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Facebook開発者が「ヘロインに匹敵する」と語るスマホ中毒…原因はIT企業が仕掛けた罠だった 『スマホ脳』より - アンデシュ・ハンセン

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 教育大国で知られるスウェーデンで、若者たちの精神不調が急増している。10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者の割合はここ10年で倍増したというのだ。

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 同国内でその原因を示す警告の書として、社会現象となるほどの反響を呼んでいるのが、『スマホ脳』という本だ。著者は精神科医のアンデシュ・ハンセン氏。ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取得したという異色の経歴の持ち主だ。前作にあたる『一流の頭脳』は世界的ベストセラーになっている。

 急増する精神不調は、スマホの中毒性が一因になっていると本書は説く。一日に何時間も(時に10時間以上も)スマホに囚われた結果なのだ、と。

 むろん、スマホ利用者は世界中にいる。当然の帰結として、若者の精神的な不調は、日本を含め、世界中で爆発的に広がっているという。

 過去にもテレビやゲームの中毒性が問題になったことはあった。が、スマホのそれはより深刻であることを最新の研究は示している。なにせそのデバイス、あるいはアプリ、SNSの開発にあたっては、実際に脳科学者たちが動員されているのだ。つまりその中毒性は最初から仕組まれたものだということになる。ここでは『スマホ脳』(新潮社)より、スマホをめぐる恐るべき現実をご紹介しよう。

 ◇◇◇

 どうしてスマホがこれほど魅惑的な存在になったのか、その理由を知りたい場合には脳内のドーパミンに注目するといい。ドーパミンはよく「快楽」を感じたときに分泌される報酬物質と言われるが、実はそれだけではない。ドーパミンの最も重要な役目は私たちを元気にすることではなく、何に集中するかを選択させることだ。つまり、人間の原動力とも言える。


©iStock.com

「もしかしたら」がスマホを欲させる

 あなたの祖先が、たまにしか実のならない木の前に立っている姿を思い浮かべてほしい。実がなっているかどうかは地上からはわからないので、木に登らなくてはいけない。登ってみて何もなかったら、別の木にも登って探すことが大事だ。ハズレを引いてもあきらめない人は、そのうちに高カロリーの果実というごほうびをもらえる。それで生き延びる確率も高まる。

 自然の摂理は予言できないものが多い。たまにしか実がならない木がいい例だ。ごほうびがもらえるかどうかは事前にはわからない。不確かな結果でドーパミンの量が急増するのは、新しいものを前にしたときと同じ理屈なのだろう。報酬を得られるかどうかわからなくても、私たちは探し続ける。この衝動により、食料不足の世界に生きた祖先は、そこにある限られた資源を発見し活用してきたのだ。

さながらギャンブル依存症

 人類が狩猟生活を中心にしていた何万年も前から、人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛。現代ではそれが問題を引き起こしている。例えば、スロットマシーンやカジノテーブルから離れられなくなる。ギャンブルは長い目で見れば損をするとわかっていても、やってしまう。確かに、純粋な娯楽としての魅力はある。だが、適度な距離を取れずに、ギャンブル依存症になる人も確実にいる。脳の報酬システムが、不確かな結果にこんなにも報酬を与えてくれるのだから、ギャンブルの不確かさもとてつもなく魅力的に思えるはずだ。「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」そう考えるのだ。

 このメカニズムをうまく利用しているのは、ゲーム会社やカジノだけではない。チャットやメールの着信音が鳴るとスマホを手に取りたくなるのもそのせいなのだ。何か大事な連絡かもしれない──。たいていの場合、着信音が聞こえたときの方が、実際にメールやチャットを読んでいるときよりもドーパミンの量が増える。「大事かもしれない」ことに強い欲求を感じ、私たちは「ちょっと見てみるだけ」とスマホを手に取る。しかもこれを頻繁にやっている。起きている間じゅうずっと、10分おきに。

報酬中枢を煽るSNS

 ゲーム会社やスマホメーカー以外にも、不確かな結果への偏愛を巧みに利用している企業がある。それはソーシャルメディア、SNSだ。フェイスブック、インスタグラムやスナップチャットがスマホを手に取らせ、何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を起こさせる。その上、報酬システムがいちばん強く煽られている最中に、デジタルな承認欲求を満たしてくれるのだ。あなたの休暇の写真に「いいね」がつくのは、実は、誰かが「親指を立てたマーク」を押した瞬間ではないのだ。フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなごほうびへの期待値を最大限にもできる。

 SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを、ちゃんとわかっている。時間を問わずスマホを手に取りたくなるような、驚きの瞬間を創造する知識も持っている。「『いいね』が1個ついたかも? 見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」と同じメカニズムなのだ。

 このような企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇っている。そのアプリが極力効果的に脳の報酬システムを直撃し、最大限の依存性を実現するためにだ。金儲けという意味で言えば、私たちの脳のハッキングに成功したのは間違いない。

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