はずみに載せた写真を悪用される場合もあるということですね。カオルさんは、全国大会で成績を残すようになって、被害が増えたんですよね。

カオル 高校の時は、部活でSNSが禁止されていたので、アカウントにカギをかけて登録していたんです。その後、大学に入って、カギを取ってやり始めて。少しずつ成績が良くなって、名前が出るようになってから、そういう被害が増えてきた感じです。被害を見たことはあったけど、まさか自分がそうされる側になるとは思わなかったですし、直接写真を送ってくる人もいることに驚いて……。成績を残して知名度が上がったのはうれしいけど、そういう目で見る人も増えていくんだって、なんか複雑な気持ちでした。

――どう対応したらいいか、分からなかったのでは。

カオル そうですね。誰に言っていいのかも分からないし、デリケートな部分だから、友達にも相談できませんでした。自分で対処といっても、DMを消したり、ブロックするくらいしかできなかったんですけど。

ハナ 私は放置してました。地元が田舎だから、高校まではそういう被害がおそらく少なかったんですよね。やっぱり関東辺りの選手の方が被害も多いです。でも大学に入って、全く試合に出てないような後輩の、高校生の時の写真が出回っていたのを見て、自分に来てもおかしくないな……とは感じていました。ブロックをしても、他のアカウントを作って復活してしまうので、ミュートにして無視していました。さすがに体液をかけられている画像を見るのは、ちょっと落ち込むというか、「気持ち悪い!」ってなりましたけど。「こんなの公に出すことじゃないでしょ?」と思いました。

「大人の力を借りた方がいいよね」とアスリート委員長に相談

――これまで我慢していた被害について、声を上げようと、前に進んだきっかけは何だったんですか?

カオル 前からこういう問題はたくさんありましたが、今って昔よりSNSが主流になってきて、被害が浮き彫りになっていると思うんです。目に付くことが多くなってきました。それで我慢できなくなって……。

ハナ もう私たちだけの問題ではないなと思って。大人の力を借りた方がよいと考えて、アスリート委員会の高平(慎士)委員長に相談しました。

――7月のなかばに相談に行き、事態は動き始めました。

ハナ 私はまず、法的に対処できるのかを、弁護士さんに聞きたかったんですね。高平さんに陸連の弁護士さんを紹介してもらって、警察にも相談に行きましたた。バレーや水泳、体操などの他の競技での被害も包括して対処しようという感じになって。今はJOCのところまで上がり、私たちの手からは離れていった、という感じですね。

――中高生に被害が広がっていることも、声を上げる後押しになったんでしょうか?

カオル 将来、陸上をする子たちが、もっと快適に競技できるようにするにはどうすればいいか。中高生だとSNSの怖さまで考えが及ばないかもしれない。私自身、何の気なしに更衣室で写真を撮っていたこともあったから。そういう写真をSNSに上げると悪用されるかもしれないよって知ってもらいたかったという思いもありました。

11月、JOCが被害撲滅を訴える声明文を公開

――ツイッターにはバッシングも来たそうですね。

カオル 「男性はそういう風に見るから、仕方ない」、「それなら、アカウントにカギを付けるなり、SNSをやめろ。見なきゃいいんだ」とか。結構来ましたね。でも、私たちだけの問題で声をあげたわけではなかったので。根本の問題を解決したいから話してるのに、全て私に対して言ってくる。でも、分かってくれる人にはきっと届くし、それで私のファンじゃなくなるんだったら、別にそれは構わないと覚悟しました。

――JOCは11月13日、日本中学校体育連盟や全国高等学校体育連盟などスポーツを統括する6団体と連名で、「アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為です」と、被害撲滅を訴える声明文を出しました。

カオル 今やっと動いてくれるということに対してはうれしいです。これからが大事だなと思います。

ハナ 私も同感です。たぶん、陸連やJOCの中でも、そういう被害を知らない人って結構いたと思うんです。きちんと形になったのはよかったですが、これから先どうやって進めていくのかという不安は、結構ありますよね。法改正までしないとなかなか取り締まるのは難しいとも言われますが、そんな状態でほんとうに解決するの? とか、変わらなかった場合はどうなるの? という不安もあるので……。どっちもありますね。うれしさと、不安が。(続きを読む)

「露出度が高いユニフォームを着ていないと、誰も見てくれないよ」 それでも女性アスリートが“撮影禁止”を求めない理由 へ続く

(兼村 優希)

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