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【読書感想】「リスク」の食べ方

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「リスク」の食べ方: 食の安全・安心を考える (ちくま新書)

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内容(「BOOK」データベースより)

放射能に汚染された食品は危険。食中毒を引き起こすレバ刺しは禁止。食にはさまざまなリスクがあるが、食の絶対安全は可能だろうか?一方で、健康にいいからグルコサミンを摂取する、抗酸化物質を排除するといったブームもあるが、それは本当に効くのだろうか?本書では、危険であれば拒否し、効果があれば礼賛する状況に抗するため、それぞれの問題を丁寧に検証していく。「安全」「安心」はただでは手に入らない。


「レバ刺し」の禁止は、妥当な判断だったのかどうか?

著者は、感染症の専門家としての立場から、「レバ刺し(あるいは肉の生食)の安全性」を検証していきます。

読んでいて驚いたのは、食品の産地偽装とか、賞味期限偽装、食中毒などが頻繁に起こっているようにみえる「日本の食品」は、実は、「世界に誇れる安全性を保っている」ということでした。

 例えば、アメリカでは年間で国民6人に1人にあたる、4800万人もの食中毒が発生していると考えられています。年間12万8000人が入院し、毎年3000万人が死亡しています。そして、6万人以上の腸管出血性大腸菌O157:H7による食中毒が起きており(!)、年間2000人以上が入院(!)、20名の死者(!)が出ています。実は、これでもまた減ったほうで、アメリカでは1990年代に、毎年60名の方が腸管出血性大腸菌感染症のため亡くなっていました。

 先進国のアメリカにしてこうなのですから、途上国においては推して知るべしです。途上国に旅行した人の20~50%がなんらかの下痢症にかかるといます。


(註:上記引用部の「毎年3000人が死亡しています」が、僕の引用ミスで「毎年3000万人」になっていました。お詫びとともに訂正いたします。申し訳ありませんでした)

日本の食品は、衛生的すぎて、発展途上国に旅行すると、食中毒にかかってしまう日本人が多い、というくらいなのです。


今回、「レバ刺し」が槍玉に挙げられ、食べられなくなってしまったのですが、「なぜレバ刺しなのか?」僕もよくわからないまま、受け入れてしまっていたんですよね。


レバ刺しは、のどに詰まらせることがある餅などに較べたら、「嗜好品」に近い食べ物であることは事実です。

そして、「内臓の生食」というのは、けっこう危険なイメージがあるのですが、実態はどうかというと、

 2011年7月6日の厚労省の会議資料6によると、1998年から2010年までに生食用レバーを原因とする食中毒は116件でした、そのうち87件がカンピロバクター、20件が腸管出血性大腸菌が原因でした。つまり、牛レバーによる腸管出血性大腸菌感染症は13年間で20件(患者数67人)しかなかったのです。年間5人程度の発生で、死亡者はゼロです。

 ところが、同日の参考資料1では「牛レバーを原因とする腸管出血性大腸菌食中毒が多く発生して」と厚労省は書いています。年間5例、死亡者ゼロの食中毒のどこが多いの?とぼくなんかは思ってしまいます。

 もちろん、「多い」「少ない」は主観的な指標ですから、厚労省のステートメントが間違っているとはいえません。これも数字を扱う時にしばしば間違うところです。



僕はレバ刺しが、「けっこう好きだけど、無いと困るというようなものではない」ので、「まあ、しょうがないかな」というくらいの気持ちだったのですけど、この本を読むと、「これで禁止というのは、ちょっとおかしい話だよな」と思えてきました。

少なくとも「基礎疾患を持たない大人が、それほど大きくもないリスクを受け入れた上で食べるのは自由じゃないか」と。


「ゼロリスクの食物」を希求するのであれば、究極的には「何も食べない」しかない。

しかしながら、今の世の中では、「じゃあ、食べて何かあったら、お前が責任とってくれるんだろうな?」と言われてしまいがちなのも事実です。

でもまあ、そこで「文句言うのなら、何も食べるなよ、飢え死にしろ!」と捨て台詞を吐くのも、大人げない態度ではありますし、バッシングを受ける可能性は高いでしょう。

そのあたりの「何かあったら、責任をとらなければならない」というのが、結局、「食べてはいけないことにしよう」という決定の要因にもなっているのです。

「レバ刺し」なんていうのは、まさにその(ちゃんと気をつけてますよ、という世間へのアピールと、「食べられなくなっても、社会や産業が全体としてはそれほど大きなダメージを受けないもの」という「落としどころ」として禁止されたと言うべきなのかもしれません。


 だから、ぼくは旅行医学のプロとして、登山家に「リスクを最小限にする登山」を提案しますが、「リスクをゼロにするために山に登るな」とは言いません。そんなことをいうのは健康リスクのプロではなく、アマチュアのいうことだからです。


どんな小さなリスクに対しても「それなら何もするな」と言うのは「思考停止」であり、プロの立場ではない、ということなんですよね。

これは、僕としても耳に痛い。

「ぜったいに大丈夫なんでしょうね?」と問われたとき、「ぜったい、じゃないですけど……」と言ってしまうのだよなあ、やっぱり。

そこで、「このくらいのリスクがありますが、それを受け入れてやるかどうかは、あなたの判断です」「リスクを減らすには、こういう方法があります」と言うのが、「プロ」なんだよなあ。

たしかに「少しでも危ないことは、やるな」というだけなら、誰にでもできる。

ただ、こういう関係が成り立つには、アドバイスを受ける側にも「自分で判断する力」が必要なんですよね。

そして、人というのは、「そのくらいのリスクなら、やってみる」と考えてはじめたことでも、うまくいかなければ、「自分の判断の結果だから、しょうがない」とは、なかなか受け入れられないものではあります。

(僕自身もそうなので)

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