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焦点:欧州中古車市場にコロナ特需、「公共交通嫌い」鮮明に


[ロンドン/マドリード 30日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染の心配があるバスや鉄道での移動は何としてでも避けたい。とはいえ、景気がおぼつかない中、新車を手に入れるなどの散財をする余裕はとてもないー。いま欧州で、そんな思いに駆られた人たちが、おんぼろの中古車の購入に群がっている。

「ここマドリードの公共交通機関は素晴らしいけれど、コロナがあるから避ける方が無難」と話すのは、最近アルゼンチンからスペインに越してきた自動車エンジニアのロベルト・ペレスさん(33)。求職活動に出掛けるため、赤い2001年型の「セアト・トレド」を2000ユーロ(2370ドル、約25万円)で中古車会社「オカシオンプラス」から買った。この会社はコロナでのロックダウン(封鎖)以来、需要が急増し、販売店を新しく4店出した。

調査会社IHSマークイットとオンライン自動車販売市場「オートスカウト24」のデータをロイターが入手したところ、欧州全域で中古車の登録がうなぎ登りになり、中古車のネット検索も急増していることが分かった。

中古車に関心が高まるのは、苦戦する大量交通網にとっても環境にとっても朗報ではない。しかし、コロナ禍が続く中、新しい電気自動車(EV)よりも環境を汚す古い車の方に消費者の目は向いている。

長期的に見れば、コロナ時代で公共交通が敬遠され個別の乗り物志向が強まれば、自動車メーカーの助けになると期待される。今年1-10月の欧州の新車販売は前年同期を27%下回っていた。

ロンドン郊外ハイエスの自動車販売店では、支配人のアミーン・サルタニ氏がロイターの取材に、引き合いがあるのは3000ポンド(3985ドル)未満の中古車だと指摘した。大半は車齢10年を超える車だが、価格は25%上がったという。これまで鉄道やバスを使っていた人が、手頃な価格の代替手段を探しているためだ。

「3000ポンド未満の車はどんなものでもあっと言う間に売れる。だれもが同じ車を狙うから、在庫が常に払底している状態だ」

<決め手は安さ>

米国や欧州、とりわけ中国ではここ何ヶ月か、想定を超えて新車需要が膨らみ、大手自動車メーカーが春のロックダウンで被った打撃を幾分、回復する助けになった。

しかし、IHSマークイットがロイターのために集計したフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、英国の乗用車登録データによると、年式の古い中古車への顕著な移行の動きがあることも示された。

フランスでは第3・四半期に中古車登録が16%近く増えたが、新車登録は5%超減った。今年これまでで見ると、中古車登録で15年を超える車が占める割合は、昨年よりも増えている。スペインでは中古車登録が25%近くも急増した。

スペインのクリスティナ・ロペスさん(34)も車を買った。やはり価格の安い中古車だ。同国の厳格な外出制限でいくらか金をためられたおかげもあるという。「現金で安い車を買えるぐらいは十分たまった」

ロペスさんは食事の仕出しの会社が一時帰休になり、観光業を勉強するため学校に戻ることにした。マドリード郊外の自宅から授業に通うため、グレーの05年型「ルノー・クリオ」を今月、3600ユーロで買った。

スペインのメディア会社の自動車販売サイトによると、国内では6月から10月にかけて20年超の車の販売が25%急増し、15年超も16%増えた。

<環境問題には逆行の懸念>

オンライン自動車市場の「オートスカウト24」はオーストリアやベルギー、ドイツ、イタリア、オランダが商圏だが、同社の分析によると、ネット上の中古車の検索は夏以降に急増した。7-9月には20年よりも古い中古車の検索がフランスで80%、オランダで77%、ベルギーで59%、それぞれ増えた。

同社のエドガー・ベルガー最高経営責任者(CEO)は、こうした市場ではコロナ流行で消費者にとって個別の乗り物がより重要になっただけでなく、経済的な不安感から慎重さも強まっていると指摘する。

ただし、中古車販売のオカシオンプラスによると、同じ中古車でもEVはまだ不人気だ。販売している2800台のうち、EVはわずか6台という。マーケティング責任者のフェルナンド・ロドリゲス氏は「買い手は長い目で見たバッテリーの性能に不安を抱いているし、中古EV用に充電設備に投資するのもためらっている」と言う。

極めて古い車を道路で長く走らせ続けることは、欧州の野心的な排出量削減目標にとって逆行する流れになる可能性があるだけでなく、他にもより長期的な影響がある。

<公共交通への信頼回復が課題>

保険会社によると、統計に表れるには時間がかかるが、年式の古い車は安全性能が貧弱で事故を起こしやすいし、そのため保険料が上がる可能性がある。

車利用へのシフトはすでに公共交通機関に打撃を与えている。スペインでは4月の公共交通機関の利用者数が前年同月比92%落ち込んだが、全国規模のロックダウンが緩和されてから数カ月たった9月でもなお前年同月を44%下回ったままだった。

英国では11月に広域なロックダウンが再開される前の時点で、鉄道の利用は昨年の約3分の1になっていた。一方で個人的な自動車の利用は昨年の90%に近かった。ロンドンのカーン市長は9月、乗客数の減少が続いているとして、同市の交通機関事業者への57億ポンドの包括支援策を要請した。ドイツとフランスも国有鉄道への支援策を打ち出した。

環境保護団体グリーンピースのサム・チェタンウェルシュ氏によれば、環境面の懸念からは公共交通機関離れの方が重大。たとえ新車でも大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)の販売が増えれば、総体的な排出量はどのみち変わらないためだという。

同氏は「政府は道路の交通量を減らすため、できることは何でもする必要がある。公共交通機関に戻っても安心だと信頼感を与えることも必要だ」と述べた。

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