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感謝はすれども誹謗中傷はせず。新型コロナで医療従事者へ

 新型コロナの対応の最前線に立つ医療従事者への感謝の気持ちは広がっているが、誹謗中傷もおこなれている。 あってはならないことだ。



■住民が支援表明

 今年3月に病院内で新型コロナウイルス感染症の感染者(陽性者)のクラスターが発生した永寿総合病院(東京都台東区)を支援しようとクラウドファンディング が行われ、目標の2000万円を上まわる約4900万円が集まり病院の医師、職員へひとり5万円が支給された。

 クラウドファンディングを企画したのは、同病院で勤務した医師らによる「永寿総合病院を応援する会」。クラスターにより運営の危機となり満足に給与を払えない状況に加え、『家にも帰れずホテルに寝泊まりし、家族とも会うことができない中、懸命に医療に専念』している医療従事者を応援するためできること、少しでも対価を守りたいの思いから行われた。

 このことだけではなく4月4日には、「頑張れ、永寿病院 地元有志一同」の横断幕が掲げられ医療従事者の励みになり、この横断幕を見て、「まだ、私たちはここにいていいんだ」と思えた看護師もいたという(看護roo! 不安と、焦りと、もどかしさの中で…|クラスターを経験した永寿総合病院・看護師インタビュー/2020/09/29)。
さい)。

 新型コロナ感染症への対応の最前線にたち、人命を守る砦となるのが医療従事者だ。感謝の気持ちだけでなく、仕事に対する対価も必要で、他の医療機関でも同様だ。

 新型コロナの患者を受け入れると1つの病室に1人が原則のため、本来であれば4床、もしくは6床の部屋の稼働率が悪くなり経営が悪化するためだ。感染を恐れて病院に行かない人も増えた。

 現在では多少持ち直してきているとは思うが、6月の段階で『全国の3分の2の病院が赤字に転落している。とりわけ「東京都」に所在する病院では非常に厳しい状況にあり、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた病院の「9割」が赤字に陥っている―』と報道されている(医療系ニュースサイトGemMedより)。

 経営が厳しく、感染症への不安も残る、仕事もハードだ。そこに加えて、医療従事者への誹謗中傷が行われている。しかも、家族、子どもにまでもあるのだという。

■医療従事者への誹謗中傷

令和2年10月16日に内閣官房で開催された新型インフルエンザ等対策有識者会議の新型コロナウイルス感染症対策分科会「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ(第3回)の会議資料に三重県と相模原中央病院での事例が報告されている。

当日の資料から、相模原中央病院の職員が受けた内容が報告されていたので下記に医療従事者への事例を引用した。ご覧いただきたい。

◆幼稚園や保育園側から、送迎のために敷地内に入ることや「明日も預けるつもりですか?」と、登園自体を拒否され傷つきました。

◆職員の子どもが小学校で発熱したため引き取りに行 ったところ、校長室に呼び出され職場や自身のこと 等必要以上に事情聴取され、疲れ切ってしまった。な お、この職員のPCR検査は「陰性」と、報告済だった にも関わらずの聴取でした。

◆職員の子どもが、学校で「〇〇のお母さんはコロナが出た〇〇病院だ」と教室で言われ傷ついていましたが、当時誰にも言わず自分の胸に留めていました。

◆職員の子どもが、さも感染者の一人であるかのように、同級生母娘から毎日のように登校状況を観察されてました。

◆感染した職員の子どもの名前や学校名等、事実と異なる情報がSNS上で拡散されてしまいました。

◆職員の父親が、勤務先から自宅待機を命じられ、その間の給与は一銭も支給しないと言われました。

◆職員の子どもが、バイト先から出勤停止を強いられ、肩身の狭い思いをしました。

◆入院患者のご家族が、当院との関連性を指摘され勤務先から出勤を拒否されたと報告がありました。

◆友人や親族から、相模原中央病院を辞めるよう促されました。

◆散歩途中のご夫婦から、「(病院建物から)コロナが降ってきそうね」と言われました。

 三重県からの報告でも画像のように医療関係者への誹謗中傷があったと報告されていた。



 さらに、ネット上で以下の被害もあったと報告されている。

・SNS上で、感染者が発生したスポーツ教室の参加者が通う学校名や写真、複数の感染者が発生したと いう内容が拡散されているという電話連絡があり、不確かな情報に惑わされないように冷静な対応をする よう依頼した」

・退院した患者に関し、SNS上で自殺したとデマが出回ったため、(県の)別件での記者会見の際に否定 した。

・市内で感染者が確認され、公表された情報から感染者とは全く関係のない方が感染者であるという誤っ た情報がインターネット上の掲示板等で拡散され、その影響によりその方が営む商店への来客が大幅に 落ち込んだ。

・ インターネット上で実名や写真が拡散され、感染者や関係者が偏見・差別に苦しんだ事例が相次いで発生。また、事実とは異なる情報が流布し、風評被害により営業が困難となる事例もあった。

■誰にでも可能性はある

 相模原の例からは、政府及び関係機関へのお願いとして次のようにまとめている。

「新型コロナウイルスへの感染は、風邪をひくのと同様で誰にでも生じることです。スポーツ選手や有名芸能人の感染が明らかになると、報道も過熱します。
感染したことが悪いことで、お詫びすることについてもネガティブなイメージを作ってしまっています。
患者やその家族、治療・感染対策に携わった方々の人権が侵害されないよう、風評被害を受けないよう、必要な取組をお願いしたいと思います」
 お願いするされるまでもなく、行ってはならないことだ。マスコミだけではなく、市民一人一人が認識することだ。

 さて、 武蔵野市議会12月議会の一般質問でこの問題を取り上げていた議員があり、憂慮している旨の答弁が市長からあった。この武蔵野市でも現実に起きている問題ともなっている。

 以前、「新型コロナの感染者は逮捕しろ」というメーセージを受けたことを書いたが、陽性者の兄弟が通う学校でも対策をしろといった内容のメッセージが届いたこともある。このような内容は、匿名で投稿が出来るSNSでは顕著だ。

この時にも書いたが、自らも含めて誰でも起きる可能性があるものと考え誹謗中傷をすることはあってはならない。医療従事者だけではなく他のエッセンシャルワーカー、その家族も含めてなのはいうまでもない。

 医療従事者は万全の対応をしていたとしても感染するリスクはある。武蔵野市内だけでなくどこの医療機関でも同じだ。

 感染した、クラスターとなったことを誹謗中傷すること、不安を煽ることもあってはならない。心の傷は深く時間だけでは癒せないことも多い。人権の標語にもあるように、敵は人ではなくウイルスなのだ。あらためて認識したい。

【参考】 頑張れ、永寿総合病院:地域医療の砦を守ろう
新型インフルエンザ等対策有識者会議
 偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ資料は下部にあり

新型コロナの陽性者への誹謗中傷を防ぐ条例 そもそもで考える(2020年08月21日)

※写真は、台東区議の青柳雅之さん提供

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