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事実上、”訪問リハビリステーション”- 楢原多計志

「約5千人のリハビリ専門職が雇用を失う─。11月中旬、日本理学療法士協会(JPTA)は2021年度の介護報酬改定を議論している介護給付費分科会の動向を睨み、署名活動を始めた。このコロナ禍、なぜ、いま署名なのか。介護保険は制度スタートから20年が経過。介護事業者本位の改正・改定の矛盾が浮かび上がっている。

利用者8万人置き去り?

「現在、令和3年度介護報酬改定の議論のうち、検討されている訪問看護ステーションの基準などの見直しにより、介護保険利用者だけでも約8万人の方がサービスを受けることができなくなり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は約5千人が雇用を失うと見込んでいます」。JPTAはホームページで署名の目的などを、こう説明している。

JPTAが反発しているのは、同月16日、厚生労働省が介護給付費分科会に示した「訪問看護の報酬・基準」の対応案(厚労省案)だ。抜粋すると、「訪問看護ステーションについて、経過措置を設けた上で、看護職員が従業員に占める割合を6割以上とする要件を設けたらどうか。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護費の単位(基本報酬)や提供回数等を見直してはどうか」。

要は、訪問看護ステーションが看護師を6割以上配置しないと、介護報酬の引き下げや指定事業所を取り消す(経過措置あり)─ということ。

看護師6割の理由は?

厚労省は「看護師の6割以上」を新たに要件とするには、それなりの理由があるという。老健局は「本来、訪問看護サービスは疾病や負傷によって居宅療養が必要な被保険者に看護師などが療養の世話や診療の補助を提供するもの。リハビリ専門職は必要だが、リハビリに偏った訪問看護サービスステーションは事業目的が異なる」と説明する。

介護給付費分科会の議論でも委員から「実態が訪問リハビリテーション(別の介護サービス)と同じであれば、訪問リハビリテーシヨンとして提供されるべきだ」、「看護の視点で医療ニーズ対応や看取りなどを行うものであり、リハビリ職はできない」「看護師の配置割合は一定以上あるべきで、減算などによって本来の姿に誘導したらどうか」など厚労省案に賛同する意見が多い。

利用者のメリットは?

一方、「看護職とリハビリ職には専門性に合った役割がある」「重症者は看護師、軽症者はリハビリ専門職と─いうのは自然の流れであり、看護師割合でペナルティを与えるのはどうかと思う」と実態を容認する意見も聞かれる。

大事なことは、利用者がどう思っているか。訪問看護ステーションを利用しているという東京都内の女性(要支援2)は「右脚が悪いので看護師より療法士が来てくれた方が助かる。悪化したらタクシーで整形外科に行く」と言う。また長崎県五島市の男性(要介護1)は「訪問リハビリテーシヨンでも良いだろうが、近くにない」と離島の介護事情を話す。

横浜市の訪問看護ステーション事業者は「利用者からすれば、派遣されてくる理学療法士や作業療法士の所属が訪問看護ステーションか訪問リハビリ事業所か─なんて全く問題にならない。地域の事情にも配慮しながら利用者ニーズに沿ったサービスが求められている時世に、人員配置や運営の基準を厳格化して使い勝手を悪くして、利用者に何のメリットがあるのか」と断じた。

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楢原多計志(福祉ジャーナリスト)

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