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仮設住宅団地のリーダーから見えてくるもの

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荻上 復興アリーナでは、東日本大震災におけるさまざまな立場の方の取り組みを取材し、被災地にはいま何が不足しているのか、今後の災害に役立つ課題や教訓は何かといった問題を検証していきたいと思っています。

今回は、宮城県石巻市の仮設住宅で自治会の会長や役員をつとめる四名の方にお集りいただき、仮設のリーダーの立場から見えてくる課題について、座談会形式でお話を伺いたいと思います。まずは皆さんの自己紹介をお願いできればと思います。

自己紹介


阿部 西支部の副会長と河南の長塚前団地の副会長をしています、阿部光夫です。これまで副会長として、会長さんを支えるかたちで、団地の声をできるかぎり拾い上げてきました。いまはラジオ体操など、子どもたちのためになにかできないか考えているところです。

齊藤 齊藤秀樹です。石巻の仮設団地では、東西南北に地区をわけて、主要な場所に事務局をおいていますが、その西支部の事務局長と、押切団地の自治会長をしています。団地に住む皆さんが新しい出発を向けられるまで、各団地との情報共有や悩み相談、ボランティアの紹介などをしています。

中野 中野信行です。基本的には開成の一団地の自治会長をやらされています。「やらされている」というのは、正直、最初は自治会に興味がなかったんです。市役所から話がきたのですが、そのときは、自治組織なんてなくても自然とうまくいくと思っていて、否定していたんですね。

ただやはり、住んでいる人たちが全員いい人というわけではなく、徐々にいろいろな問題が発生して、ルールが必要になってきて。というわけで、いまでも自治会長をしています。

自治会長になった途端に、他の会長さんから、自治会長が集まる連合会があると知らされました。やはり横の繋がりが持つほうが情報の共有がスムーズにいくと思い、自治連合会に加盟しました。いまは147の仮設団地があり、自治連合会に正規に加盟しているのは28団地。今月末には32団地になる予定です。

これだけ多くの会長さんや役員さんが集まると、収拾がつかなくなってしまいます。そのため、今年度の早い段階で各エリアにわけることになりました。団地によって抱えている問題は違います。

開成や南境は、まわりに街場がありません。地盤の弱い団地もあれば、カビの生えやすい団地もあります。団地ごとにニーズが違ってくるんですね。それらをすべて連合会全体で共有していてはきりがない。というわけで、ひとまず4つの支部にわかれてそれぞれで話し合いをし、必要な場合は連合会で話し合うようになりました。先月まではその中央支部の副支部長をしていましたが、いまは事務局長を務めています。

山上 山上勝義です。私は震災の翌日、中央にあった昭和会で、会長代行として炊き出しなどをしていました。しかし5月あたりから、昭和会で炊き出しや配給をするのが厳しくなってきて。とはいえ町の状態や被災者の声を聞いていると投げ出すわけにもいきません。そこで新たに中央救済会というものを立ち上げ、11月10日の配給打ち切りまで活動をしてきました。

自宅が全壊していたため、その後は南境第七団地の仮設住宅に入りました。そのときに、いままでの実績を買われて、市役所に「自治会を立ち上げてくれ」と頼まれたんです。いまは規模の大きい団地の自治会ということもあって、正直、皆さんとうまく連携が取れず、苦労している状態です。気が付いたら連合会の副会長になっていて、中央ブロックの支部長もしています。

齊藤 私の場合、ボランティアからの推薦と、市から経験を買われ、いつの間にか決まっていましたね。最初は「嫌です」と断ったのですが、「もう要請書を出してしまったので」と言われ、あきらめて引き受けることにしました(笑)

山上 中央で散々みんなの手伝いをしてきて、仮設に移ってようやく自分のことができると思ったら、まったく逆でしたね(笑)

齊藤 そうそうそう。

中野 やっぱり、みんなそう思いますよねえ。のんびりできない。


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            中野信行さん           

仮設団地というコミュニティ


荻上 発災後、フェイズによって、必要な支援や発生する問題は随分と変わってきたかと思います。いかがでしたか。

山上 そうですね。最初は、飲み物や食べ物を手に入れることが最も重要でした。その後に、生活空間の確保でしょうか。地震と津波で家はぼろぼろになってしまいましたから、当然、風呂も台所もありませんでしたし。ボランティアの方や市役所にお願いをして、用意してもらいましたが、それでも足りなかった。やっぱり、ライフラインの復旧は早急に行わないといけないと思います。

あとは、道路の修復はもちろん、側溝にふたをいれることや、街灯を灯すことも大切です。できるだけ安全に暮らせるようにと思い、大きな穴が開いている道路の写真を撮るなどして、市役所に提出していました。もともと建築畑ということもあって、いろいろな要請書も書いてきましたね。

いま心がけているのは、コミュニティを活性化させることです。3月で、東日本大震災の関連死が1600人を超えたと聞いています。これだけ震災の影響が長引いているのに、いまだに行政はなかなか動いてくれません。みんな精神的にも肉体的にも疲れがでてきています。

僕らとしては、この仮設団地から自殺者を出したくないという思いがあります。だから、せめて精神的に支えてあげたいと思っています。子どもたちが友達作りをできるように遊び場をつくったり、そこに集まった父兄で、父兄会を作るといったことをしているところです。

齊藤 仮設団地ですと、初めは知っている人が誰もいないんですよね。私の場合、「ハーイ、お姉ちゃんかわいいね!」と呼び込みスタイルで声をかけることから始めました(笑)。着ぐるみをきて「自治会長のカンタくんです!」とか。
こうやって笑いを取っているうちに、だんだんと「あの変な兄ちゃん、ごみの掃除をしていた」と、少しずつ受け入れてもらえるようになりました。「あの変な自治会長、今度はなにをやるんだろう」って(笑)

一同 (笑)

山上 これだけ大きな団地だと、自分と同じ列に住んでいる人しかコミュニケーションがとれなくて。いまだに知らない人がたくさんいます。あとはうつ状態で、家からまったく出てこない人もいる。

中央にいた頃は、頑張っているうちに周りで見ている人が手を貸してくれて、組織が動けていました。こちらに移ってきたときは、やはりばらばらですから。まずは自分から行動して、協力してくれる人が出てくるのを待たないといけません。最初のうちは時間がかかりますね。
中野 徐々に、ゆっくりとですよね。時間はかかります。

山上 常に団地にいられるわけではないので、せめている間だけでも、できるだけ何かするようにしています。最初のうちは、例えばラジオ体操の開催などを知らせるのに、書面で呼びかけていましたが、誰も来てくれなくて。だから、「なんだこいつ、うるさいな」と思われようが構わず、ハンドマイクで呼びかけるようにしました。500世帯あるのでさすがに一人ひとりに声をかけるのは手間がかかるんですよね。

齊藤 そうそう。うちは124世帯ですがだいたい2時間半かかります。真面目に話を聞いていったら……。
中野 いくら時間があっても足りないですよね。
山上 必ずどこかで捕まってしまって。

齊藤 そうそうそう。まんじゅうとお茶がでてきて(笑)

山上 朝から周っていたのに、気づいたらお昼を過ぎていたりする。

阿部 私がいるところは35世帯程度なので、そういう面では苦労が少ないのかもしれませんが、逆に小さすぎて、支援物資やボランティアがなかなか入ってきませんでした。そんなときに「自治会をつくらないと何も連絡がないよ」とアドバイスをもらって。まずは自治会を作るために10人くらいで寄り合うところから始めました。そうして1、2か月たったころに、連合会があるので参加してみないかと声をかけてもらいました。

ただ、これだけ小さくても、やっぱり声掛けやチラシの配布の効果はあまりありませんでした。そこで、とにかく興味をもってくれそうなことをやろうと、団地の横に花壇を作ってみたんです。そしたら、おばさんたちが苗を買ってくるようになって。花を見るのが好きな人もいれば植えたい人もいるんですね。子どもたちもトマトが赤くなるのを楽しみに待つようになりました。

中野 35世帯くらいだと、集会所はあるんですか?

阿部 広くはありませんが談話室があります。
昨日、夏祭りの手伝いにボランティアさんが来てくれるとのことで、打ち合わせをしていました。ボランティアさんがチラシを持ってきていて、そこにいた子どもたちが配りたいというので、お願いをしたら20分で配ってくれて。子どもたちは、支援物資を運ぶのも手伝ってくれます。だから子どもたちのためにも、なにかしてあげたいですねえ。

齊藤 いい子たちですね! うちは散らかしていく子はいるんだけどなあ……。

中野 これが団地ごとのニーズの違いでしょうか(笑)

サイズとしては、30〜50くらいで一ブロックになっているくらいがちょうどいいのかもしれませんね。大きすぎても、小さすぎても、なかなか難しいのかもしれません。

山上 そう思って班を作りましたよ。でも、やっぱりうちは400世帯を超えているので、1列ごとに班にわけても1列100世帯。チラシを印刷するのも一苦労ですね。あまりに酷使しすぎて、うちに置いてあるプリンタは壊れてしまいました。

中野 インクの消耗も激しいし、ヘッドも壊れる。耐久品のはずが、消耗品の勢いでプリンタそのものが壊れてしまう。

齊藤 コンビニでコピーをしようとすると、あまりの数に、「お客さんすいませんが……」と言われてしまう(笑)。自分のパソコンとプリンタを壊すか、お店のコピー機を壊すか……。いまは事前に、「来月お願いします」と地元のコンビニに話を通すようにしています。

中野 回覧板だと棟で回せるので、被害額がぐんと下がりますよ。

山上 被害額(笑)
中野 だって自腹ですからねえ。キツいですよ。

荻上 自治会費からまかなっているわけではないのですね。

中野 そうです。みんな被災しているんです。自治会費なんてとれるわけがありません。もともと既存の町内会でも、会費がとれなくて苦しかったのに、こうなってしまっては絶対に無理です。

齊藤 自治会長同士で誰が一番お金を払っているか自腹選手権でもやりましょうか(笑)

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山上勝義さん 

ゴールの見えない真っ暗なところ


山上 私も中央のときから考えるととんでもない額を自腹で払っていますね。活動中に車も壊れてしまいました。震災で駄目になったということで認定されましたが、けっきょく車の修理代で支援金はなくなりました。
 
齊藤 いっそみんなで宝くじでも買えばいいのかもしれない(笑)
 
山上 復興宝くじも被災者だけが買えるようになっていたらねえ。罹災証明を出すと買えるみたいな。そしたら夢も持てたんだけどなあ。
 
中野 でも、そういうのは大した被害を受けていない人が当たるもんなんですよ(笑)。本当に困っている人のところにはお金がいかないようになっている。いつでもそうです。
 
山上 いまの行政がそうなっていますよね。銀行の借入がない人や年収の高い人にはお金を出している。そういう人より、まずは本当に困っている人たちを援助して欲しい。
 
いまアルバイトしている人たちは、カードも使えないしお金を借りることも出来ない、そして義捐金は滞っていてもらえずにいる人です。団地のなかには、旦那さんが亡くなって、自分も怪我をしているために働けないという人が結構います。そういう人は今後どうやって暮らしていけばいいのか。
 
中野 知事は生活保護を受けなさいとしか言わない。
 
山上 私も生活保護をすすめています。でもこの間のマスコミのあの報道以降、「親戚に顔向けができないので生活保護だけは受けられない」と言われるようになりました。本当に困っている人が生活保護を受けられなくなってしまっています。手持ち数千円しかない人もたくさんいるんです。「このままだと死んじゃうよ、背に腹はかえられないよ」と説得しても、「受けられない」って。
 
基礎支援金が100万円、追加支援でも200万でしたね。でも、現実的にはこれでも厳しい数字ですよね。最低でも、みんなが最初の一歩をちゃんと踏み出せるくらいのお金は国で出してほしい、そう思って市長に話をしたら、ちゃんと納得してくれました。県知事の村井さんにも話をしたら、賛同してくれた。
 
でも復興庁に行ったら、復興大臣に蹴られてしまった。「前例をつくると、これからもやらなくてはいけない」と。驚きました。それが国の義務でしょう? なんのために税金を払っているのかわからない。
 
中野 前例のない被害を受けているのにねえ……。
 
阿部 ゴールの見えない真っ暗なところにいますよね。
 
山上 比較的前向きに考えて動いている私でも倒れるくらいに疲れてきています。前向きにはなれない人はたくさんいます。友達が、3人も自殺してしまいました。私のまわりだけで3人です。これ以上そんなことになって欲しくありません。
 
財産も家も仕事も失った人が自立できるわけがないでしょう。いま復興住宅、復興団地を作るという話がありますが、団地にいる人の中には、「ここでいい」と言っている人がいます。家賃を払う余裕がないからです。今日、明日を生きるのがやっとという人がたくさんいるんです。
県や国は、私のような人のことを「うるさいやつだ」と思っているんでしょうね。「私の責任において」なんて野田さんは言っているけど、野田さんが責任とって、具体的になにかできるんでしょうか? デモの声、人々の声を聞いて、「音がうるさい」と表現した人を信用できるはずがありません。
実際に困っている人たちを目の間にして、なんて答えればいいんですか? とにかく動かざるをえないんです。もちろん、ただの自治会長にそんな力があるとは思っていません。でも誰かが動かないとどうにもならなくなってしまう。
 
阿部 この前、壊れた家の解体を業者に頼んでいたけれど返事がなくて困っている、という人がいました。業者に問い合わせてみたところ、来年の4月にならないと解体できないと言われてしまって。このままだと台風で屋根がめくれて、二次災害の恐れもあります。
 
そのことを市役所に話したら、解体の希望であればと親切に手続してくれて、遅くても11月には解体してくれると。それだけのことですが、反応してくれると嬉しいですし、自分も少しでも誰かの手助けになりたいとますます思います。
 
中野 家はほっておくと危ないですよね。二次災害でこれ以上の死者をだしちゃいけないでしょう。
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            阿部光夫さん        

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