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「手取り14万円で贅沢出来ない…日本終わってますよね?」賃金が下がり続ける日本経済の意外な現状 『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』より #2 - 加谷 珪一

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“貧乏”なのに“高級品”のiPhoneを日本人が求めるワケ…携帯会社の歪な販売戦略を暴く から続く

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 欧米だけでなく、アジア諸国と比較しても賃金、物価ともに低水準な日本。先進各国では上がっている実質賃金も、日本ではこの30年間ほとんど上がっておらず、訪日外国人が増えた理由として、「物価が安い」ことが挙げられるようになりつつあるという。日本は世界的に見てどんどん「安い」国になっていると言わざるを得ない現状だ。では、一体どうすればこの状況を打破できるのか。

 経済評論家として活躍する加谷珪一氏の著書『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』を引用し、日本経済の現状、そして打開策について紹介する。

◇◇◇

手取り14万円 終わっているのは日本かお前か

 通貨の過剰発行など金融的な理由でインフレ(物価上昇)が発生するケースもありますが、基本的に物価というものは経済成長と連動しており、経済が拡大すると、それに伴って上昇します。逆に言えば、経済成長が実現できていない国は、賃金も物価もなかなか上昇しません。

 冷静に考えれば、ごく当たり前のことなのですが、日本の場合、不景気とデフレが長く続いたせいで、私たちの経済に対する感覚はかなり鈍くなっています。実際、今の日本の現状について、どう解釈すればよいのかとまどっている人も多いのではないかと思いますが、昨年、ネット上でこうした事態を象徴する出来事がありました。

 2019年9月、自身の安月給を嘆き、「日本は終わっている」と主張したネットの書き込みに対して、ホリエモンこと堀江貴文氏が「お前が終わっているんだよ」と辛辣に批判したことがネットで大論争となりました。


©iStock.com

 ホリエモンが批判したのは、ある掲示板サイトに立てられた「手取り15万円以下の人」というトピックでの書き込みです。投稿主によると、自身は40歳前後の会社員で、都内のメーカーに12年勤務してきたそうですが、手取りは14万円しかないとのことです。本人は掲示板上で「役職も付いていますが、この給料です…… 何も贅沢出来ない生活 日本終わってますよね?」と書き込みました。

 この書き込みには多くの共感が寄せられ、ツイッターでも話題となったのですが、ホリエモンは自身のツイッターでこの発言を取り上げ、「日本がおわってんじゃなくて、『お前』がおわってんだよ」と一喝。この発言がネット上で一気に拡散しました。

 ホリエモンの発言に対しては賛否両論となったわけですが、興味深いのは、今の日本社会においては、ホリエモンの発言も投稿主の発言も、基準を変えてしまうと、どちらも正しくなってしまうという点です。

 ホリエモンの主張は説明するまでもなく、いわゆる自己責任論ということになるでしょう。投稿主は、役職もついているということなので正社員と考えられますが、12年勤務して手取りが14万円では、(この情報が正しければ)かなりの低賃金です。

 12年の間にスキルアップしたり、転職を試みることは可能であったという現実を考えると、この状況に甘んじているのは本人の責任であるというホリエモンの主張には一定の合理性があると思われます。

不本意に労働条件が悪い仕事に就かざるを得ない

 もっともホリエモンは口調こそ厳しいですが、投稿主を批判しているというよりも、ネット時代には多くの人にチャンスがあるのだから、それをもっと活用すべきだという一種の励ましと捉えることもできます。

 ただ、チャンスが広がっているといっても、「皆がそれを生かせるだけの能力を持っているわけではない」という主張や「条件が悪くても、誰かがやらなければならない仕事がある」という指摘が出ているのも事実です。

 経済学的に考えた場合、多くの労働者が主体的に職業を選択している状況であれば、こうした問題は起こりにくいとの解釈になります。

 その理由は、特定の職業の処遇が著しく悪い場合、そこで働く労働者は他の仕事に転職してしまうので、ある程度、賃金を上げないとビジネスとして成立しなくなるからです。

 もし賃上げできない場合は、労働時間や負荷などの面で条件を緩和する必要があり、その場合には、賃金が安くてもラクな方を選択するという労働者が集まってくることになります。結果的に、誰かが犠牲者となって過酷な労働をしなければ社会が回らないという話は成立しません。やる気がある労働者であれば、上がった賃金を使ってスキルアップの教育を受け、それによってキャリアを開拓することもできるでしょう。

下がり続ける労働者の賃金

 しかしながら、この話が成立するためには、社会全体が豊かで、一定以上の賃金水準が維持されていることが絶対条件となります。平均的な賃金水準があまりにも低く、社会が貧しい場合には、不本意ながらも、著しく労働条件の悪い仕事に就かざるを得ない人が増えてくるのが現実です。

 残念ながら、今の日本は徐々に後者に近づきつつあります。

 日本における労働者の賃金は、多少の上下変動はあるものの、過去20年、ほぼ一貫して下がり続けました。

 仮に今回の投稿主が、ホリエモンが指摘したように、あまり努力をせず、現状に甘んじている人物だと仮定しましょう。日本ではこうした労働者は、安月給のまま、苦しい生活を余儀なくされます。ところが、欧米各国であれば、努力をしない人でも、給料の絶対値が高いので、生活水準は日本人よりも高くなります。もし、投稿主が欧米各国で生まれていたのなら、ここまでの状況にはなっていなかったでしょう。

 同じ条件の人物でありながら、日本で生活していると貧しい暮らしを強いられるという点においては、「日本終わってますよね」という投稿主の主張にも一理あるということになります。

 結局のところ一連の論争というのは、日本を欧米と同水準あるいはそれに近い水準の先進国と見なすのか否かということに集約されます。

低所得者に対する支援が手厚い欧州各国

 欧州各国には経済的な余力があるため、低所得者に対する支援が手厚く、相対的貧困率も日本よりはるかに低く推移しています。日本では「低所得者は怠けている」という批判も多いのですが、もし日本の低所得者が怠けているというのなら、欧州の低所得者も同様に怠け者ということになるでしょう。

 しかしながら、欧州の場合には、こうした人たちにも手厚い支援があるので、怠けていても、相応の生活を維持することが可能です。米国は欧州のような手厚い支援策はありませんが、それでも人口1人あたりの社会保障費は日本よりも圧倒的に多く、日本との比較においては米国ですら福祉国家といってよい状況です。

 日本を豊かな先進国と見なすのであれば、「終わっている」という投稿主の主張は正しく、日本を先進国と見なさないのであれば、ホリエモンの方が正しいということになるでしょう。

 読者の皆さんのほとんどは、日本は先進国であるべきだと考えているはずですし、もちろん筆者もそう思います。そうであるならば、相対的に賃金や物価が下がっている現状というのは、やはり打開すべきものではないでしょうか。私たちが本当に豊かな生活を実現するためには、何としても「安い国」であることから脱却しなければならないのです。

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