アフガニスタンで約30年にわたり医療活動や砂漠緑化に取り組んだNGO「ペシャワール会」(福岡市)の現地代表、中村哲医師(当時73)が、武装集団に殺害されてから、4日で1年になりました。
地元当局は、捜査を進めてきましたが、依然として真相解明には至っていません。長期にわたる貢献を評価されて、アフガンの名誉市民権を授与された中村医師の殺害に対して、当局は総力をあげて捜査を進めている、ということです。
中村さんは、医療者としてハンセン病の治療に当りながら、無医村の人たちを治療してきました。それだけでなく、農民たちが生きていくために、1400本の井戸を率先して堀り、砂漠化した農地に水路を作りました。
護岸は、コンクリートを使わず、鉄線で編んだ「蛇籠」に石を詰めて積み、そこに根を張る柳を植えて補強し、高価な資機材がなくても住民が用水路を維持・管理できるように、伝統的な技法を、中村さんは取り入れました。
私は、アフガンで治療を始めて間もない時期に、石松さんという助手と二人で診療をしている中村医師に、インタビューをしたことがあります。番組を提案しましたが通らず、休暇をとって知人の女医さんのもとに行き、アフガン難民キャンプを取材しに行った時でした。その情熱にうたれたことを思い出します。
取材の直後に解説委員になり、解説の30分枠の番組で放送しました。中村さんが作った、用水路は1万6500ヘクタールを潤し、植樹は120万本を超え、砂漠化した大地が緑に代わり、農民65万人がもどった、とのこと。
中村さんの遺志を引き継ぎ、現地のNGO「平和医療団・日本」を、日本からNGO「ペシャワール会」が支え、医療、灌漑、農業支援を続けていることに、救われる思いがします。
アフガンでも、中村医師の功績を語り継ごうという動きが数多くあり、NGO「ガフワラ」の設立者ザビーフ・マハディさん(32)は、絵本「カカ・ムラド(中村のおじさん)」を出版し、子どもたちに配布しているそうです。「中村記念公園」が作られたり、生まれた子どもに「ナカムラ」と名付ける親もいる、ということです。アフガンの人たちの中で、中村さんのことが語り継がれていくことは、うれしいことです。
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- 2020年12月05日 16:38