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業界のリーダーが語ったeコマースのトレンドと戦略 まとめ

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エンジェル投資家のChris Dixson氏(以下ディクソン)が「E-commerce startups」という記事を投稿したところ、そのコメント欄で未来のeコマースについて非常に重要な意見交換が行われた。米Fab CEOのJason Goldberg氏や米Shoply CEOのLiad Shababo氏など、eコマース業界リーダーも議論に参加し、計117のコメントがつく賑わいだった。

以下に記事とコメント欄のキーポイントをまとめたので、eコマースを運営している(または検討している)起業家や企業の方はぜひ参考にしてほしい。

まず、記事の中でディクソンはeコマースの未来について重要なポイントをいくつか指摘した。特に、eコマース企業が米Amazonと差別化を図る方法について述べている点に注目してほしい。

  • 未来はオンラインコマース(eコマース)にあり、オフラインコマースは2つの目的でしか勝ち目がない。それは即時性(すぐに物が手に入る)と体験(実際に商品を触れるショールーム、魅力的な空間)である。

  • オフラインコマースの役割は、米Williams Sonoma(高級調理器具・雑貨の老舗)のような「ショールーム」と「エンターテイメント」の価値を提供すること。

  • 現在eコマース企業で成功しているところのほとんどは、フラッシュ・マーケティングや、ソーシャル・コマース、サブスクリプション・コマース、「コンテンツ+コマース」など、近年に出てきたモデルばかりだ(2000年初期から続いて成功しているeコマースはほとんどない)

  • eコマース成功の鍵となる方程式は「利益=生涯顧客価値-顧客獲得コスト」である。

  • UPCコード(米国やカナダで使用されている商品コードで、Universal Product Codeの略)がついている商品はAmazonで取引可能なので、いずれはAmazonの一人勝ちになるだろう。

  • eコマースビジネスを直接売り込むよりも、エコシステムの構築に貢献する方がチャンスが生まれる。特に、1) サプライチェーン改革 2) マーケットプレイス 3) 中小企業に対するeコマース・ソリューション 4) モバイルペイメント、の4点に力を入れる。

  • Amazonが優位を占める大規模な商品ラインアップによる総合販売との競争を避け戦略として、a) 中古商品 b) オリジナル商品 c)オリジナル商品のマーケットプレイス 、の3点が考えられる。

この記事に対して、読者がさまざまな視点から議論を交わした。以下は特に興味深いコメントの発言者別の要約である。

Fab CEOのJason Goldberg氏
  • iPad 所有者は非所有者より10倍の価値がある(平均購入金額が高い)

  • ソーシャルメディアを積極的に使う顧客はそうでない顧客と比べて3~4倍の価値がある。

  • Amazonは商店ではなく、世界的なサプライチェーンとロジスティックの会社である。

  • eコマースを成功させるには8つ方法がある:

    1. Amazonが取り扱ってない商品を売る(Fab商品の90%はAmazonが扱っていない)

    2. Amazonとの競争を避けるためには、買いたいものが明確に決まっていない人の購買意欲を高めることが重要なので「ディスカバリーエンジン」提供する(顧客の興味のありそうな情報を表示して潜在ニーズを掘り起こす)。Amazonは、欲しいものが何かわかっている人に商品を販売している。

    3. モバイルに対応する(デザインや機能)。Fab利用者の30-40%はモバイル経由(スマフォ・タブレット)の訪問である。この分野はいまだに成功例がないが、遅かれ早かれ対応すべきである。

    4. ソーシャル的要素を取り入れる(友人とのショッピング体験など)

    5. オフラインでのショッピングがそうであるように、買い物を通して純粋に楽しむことのできる体験をオンラインで提供する。

    6. 特定のデザイナーには熱狂的なファンがいるので、デザイナーが自分の商品を販売できるマーケットプレイスをつくる(Fabも積極的に取り組んでいて、現在までにデザイナーマーケットの足がかりを作っている)

    7. 米eBayのようなプラットフォームをつくる(Fabは現在挑戦中)

    8. ブランドを確立する。ブランドとは、単に取引するだけでなく感動的な経験をさせてくれるものだ。長く続くeコマースブランドを確立することが重要である。

The Gift Project 前CEO、現イスラエルeBayソーシャルセンター代表のRon Gura
  • Chrisはオフラインコマースの強みに「即時性」をあげたが、AmazonとeBayが即日配達を発表したため、即時性はもはやオフラインコマースだけの特権ではなくなるだろう。
For the Makers 共同創業者のKatie Covington氏
  • eコマースの未来は、オンラインとオフラインの革新的な融合にある(例:Chloe+Isabel, Warby Parker, Everlane, Stylemint

  • eコマースビジネス成功への必要条件(十分条件ではない)は、個性がありブランド化された素晴らしい体験とサービスの提供である。オンラインと実店舗で商品の販売を行うブランド価値の高い企業(特にAppleやTiffany & Co.,)のオンライン上でのブランディングを真似てみるといい。

Lightspeed Venture Partners マネージング・ディレクターのJeremy Liew氏 NEA アソシエイトのAmit Mukherjee氏
  • カスタマイズに特化したeコマースビジネスに慎重になるべきである。過去10年の間に cafe Press, Shutterfly, Vistaprint などが参入したが、どれも成功していない。顧客はカスタマイズを求めているのではなく、良いブランドとデザインを求めている。自分は何が欲しいのかを知りたがっている(NikeIDなどカスタマイズで成功した例外もある)
Paul Marsden氏
  • eコマースでお金を稼ぐためには、大企業が進出していない新興市場に目を向ける必要がある。

  • 価格競争やスケールメリット(規模の拡大によって生産性や経済効率が向上すること)が存在する市場では、その分野の専門知識、有益な援助、総合的な経験が成功への重要な要素である。

VoIP Supply CMOのGarrett Smith
  • 分野に特化した高い専門知識を顧客に与える(正しい商品知識、必要とされている情報を提供することで、顧客が調べる手間と時間を省く)

ここに注目

とても濃い議論で、一つ一つの項目が示唆に富んでいるが、僕が特に注目したのはFabのJasonが言っていた「iPad 所有者は非所有者より10倍の価値がある(平均購入金額が高い)」「ソーシャルメディアを積極的に使う顧客はそうでない顧客と比べて3~4倍の価値がある。」という部分。

「リピート顧客の価値は、新規顧客の◯倍」というのはよく語られた話だが、これからはデバイス別、オンライン行動の積極性も顧客価値に影響してくるということだ。

つまり、facebookのヘビーユーザーなら、顧客として獲得するために通常の3〜4倍のコストをかけても欲しい顧客である、と言える。これはいろいろなアイディアにつながる事実だ。(3〜4倍の価値があるかどうか、もう少し検証は必要かもしれない。)

議論の全体的な流れは「Amazonとどう住み分けるか」であり、eコマースをやる上では避けられない課題だ。これには我々ネットコンシェルジェも常に提唱している「唯一化」が欠かせない。このブログの他のエントリーも参考に、あなたのお店にしかない「唯一性」を見つけて欲しい。

著者プロフィール

尼口友厚 株式会社ネットコンシェルジェ 代表取締役社長
国内第一線のウェブコンサルティング会社(株)キノトロープで大手通販コスメ会社(現在は上場)のeコマース支援を行う。その後同社の支援を得てeコマース専門のプロデュース会社(株)ネットコンシェルジェを設立。2003年の設立以来、年商○00億円を超える超大手サイトから、スタートアップ企業のeコマース立ち上げまで、その実績は約8年間で125社に上る。

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