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劇場版『鬼滅の刃』海外で成功する可能性は? 将来的なハリウッド実写化も視野か

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『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(以下、『劇場版 鬼滅の刃』)が10月16日の劇場公開以来、興収250億円を突破するなど記録的な大成功を収め、その快進撃はいまだにメディアを賑わせている。多くの国で新型コロナウイルス感染拡大が長期にわたって猛威を振るう中、映画ビジネスが大きなダメージを受けていた最中の話題だけに、海外のメディアもその盛況ぶりを報じている。

一度の上映に人数制限を設けている映画館もある中、1日の上映回数を最大限まで求め、バスや電車の時刻表を思わせるほどのスケジュールを組んで大ヒットを支えた配給・映画館の仕事ぶりは見事であるが、日本での劇場公開公開から1ヶ月半が経った今、先に控えているであろう海外の展開で、何を見据えているのかということも気になってくる。近年アニメ市場の成長著しい北米での公開は「2021年初頭」と謳われているが、ここで現在一番ホットなアニメ作品と言える本作の、海外での可能性について少し考察してみたい。

「アニメ 鬼滅の刃」公式サイト

グローバル興収ランキングで第5位につけた『劇場版 鬼滅の刃』

ハリウッドのエンターテインメント業界誌の一つであるデッドライン誌は、11月22日に出した記事の中で、公開6週目を迎えた本作が日本国内の興収250億円(2.39億ドル) を突破したことと併せ、2020年の全世界興収ランキングで第5位につけたと報じた。ちなみに全世界興収ランキングの第3位には、本作の1ヶ月半ほど前に世界各国で公開されたクリストファー・ノーラン監督の新作『テネット』がつけているが、こちらが全世界興収で3.5億ドル(約365億円)付近で足踏みする一方、日本国内だけで250億円を挙げた『劇場版 鬼滅の刃』の強さがわかる。

日本は現在、アメリカと中国に次いで世界3位の規模を誇る映画市場を持っているが、国内の興収で100億円を超えるヒットを出せるテリトリーは、世界的に見てもそう多くはない。ところがその規模のわりに、日本のエンタメ市場がフランスやドイツなど、他のキーテリトリーに比べて存在感が薄いと肌で感じる場面が何度かあった。筆者はその理由の一つに、日本の市場の特殊性が関係しているのではと考えている。

毎年の日本の国内興収トップ10を見ると、その過半数をアニメ作品が占めることが多いが、実はこれは海外のテリトリーではあまり見られない傾向だ。ディズニーやピクサーのアニメーション作品が数本ランクインすることはあっても、これらがトップ10の過半数を占めるということはほとんどない。海外の多くの国では、アニメは子供が見るものという認識がまだ強く、アニメ作品に対する認識に歴然とした差が存在しているのである。

そんな日本ほど広く浸透していないアニメというジャンルの海外での展開において、その成功を左右する大きな要因は、まずは既存ファンの存在だろう。ただし「海外」と一言で言っても当然、欧米やアジアなど、文化も傾向も違うので一括りに述べることは難しい。

海外展開でも10億円を超えると「ヒット」作と言える?

近年の日本のアニメ作品のうち『鬼滅の刃』と同程度の話題性と勢いを持ち、北米で劇場公開された主なタイトルを見てみると、以下のような結果になっている。また北米での劇場公開はなかったものの、中国で5.3億元(約106億円)という驚異的な興収を挙げた『STAND BY ME ドラえもん』のような例もある。

『風立ちぬ』(2013):北米興収520万ドル(約5.4億円)
『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(2015):北米興収800万ドル(約8.3億円)
『STAND BY ME ドラえもん』(2015):中国興収5.3億元(約106億円)
『君の名は。』(2016):北米興収501万ドル(約5.2億円)
『ドラゴンボール超 ブロリー』(2019):北米興収3071万ドル(約32億円)
『天気の子』(2019):北米興収779万ドル(約8.1億円)

これらを見ると、海外である程度の結果を挙げているのは、やはりスタジオジブリ作品や『ドラゴンボール』『ドラえもん』といった「ベテラン」勢、加えて社会現象的なセンセーションでアニメに新たな風を吹き込んだ新海誠監督作品だと言える。『ドラゴンボール』シリーズやジブリ作品は、1990年代から長い時間を経てブランドが確立されているいわば日本アニメの代表作であり、もはやアニメファンでなくても一定のオーディエンス層が存在している。例えば筆者が訪れたアメリカの街角では、ごく一般的な子供達がポケモンや孫悟空の描かれたTシャツを着ている姿を見ることも少なくない。

一方、漫画が2016年から週刊少年ジャンプに掲載、2019年にアニメシリーズの放送と、比較的短期間のうちにその地位を築いた『鬼滅の刃』は、大正時代という時代設定とともに、キャラクターやストーリーにも「和の要素」がそれなりに色濃く表現されている作品であり、上記タイトルとは少し条件が異なると言えるだろう。

BLOGOS編集部

海外興行の指標となる数字は?

2021年初頭とされている本作の北米での配給を担当するのは、ファニメーションとアニプレックスオブアメリカであるが、ファニメーションは北米で3000万ドルを超える興収を挙げた『ドラゴンボール超 ブロリー』の配給を手がけている。

一方で、シリーズから劇場というステップを踏まず、大きな既存ファン層がない中で北米展開を行った『君の名は。』を見ると500万ドル(約5.2億円)超の興収、続く『天気の子』は779万ドル(約8.1億円)という数字だ。日本では興収10億円を超えればヒットと言われるが、海外でも日本の作品にとっては、おおよそ同じくらいの金額となる1000万ドルは一つの壁であり、仮に劇場公開が満足にできた場合、指標となるのはこれらの数字ではないだろうかと考えられる。

ちなみに他のテリトリーに先駆けて本作が10月30日に劇場公開された台湾では、初日3日間の興行収入が1.17億台湾ドル(約4.3億円)を超え、台湾でのアニメーション映画の初動興行収入で歴代一位になったと報じられており、強い勢いが感じられる。

現在『鬼滅の刃』アニメシリーズはアメリカではHulu、Crunchyrollなどの配信サイトで観られるほか、ケーブル局Toonamiでも放送された。またいくつかのアジアの国では、Netflixでアクセス可能となっている。これらを踏まえると、海外でもすでに一定のファン層が形成されていると考えられるが、『劇場版 鬼滅の刃』はこのシリーズからの続編ということもあり、これらの視聴者がメインのターゲットとなることは間違いない。

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