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大学の人事とスケジュール(3)

というわけで「3大学新設、田中文科相が「認可」 自民は問責決議検討」(asahi.com)とのこと。以前にも述べた通り私は野田総理を民主党の生んだ最高の総理大臣であると思っているが(深読みすること)、周囲がダメすぎるというのは自業自得とはいえさすがにお気の毒やなあと改めて思ったことであった。まあしかし、関係者のキズが浅いうちに一応は落着してよかったのではないでしょうかな。

そこで問題は目下の騒動を離れて今後の大学設置制度をどうするかという点に移り、田中真紀子・文科相としても制度の見直しに迅速に取り組むということであってだからあなた来年はそこにいないでしょうと思ったわけだが、まあしかし最初に述べた通りこれまでの記述は基本的に「現在は制度がこのようになっている(従って新設校側の行動に問題はない)」ということの説明であり、「じゃあその制度でいいのか」というのは別の話と断ってあった。その「別の話」を多少補足しようと思う。つまり、大臣の政治的決断を可能にしても教員の一般的な人事形態などと衝突しない制度を作るというのも将来に向けての話としては考えられる。それはどうかという話。結論的にはあまりうまくないと個人的には思うが、評価基準によってはそれでもやるべきということになる制度構想もあり得るだろうなと。

* * *

おそらくもっとも単純なのは、たとえば大学の新設について現在は設立予定前々年度末(今回の例では2012年3月)申請としているものを、もう1年前倒しするという案だろう。すると最終決定は設立前々年秋となり、大概の就任予定教員が辞職の意向を勤務先に伝える前に間に合うことになる。人生を狂わさないようにということであれば、最低限これで修正できるかもしれない。
問題は、設立の準備期間が単純に1年長くなり、そのための費用がかさむことだろう。この点も誤解している人があちらこちらで見受けられたが、少なくともいわゆる私学助成は大学の新設から完成年度までのあいだ給付されないので(通常の学部なら4年間)、大学を作るためにはそのあいだを自力で過ごせるだけの資金力というのが必要になる。その敷居をさらに高くすることになるというわけだ。

もちろん現状として大学は多すぎるので敷居は高くした方がいいという判断はあり得るので、これは絶対の弱点ではない。ただ当然ながらその分のコストは設立後の学費に反映されるだろうから、結局は新設校の学費負担者(まあ多くは親御さんであろう)の負担において大臣の裁量権を確保するということになる。それが望ましいことかどうか、という話。

* * *

第二は、まず設立目的や規模・教育内容などを審査して可否を判断し、その後にのみキャンパス整備・教員採用などを認める。それらの設立準備が失敗した場合には設立を認めないという制度である。「認めない」というのが計画段階(第一次審査)に次ぐ実施段階の審査(第二次審査)なのか、計画段階で与えられた認可を開設までに取り消すという制度なのかなどのバリエーションがあり得るだろうが、ここではとにかく(1) 計画と実際の準備という二段階に分けるということ、(2) その双方でチェックすることのみに注目し、上のように呼び分けることにしよう。これはおそらく、いくつかの理由でうまくいかない。

一つ目は理論的な話で、どこまでを第一次審査・第二次審査に振り分けるかという問題である。ここで第一次審査を純粋に計画のみに限定した抽象的内容にすると、前述した通り夢ならいくらでもいいことが書けるので実質的に機能しなくなる。他方、教員組織や授業編成・個々の授業の内容まで踏み込んで実質的に審査することにすると、それらが事前に確定していなければ審査のしようがないことになり、要するに現状と大して変わらなくなるだろう。たとえば現在の制度では、大学院を開設する際には事前に全授業科目のシラバス(詳細な授業計画)を提出する必要があるところ、これが書けるのは現実に担当する教員か、同程度の専門家のみである。そこまでの具体性を申請に求めないと厳しい審査など行えるわけがないが、そのためには教員の手配が先に終わっている必要があるというわけだ。

二つ目は現実的な話で、実際のところ行政はこうですねえという内容であるからそれがけしからんと思う人は思っていただいていいが、はっきり言えばまだ正式には認めていないという段階で事実上進んでいる準備にストップをかけるほうが、第一次審査というような形で一旦は正式なOKが出たうえで進行しているものを止めるより、明らかに簡単だということ。今回の田中大臣の行動を結果において支持するような方々には行政は一度動き出すと止まらないとか、方向性が変わらないという不満を持っている方が多いようである。であるならば、あくまで行政からの事前指導とか認可前の修正指示という形を取っているので申請者が従わなかった場合には「不認可」=認可を与えないという不作為を選択すればいい現在の制度より、一度は認可を与えてしまっているので「認可の取り消し」という作為、ないし「第一次審査を通過したものに対する不認可」というはっきりと目立つ不作為が必要になる制度に変えるほうが止まりにくくなるはず。前例踏襲などで行政が無駄に動くのを止めさせたいという目的と二段階審査制度は整合しないことになろう。

三つ目は理念的な話で、それにしても変な大学が増えていて問題だと思っている方も多いようであるし私自身もそう思うところがあるのだが、何故そうなっているかというと小泉改革の一環として設置審の審査を(少なくとも従来に比べれば)簡単にしたからである。つまり官僚による統制を弱め、できるだけ市場による選択と淘汰に委ねるという方針で改革がなされたから。なので、もちろん官僚を信じるかどうかは人ごとに決めればいいことだとは思うが官僚が信用できないので設置審の審査を厳格にしようという発想は順序が完全に転倒している

問題はむしろ、(事前)審査の緩和とセットだったはずの事後評価と市場による淘汰の方にある。つまり改革のシナリオとしては以下のような流れになっていたはず。

  1. 学生に被害が及ばない範囲で、大学はできるだけ自由に作らせたほうがよい。
  2. 新設校だろうが既設校だろうが、魅力がなく市場から選択されない大学の経営は悪化し、退場させられることになる。
  3. その際、高等教育という専門的なものを個々の消費者が直接・適切に評価できるかは疑問があるので、専門的な外部評価・第三者評価を受けてその結果を公表することにより、市場の選択を支援する。

というわけで、学校教育法109条は自己点検・評価を行なった上でその結果を公表することを大学に義務付け(1項)、さらに一定期間ごとに第三者たる「認証評価機関」の評価を受けることが義務付けられているわけだ(2項)。ところでこれ、どこで誰がやってどういう結果が出ているか、皆さまご存知ですかね。この項つづく。

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