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NHK「コントの日」いい点、ダメな点、不思議な点

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

***

近頃、コントを中心とするエンターテインメント番組が増えている。コント好きにとっては嬉しい限りだ。11月23日(勤労感謝の日)夜9時からのNHK「コントの日」を見た。2018年11月に始まったコント番組で今年で3回目だそうだ。

最近のコント番組はすべて見るようにしているが、その中で、この「コントの日」は、最もコントのエッセンスを確実に捉えた優れた番組だったと思う。なぜ優れていたか。

*演者がきちんと芝居が出来る芸人ばかりであった。顔を必要以上にゆがめたり、面白そうな顔をしたり、そういうことでしか笑いのとれないものはおらず、普通の芝居で持ちこたえられる実力者たちである。

*台本がしっかり書き込まれている。これは重要なことだが、現場では反対のことも生じる。きちんと書き込まれた台本を、台本通りやったのでは笑いは取れない、台本を演者が解釈してその場限りのアドリブを繰り出すことが出来ていた。

*リーハーサルをやっている。稽古なしで臨んだ方が面白い人もいるが、たとえば明石家さんまが間寛平とコントをやるときは綿密な稽古が行われている。

ひとつひとつのコントを見ていく。

ロバートで唯一コントの出来る秋山竜次が主婦役。スーパーに買い物に来てたくさん野菜などを買ったがビニール袋の4円が払いたくないので、ストッキングにまで詰め込もうとするコント。

設定とも言えない普通の出来事だから、見せ場は秋山がどうやって物を持てるようにつめるかである。この時、迷惑がる店員のリアクションが大事である。「やはりフクロご用意しましょうか」というような客側に立った発言は構わないが、明らかに客をとがめる「世間話はいいですから(早く詰めて下さい)」という発言は決してしてはならない。とがめるくらいなら客を排除すればいいのだから、客が第一で、それが出来ないから、秋山の主婦をずっと相手していなければならないのである。根本の設定を崩壊させてしまうセリフは、編集でカットしてあげるべきだ。それがディレクターからのメッセージだし優しさだ。

アニメでつくったタイトルはセンチメンタルで非常に良い。ガチャガチャしたコントには美しさを。

フルーツケーキで毒殺されたかも知れない被害者。その犯人を推理する4人の刑事。刑事のリーダーである劇団ひとりは刑事ドラマのパロディをやろうとしてしまったのだろうか。パロディとコントは違う。芝居が大仰で見ていられない。松本穂香のセリフは普通で、劇団ひとりが過剰となると、コントだよ、面白くなくても笑え、と言われているような気になる。

ロボットのマジメカ ふくろうのズブズブ、新川優愛の女の子アリスによる森の童話風コント。ロボットのマジメカを演じるロッチ中岡創一を動きにくい作り物のロボットの中に入れたのは名案。この人は普通の立ち姿が決まらないことがあるので、これで安心。ズブズブとアリスは心の中にもっとどす黒い者を抱えている設定だと思ったのだけど・・・。

[参考]「やらせ」と「演出」の区別は簡単だ

ステイホーム中の趣味が高じて、家をラーメン屋にしてしまった上司。ネタバレしてからの東京03角田晃広の哀愁の芝居が大きすぎる。哀愁はもっと小さく忍び泣くくらいに悲しい。

公園の東屋で雨宿りをしているロッチの中岡。こういう場所設定を与えるだけで中岡の立ち姿が決まるというのは不思議なことだ。そこへ、怪しい風体のおじさんが来る。こういう役をやらせたら今日本で一番上手な空気階段の鈴木 もぐらである。もぐらは、今指しているビニール傘を「後はモモタロウの散歩をさせるだけだから」という理由で、傘のない中岡に貸そうとする。だが条件は「これを恩に感じてもらって子どもの名前を付けさせてもらいたい」と言うのだ。

しかも、モモタロウは実はトウモロコシだと分かる。当然断る中岡、次にやってくるのは、ずんの飯尾和樹。最後にやって来た女は予備の折りたたみ傘を貸そうと言い出す。初めてのまともな人物の登場に中岡は借りようとするのだが・・・。というコントだ。このコントは、最初の台本上、ずんの飯尾は登場しない設定で書いてあったのではないか。大変切れのいいオチがついていたのである。笑いは欲張ってはいけない。笑い乞食になるなと言う戒めがある。

今回のコントの白眉は、かつて、バンド、ブルー・トパーズを結成していた4人のおばさんが観光にやって来て、たまたまいた東京03の飯塚悟志に写真を撮ってもらおうとする。しかし、ブルー・トパーズの4人はつい昔の癖が出てジャケット写真のポーズをしてしまうコントだ。カメラをかまえる飯塚が喋りすぎ。ここは一切喋らないくらいの方がいい。

後は、ビートたけしのコントである。打ち合わせを重ねていくと、どうしても、フリップを使ったしゃべりコントになってしまうのは仕方のないことかも知れない。もう動きたくないし、動きでは若手に負ける。このコントの時はたけしに対するツッコミ、いや、ツッコミというより「否定」が必要なのだが、それを言える人は日本の芸能界に1人しかいない。次回「コントの日」をやるなら殿堂入りしてもらってはどうか。ハナ肇さんはむかし、銅像になっていた。

今回、もうひとつ残念だったのは大ファンのハナコの岡部大の活躍が少なかったことだ。提案が許されるなら、インパルスの板倉、ドランクドラゴンの塚地 武雅との組み合わせを見てみたい。

さて、ここまでコントの質が上がってきたなら、後は音楽である。今回は竹内 まりやがほんのちょっと手伝ったらしいが、音楽ときちんとジョイントすれば日本では絶えて久しい「テレビショウ」が完成する。ダンスも必要だ。

最後に私の大きな疑問をひとつ。この「コントの日」と『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』が同じ演出陣でつくられていることは不思議でしょうがない。

 

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